【微BL】『OutCast:龍攘戌搏奇』OutCastシリーズ10th🎊記念ノベル【微BLx異能部隊|完結済】

🍶醇壱🔹JUNICHI🍶

文字の大きさ
上 下
8 / 10
♦️『OutCast:龍攘戌搏奇』♦️本編♦️

Phase.008『 龍神慶歌と新しい家族 』

しおりを挟む
 
 
 
「――龍を投げ飛ばす経験は、なかなかできるものではないなぁ。次郎じろう
 天色あまいろの龍と大蛇が、その身をゆっくりと光の粒に転じてゆくのを眺めながら、京香きょうかは言った。
 次郎もまた、輝く粒子たちを見送りつつ、静かに笑い、
「二度とないと思いますよ」
 と、言った。
 京香はそれに満足げに頷くと、次いで慶歌けいかを見上げる。
「どうだ。慶歌。――祭りは楽しめたかな?」
 慶歌は頷き、嬉しそうに鳴く。
 [うむ。とても楽しめた。慶歌の願いを叶えてくれて本当にありがとう。――約束通り、慶歌はこれで家に帰るよ]
 そんな慶歌に、京香は燦々さんさんと笑む。
「うむうむ! 一諾千金いちだくせんきん! 約束を守れる慶歌は、い子だ、善い子だ」
 そして、京香に慶歌がまたひとつ嬉しそうに鳴くと、京香と共に訓練場に下りてきていた春摩しゅんまが言った。
「天宮城総隊長様。異能隊の皆様。この度は、僕らにお力をお貸しくださり、そして、慶歌の我儘わがまままで叶えてくださり、本当にありがとうございました! 感謝してもしきれません」
 春摩は、深々と頭を下げる。
 京香はそれに、優しく笑んでは言った。
「うむ。我が隊の力が役に立ったようで何よりだ」
 春摩はそこで、ゆっくりと頭を上げる。
 そして、京香に今一度礼を告げると、さらに続けた。
「――それでその、我々は皆様に比べれば非常に非力ではありますが、今回の御礼もさせて頂きたいので、――今後、僕達でお役に立てる事がありましたら、その際はいつでもお声がけください……! 全力でご協力させて頂きます!」
 すると、京香はそれに嬉しそうに言った。
「おお! そうか、そうか! それは、ありがたい申し出だ! ――私としても、是非とも諸君らに力を借してもらいたいと思っていたところでな」
 そんな京香の言葉に、春摩は背筋を伸ばして言った。
「そ、そうだったのですね! 光栄です! 僕達でお役に立てる事でしたら、いつでも――」
「――今すぐに」
「あ、今すぐに! はい! それは、もちろ――……え? い、今すぐに?」
 
