23 / 52
本編
23
しおりを挟む
ヴィヴィアンヌの心はおおいに揺れ動いていた。記憶にあるオリヴィエの大事なものを思い出し、頭の中に浮かべる。回想するものとしてはあまりにも不適切で卑猥であった。
(……騎士さま……)
続けてオリヴィエの赤くなったり青くなったりする表情や笑顔を思い浮かべる。ヴィヴィアンヌはそれらが自分ではなくルネにむけられることを考えると、胸が苦しくなった。
「ルネ……」
「きっと、オリヴィエは生きているわ」
「……俺も、生きていてほしいと思っている。だが、このままだと俺たちがオリヴィエを見つける前に死ぬかもしれない」
リュシアンが言うとおり、彼らはここでの探索で危うかったことが何度もあった。正式に訓練を受けた騎士である彼らでも、この魔女の森に住まう魔物を相手にするのは危険だ。この数日気の休まらない状態で森を探索し続け、彼らの疲労は蓄積され続けている。
「……そんなことを言っても、私は諦めないんだから。オリヴィエを見つけて連れ戻したら、結婚してずーっと一緒に暮らすの」
(ケッコン!)
ヴィヴィアンヌはルネの言葉に反応し、大袈裟に体を震わせた。オリヴィエとずっと一緒に暮らす、それこそヴィヴィアンヌが望むことだった。
(ケッコンしたら、大事なものを見れて……騎士さまとずっと一緒にいられるの?)
ヴィヴィアンヌはその事実を知り、いままで興味のなかった結婚に興味を持ち始める。同時にオリヴィエの言葉を思い出し、胸を高鳴らせた。
(そうだ。騎士さま、私のこと好きだから、そういう仲になりたいって言っていた!)
光明を見出した気になったヴィヴィアンヌはオリヴィエの元に戻ろうと裾をはらって立ち上がる。すっかりさきほどの二人のことを意識から追い出しているヴィヴィアンヌだが、獣の咆哮が聞こえて跳ね上がりそうなほど驚き、慌てて崖の下をのぞき込んだ。
(えっ、なに!?)
ヴィヴィアンヌの目に大型の魔物に襲われる二人が映る。魔物はまるで熊のような後ろ姿で、体は人の倍以上はあった。魔物が振り下ろし、その腕からルネを守るように彼女を抱きしめたリュシアンが爪で肩から背を引き裂かれる。
「リュシアン!」
「くそっ」
ルネの泣きそうな悲鳴が森に響く。リュシアンはすぐさま迫る魔物からルネをまもろうと気力を振り絞って立ち上がった。リュシアンの負った傷はあまりにも大きい。痛みからか脂汗をにじませ、苦痛に顔を歪めている。
「……ルネ!」
リュシアンは続いて立ち上がったルネを背に庇い、魔物から距離を取るためにじりじりと後ろに下がった。ある程度の距離は取れたものの、魔物は再び二人を襲おうと前足を上げ、立ち上がっている。
(だめ!)
それを見たヴィヴィアンヌは慌てて魔法を使った。その魔法は破裂音とともに木々をなぎ倒し、魔物を吹き飛ばす。リュシアンとルネもその衝撃波にバランスを崩したが、距離を取っていたからか転倒は免れたようだ。
(どっ、どうしよう……)
咄嗟とはいえ、明らかにやりすぎた。魔物だったものと倒れた木々を呆然と眺める二人を眺め、ヴィヴィアンヌは顔を青くする。そのまま固まっていたヴィヴィアンヌだが、リュシアンが彼女の方に顔を上げたのが見えてはっとした。ヴィヴィアンヌはリュシアンと目があった気がして慌て、頭を両手で抱えてその場にしゃがみ込む。
一方、リュシアンの目には隠れたつもりのヴィヴィアンヌの姿がしっかりと映っていた。明らかに彼らではない第三者の魔法により、魔物や木々は見るも無惨な姿に成り果てた。崖上に見える人影がその術者であることは想像に難くない。リュシアンは少し警戒してヴィヴィアンヌの様子を眺めていたが、どうにもふるふると震えて体を丸めてうずくまっている様子に警戒するのがばからしくなった。
少なくとも、彼らが手こずる魔物を一瞬で片づけたヴィヴィアンヌに彼らに攻撃する様子はない。状況からして助けられたと判断したのか、リュシアンは深く息を吐いてうつむいた。
「リュシアン! ごめんなさい……私のせいで……!」
「……撤退するぞ。悪いがこの負傷じゃ、これ以上は無理だ」
「う、うん!」
ルネは気が動転しているようだが、さすがにこの状況で異を唱えるつもりはないらしく、目に涙を浮かべながらうなずいた。よたよたと歩くリュシアンをルネが支えながら、二人は移動し始める。
しばらくすると、ヴィヴィアンヌは恐る恐る顔をあげて崖下をのぞいた。二人の姿はすでになく、生々しい血の跡だけが見えて胸を抑える。
(……私が早くに声をかけていたら……あの人、けがしなかったかもしれないのに)
ヴィヴィアンヌはオリヴィエの手助けになるかもしれない人を故意に避けようとした。その結果、けがをさせてしまったと自責の念に襲われる。
(……私、悪い子だ)
ヴィヴィアンヌは目に涙を浮かべ、鼻をすする。重い足を引きずるようにゆっくりと歩き出し、うつむきながらオリヴィエのいる洞窟へと向かった。
ヴィヴィアンヌが洞窟近くにたどり着く頃には日は暮れ始めていた。茜色に染まる空はすぐに暗くなってしまうだろう。そうなる前に小屋に戻らないといけないが、ヴィヴィアンヌはオリヴィエに会うのが怖かった。それでもなんとか足を進め、洞窟が目視できる場所まで戻る。
「ヴィヴィアンヌ!」
名を呼ばれたヴィヴィアンヌが顔を上げると、洞窟の前にオリヴィエの姿が見えた。足を止めたヴィヴィアンアンヌの元に、オリヴィエがよたよたと歩きながら近づく。
「騎士さま……」
ヴィヴィアンヌはオリヴィエの姿を見て安堵や罪悪感、恐怖などのさまざまな感情が入り乱れていた。今日知った事実や感情を受け止めるには、ヴィヴィアンヌはあまりにも経験が足りなかった。
「よかった。遅かったので、なにかあったんじゃないかと心配しました」
いまにも感情があふれてしまいそうな状態でオリヴィエから優しい言葉を受け、ヴィヴィアンヌはほろほろと涙を流す。突然泣き出したヴィヴィアンヌにオリヴィエはぎょっとすると、恐る恐る声をかけた。
「ヴィヴィアンヌ? どっ、どうしたんだ?」
「騎士さまぁ……ごめんなさいぃ……」
顔を両手で覆ってうつむき、わんわんと泣き出したヴィヴィアンヌにオリヴィエは慌てふためく。泣いている女性を慰めたことなどないオリヴィエはすぐに行動できず、どうすればよいのかもさっぱりわからずに冷や汗をかいていた。
(どっ、どうしよう……!?)
オリヴィエは情けない顔でヴィヴィアンヌに右手を伸ばしたが、結局触れずに宙をさまよわせる。ヴィヴィアンヌの涙は止まらず、その姿がたまらなくかわいそうに見え、ようやく右腕を伸ばして彼女の体を抱き寄せた。
「……大丈夫です、ヴィヴィアンヌ。なにがあったのですか?」
「ごめんなさい……」
ヴィヴィアンヌは逆らわずにオリヴィエの腕の中に収まり、その胸に顔を埋めた。うまく答えられず、何度も謝罪し続ける。オリヴィエは左腕が動かせないことを呪いながらヴィヴィアンヌを片腕で抱きしめ、大丈夫と優しく声をかけ続けた。
しばらくして、ヴィヴィアンヌは少し落ち着きを取り戻して顔を上げる。眉尻は下がり、目元は少し赤く腫れ、泣きすぎて鼻水も出ていたが、オリヴィエはかわいそうだと思いつつもその表情すらかわいく見えていた。
「……さっき、人がいたの……」
「……人? ヴィヴィアンヌ、その人たちになにかされたのですか?」
この恐ろしい森に足を踏み入れるような人物だ、オリヴィエはその侵入者にヴィヴィアンヌがなにかされたのかと怒りを覚える。しかしヴィヴィアンヌはすぐに首を振り、それを否定した。
「ちがうの、騎士さま。……ごめんなさい、私……騎士さまの大事なものを、見られたくなくて……」
「……えっ、どうしてそこで僕の僕が?」
思わず突っ込んでしまったオリヴィエにヴィヴィアンヌは再び目をうるませる。オリヴィエが慌てて安心させるようにほほ笑むと、その涙はあふれずに済んだようだ。
(……騎士さま……)
続けてオリヴィエの赤くなったり青くなったりする表情や笑顔を思い浮かべる。ヴィヴィアンヌはそれらが自分ではなくルネにむけられることを考えると、胸が苦しくなった。
「ルネ……」
「きっと、オリヴィエは生きているわ」
「……俺も、生きていてほしいと思っている。だが、このままだと俺たちがオリヴィエを見つける前に死ぬかもしれない」
リュシアンが言うとおり、彼らはここでの探索で危うかったことが何度もあった。正式に訓練を受けた騎士である彼らでも、この魔女の森に住まう魔物を相手にするのは危険だ。この数日気の休まらない状態で森を探索し続け、彼らの疲労は蓄積され続けている。
「……そんなことを言っても、私は諦めないんだから。オリヴィエを見つけて連れ戻したら、結婚してずーっと一緒に暮らすの」
(ケッコン!)