 
ー Phase.008『 龍神慶歌と新しい家族 』ー
 
 
 動揺する春摩を前に、京香はにやりと笑う。
「ふふふ。そうだ。今すぐに――だ」
 その京香の言葉に、春摩はさらに動揺する。
「え、ええっと、そ、それは具体的に、どのような事で……?」
 動揺しながらも何とか春摩が問うと、京香は満足気な表情で両手を腰に当てる。
「うむ。まぁ、我が隊は人員不足ではないし、スタッフも十二分に足りている。――とはいえ、私は常、才ある者たちには目がないのだ。それゆえ、これほどまでに素晴らしい自立型プログラムを生み出してしまうような秀才たちを、私営ラボに置いておく事がもどかしくてな」
「な、なるほど……こ、光栄です……?」
「うむ。――と、いうコトで、だ。春摩博士」
「は、はい……?」
「春摩博士と、博士率いる春摩研究所の秀才達には、今日から我が隊の一員となり、是非、この異能隊本部のラボで、諸君らの研究を続けてほしい! ――と、思っているのだが……――どうだろうか? 春摩博士」
「は、いや、え、……ええ?」
 京香の申し出に、春摩はさらに動揺した。
 しかし、そんな春摩を置き去りに、京香は続ける。
「我が隊の一員にさえなってくれれば、諸君らの研究費用も設備もすべて我が隊から提供できる。つまり、今後、諸君らは一切のコストを気にする事なく、かつ、我が隊の秀才たちと共に研究に臨んでゆける上、この慶歌にもより大きな住まいを与える事も可能なのだが……――いかがかな? 春摩博士。 ――是非とも、我が隊に加わってはもらえないだろうか?」
 京香は首を傾げ、にこりと笑む。
 そんな京香に対し、春摩はたどたどしく言葉を紡ぐ。
「そ、それはもう、断る理由がないというか、その……、ほ、本当に、本当によろしいのですか? もちろん、僕は嬉しいですし、きっと皆も――」
 春摩はそこで、観覧エリアの仲間たちを見る。
 すると、京香との会話音声を聞いていた春摩の仲間たちは、両腕で丸を作ったり、親指を立てたりして、喜びと賛同の意を表現していた。
 そんな仲間たちの意を受け取り、春摩は京香に向き直り言った。
「あの通りです! ですから、こんな素敵な申し出――、僕も皆も、こちらからお願いさせて頂きたいくらい嬉しい申し出です! 是非、受け取らせてください!」
 そして、春摩が今一度頭を下げると、京香は嬉しそうに言った。
「おお! そうか、そうか! それは良かった! ――では、必要な機材や設備はもちろんだが、希望する者には住まいも我々から提供しよう。――無論、研究所や君達の引っ越しにおいても我が隊が全面サポートするぞ」
 その京香の言葉に、春摩は再び目を丸くする。
「えぇ!? そ、そんなところまで!? ――し、信じられない。あ、ありあとうござ――」
 そして、春摩が礼を告げようとすると、それを遮るようにして京香が言った。
「ただし」
「えっ……」
「――ひとつ、条件がある」
「な……、なんでしょうか……」
 春摩がそれに再び動揺しながら尋ねると、京香はひとつ頷き言った。
「うむ。――君達も知っての通り、我が隊はあくまでも、この仁本にほんと仁本国民の平和をはじめ、世界各国を含む地球全体の平和を守るために存在している」
「は、はい」
「――よって、仁本や世界の平和を脅かすような活動を行った場合は、我が隊の家族とて一切の容赦はできん。――最悪の場合、命を奪う必要すら出てくるのだが、――その点は、問題ないかね?」
 そんな京香の言葉を恐る恐る聞いていた春摩だが、最後まで聞き終えると、やや緊張感のある様子で背筋を伸ばし、言った。
「そ、それはもちろん!! 一切、問題ありません!!」
 春摩は、一度仲間たちと視線を交わし合い、続ける。
「――僕達は、第一に、科学や研究が好きで科学者になりましたが、皆、自分達の技術や知識を誰かのために使って、誰かの役に立ちたくて科学者を続けているんです。――人間だけじゃない。――自然や動物たち、地球や宇宙のすべてが平和になり、すべての存在が平和に共存できる世界を、僕らは切に望んでいます。――ですから、平和を脅かすような研究は絶対にしませんし、もし、何かしらの事故で人が変わり、僕が平和を脅かすような人間になってしまったとしたら――、その時はすぐに殺してください。僕がそんな人間になってしまったとしたら僕は――、そんな僕を、この世に置いてはおけませんから」
 京香は頷く。
「そうか、そうか。博士の口からそれを聞けて安心した。――だが逆に、我らの同志である限りは、諸君の安全、そして、この慶歌の安全も、我が隊が責任をもって守ると約束しよう。――ゆえ、諸君も我々を信頼してくれると嬉しい」
 そして、京香が凛と笑むと、春摩は力強く頷いた。
「は、はい……! それはもちろん!! ――本当に、本当にありがとうございます!」
 京香は再び満足げに頷く。
「うむうむ」
 そして、次郎・太郎たろうに次いで、観覧エリアで待機する隊員達を見やると、京香は胸を張るようにして言った。
「さて! ――と、いうわけで、我が隊が誇る、精鋭諸君! 今日から新たに、才ある家族がこんなにも増える事となった! これも、諸君らの素晴らしい働きのおかげだ! 心から感謝する! 此度も大変ご苦労であった! ――褒美は弾むぞ~!!」
 そんな総隊長からの称賛を受けた隊員達は、それぞれらしい様子で喜び、京香に応じた。
 そうして、その場が気が一段と晴れ晴れしくなった時。
「良かったな。灯里とうり
 不意に、その場の誰の記憶にもない声が音を紡いだ。
「うん! ――って……、えぇ!?」
 思わず頷いたものの、すぐさま異変に気付いた春摩は驚きの声をあげ、咄嗟にその声の主を見上げた。
 
 
 
 
 
Next → Phase.009
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

優しいユメと君に微睡む。

ひまわり
BL
少し前から俺はユメを見る。 毎日同じ夢。 でも、普通の夢よりもずっと体の自由が利く。 歩こうとすれば歩けた。 風の匂いも、草木の揺れる音も。 夢のはずなのにまるで現実のようだった。 ただ、それが夢なんだってわかるのはいつもその夢から覚めると俺はベッドの中にいるから。 そんな不思議な夢の中で俺は、一人の少年と出会う。 これは、その少年と俺の、夢をきっかけに始まる恋のはなし。 ●注意事項 急性骨髄性白血病(AML)についてのことが少し出てきます。 しかし、作者はこの病気についての知識は基本しかありません。 なので、少し「?」となるところがあるかもしれませんが、生温かい目で見てくださると嬉しいです。 表紙はトワツギ(@towathugi)さんのフリーイラストを白黒にして使用しています。 こちらの作品はエブリスタの方で完結済み作品になります。 そのため、更新は毎日3ページずつ行います。 追加要素などないので、もし先を読みたい方はエブリスタな方で閲覧してください。

たまにはゆっくり、歩きませんか?

隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。 よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。 世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

生意気な弟がいきなりキャラを変えてきて困っています!

あああ
BL
おれはには双子の弟がいる。 かわいいかわいい弟…だが、中学になると不良になってしまった。まぁ、それはいい。(泣き) けれど… 高校になると───もっとキャラが変わってしまった。それは─── 「もう、お兄ちゃん何してるの?死んじゃえ☆」 ブリッコキャラだった!!どういうこと!? 弟「──────ほんと、兄貴は可愛いよな。 ───────誰にも渡さねぇ。」 弟×兄、弟がヤンデレの物語です。 この作品はpixivにも記載されています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

処理中です...