ヴィヴィアンヌはルネの言葉に反応し、大袈裟に体を震わせた。オリヴィエとずっと一緒に暮らす、それこそヴィヴィアンヌが望むことだった。
(ケッコンしたら、大事なものを見れて……騎士さまとずっと一緒にいられるの?)
ヴィヴィアンヌはその事実を知り、いままで興味のなかった結婚に興味を持ち始める。同時にオリヴィエの言葉を思い出し、胸を高鳴らせた。
(そうだ。騎士さま、私のこと好きだから、そういう仲になりたいって言っていた!)
光明を見出した気になったヴィヴィアンヌはオリヴィエの元に戻ろうと裾をはらって立ち上がる。すっかりさきほどの二人のことを意識から追い出しているヴィヴィアンヌだが、獣の咆哮が聞こえて跳ね上がりそうなほど驚き、慌てて崖の下をのぞき込んだ。
(えっ、なに!?)
ヴィヴィアンヌの目に大型の魔物に襲われる二人が映る。魔物はまるで熊のような後ろ姿で、体は人の倍以上はあった。魔物が振り下ろし、その腕からルネを守るように彼女を抱きしめたリュシアンが爪で肩から背を引き裂かれる。
「リュシアン!」
「くそっ」
ルネの泣きそうな悲鳴が森に響く。リュシアンはすぐさま迫る魔物からルネをまもろうと気力を振り絞って立ち上がった。リュシアンの負った傷はあまりにも大きい。痛みからか脂汗をにじませ、苦痛に顔を歪めている。
「……ルネ!」
リュシアンは続いて立ち上がったルネを背に庇い、魔物から距離を取るためにじりじりと後ろに下がった。ある程度の距離は取れたものの、魔物は再び二人を襲おうと前足を上げ、立ち上がっている。
(だめ!)
それを見たヴィヴィアンヌは慌てて魔法を使った。その魔法は破裂音とともに木々をなぎ倒し、魔物を吹き飛ばす。リュシアンとルネもその衝撃波にバランスを崩したが、距離を取っていたからか転倒は免れたようだ。
(どっ、どうしよう……)
咄嗟とはいえ、明らかにやりすぎた。魔物だったものと倒れた木々を呆然と眺める二人を眺め、ヴィヴィアンヌは顔を青くする。そのまま固まっていたヴィヴィアンヌだが、リュシアンが彼女の方に顔を上げたのが見えてはっとした。ヴィヴィアンヌはリュシアンと目があった気がして慌て、頭を両手で抱えてその場にしゃがみ込む。
一方、リュシアンの目には隠れたつもりのヴィヴィアンヌの姿がしっかりと映っていた。明らかに彼らではない第三者の魔法により、魔物や木々は見るも無惨な姿に成り果てた。崖上に見える人影がその術者であることは想像に難くない。リュシアンは少し警戒してヴィヴィアンヌの様子を眺めていたが、どうにもふるふると震えて体を丸めてうずくまっている様子に警戒するのがばからしくなった。
少なくとも、彼らが手こずる魔物を一瞬で片づけたヴィヴィアンヌに彼らに攻撃する様子はない。状況からして助けられたと判断したのか、リュシアンは深く息を吐いてうつむいた。
「リュシアン! ごめんなさい……私のせいで……!」
「……撤退するぞ。悪いがこの負傷じゃ、これ以上は無理だ」
「う、うん!」
ルネは気が動転しているようだが、さすがにこの状況で異を唱えるつもりはないらしく、目に涙を浮かべながらうなずいた。よたよたと歩くリュシアンをルネが支えながら、二人は移動し始める。
しばらくすると、ヴィヴィアンヌは恐る恐る顔をあげて崖下をのぞいた。二人の姿はすでになく、生々しい血の跡だけが見えて胸を抑える。
(……私が早くに声をかけていたら……あの人、けがしなかったかもしれないのに)
ヴィヴィアンヌはオリヴィエの手助けになるかもしれない人を故意に避けようとした。その結果、けがをさせてしまったと自責の念に襲われる。
(……私、悪い子だ)
ヴィヴィアンヌは目に涙を浮かべ、鼻をすする。重い足を引きずるようにゆっくりと歩き出し、うつむきながらオリヴィエのいる洞窟へと向かった。
ヴィヴィアンヌが洞窟近くにたどり着く頃には日は暮れ始めていた。茜色に染まる空はすぐに暗くなってしまうだろう。そうなる前に小屋に戻らないといけないが、ヴィヴィアンヌはオリヴィエに会うのが怖かった。それでもなんとか足を進め、洞窟が目視できる場所まで戻る。
「ヴィヴィアンヌ!」
名を呼ばれたヴィヴィアンヌが顔を上げると、洞窟の前にオリヴィエの姿が見えた。足を止めたヴィヴィアンアンヌの元に、オリヴィエがよたよたと歩きながら近づく。
「騎士さま……」
ヴィヴィアンヌはオリヴィエの姿を見て安堵や罪悪感、恐怖などのさまざまな感情が入り乱れていた。今日知った事実や感情を受け止めるには、ヴィヴィアンヌはあまりにも経験が足りなかった。
「よかった。遅かったので、なにかあったんじゃないかと心配しました」
いまにも感情があふれてしまいそうな状態でオリヴィエから優しい言葉を受け、ヴィヴィアンヌはほろほろと涙を流す。突然泣き出したヴィヴィアンヌにオリヴィエはぎょっとすると、恐る恐る声をかけた。
「ヴィヴィアンヌ? どっ、どうしたんだ?」
「騎士さまぁ……ごめんなさいぃ……」
顔を両手で覆ってうつむき、わんわんと泣き出したヴィヴィアンヌにオリヴィエは慌てふためく。泣いている女性を慰めたことなどないオリヴィエはすぐに行動できず、どうすればよいのかもさっぱりわからずに冷や汗をかいていた。
(どっ、どうしよう……!?)
オリヴィエは情けない顔でヴィヴィアンヌに右手を伸ばしたが、結局触れずに宙をさまよわせる。ヴィヴィアンヌの涙は止まらず、その姿がたまらなくかわいそうに見え、ようやく右腕を伸ばして彼女の体を抱き寄せた。
「……大丈夫です、ヴィヴィアンヌ。なにがあったのですか?」
「ごめんなさい……」
ヴィヴィアンヌは逆らわずにオリヴィエの腕の中に収まり、その胸に顔を埋めた。うまく答えられず、何度も謝罪し続ける。オリヴィエは左腕が動かせないことを呪いながらヴィヴィアンヌを片腕で抱きしめ、大丈夫と優しく声をかけ続けた。
しばらくして、ヴィヴィアンヌは少し落ち着きを取り戻して顔を上げる。眉尻は下がり、目元は少し赤く腫れ、泣きすぎて鼻水も出ていたが、オリヴィエはかわいそうだと思いつつもその表情すらかわいく見えていた。
「……さっき、人がいたの……」
「……人? ヴィヴィアンヌ、その人たちになにかされたのですか?」
この恐ろしい森に足を踏み入れるような人物だ、オリヴィエはその侵入者にヴィヴィアンヌがなにかされたのかと怒りを覚える。しかしヴィヴィアンヌはすぐに首を振り、それを否定した。
「ちがうの、騎士さま。……ごめんなさい、私……騎士さまの大事なものを、見られたくなくて……」
「……えっ、どうしてそこで僕の僕が?」
思わず突っ込んでしまったオリヴィエにヴィヴィアンヌは再び目をうるませる。オリヴィエが慌てて安心させるようにほほ笑むと、その涙はあふれずに済んだようだ。
8
お気に入りに追加
964
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない
かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」
婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。
もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。
ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。
想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。
記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…?
不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。
12/11追記
書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。
たくさんお読みいただきありがとうございました!
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく
おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。
そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。
夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。
そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。
全4話です。
嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道
Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道
周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。
女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。
※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる