【微BL】『OutCast:龍攘戌搏奇』OutCastシリーズ10th🎊記念ノベル【微BLx異能部隊|完結済】

🍶醇壱🔹JUNICHI🍶

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♦️『OutCast:龍攘戌搏奇』♦️本編♦️

Phase.003『 龍神慶歌の好きなモノ 』

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 会議室の自動扉の向こうには、別室にて龍神の先行調査にあたっていた光酉みつとりが居た。
「お取り込み中失礼しますよぅっと」
「お、どうした?」
 軽く眉を上げた京香きょうかが尋ねる。
 光酉は、後続の瑠璃るり菜月なつき、シズル、かがり、マリウスが入室するのを確認しながら応じた。
「いや~実は今。ずいぶんと面白い中継がやってるもんですからネェ? 皆サンにも見せたくて」
「ほう?」
 京香が含みのある笑みを浮かべて応じると、光酉は楽しげに軍用デバイスを取り出し、手早くホログラムディスプレイを拡張表示した。
 表示された長方形のディスプレイには、現在生中継されているらしい報道映像が映し出される。
 そして、その映像から聞こえてきたのは、リポーターらしい女性の声であった。
 リポーターの声は、非常に興奮している。
『――ぇますでしょうか!! ご覧ください!! 我々は今! 今!! この、この目で!! 龍! 龍を!! ――いえっ、龍神を!! 見ています!! 信じられません!! この神社に居る全員が! 龍神の姿を! はっきり! はっきりと!! 目にしています!! あれは幻でもホログラムでもありません!! なんと神々しい姿でしょうか……っ!! やはり! やはり我が国には! 確かに龍神が存在していたのです……っ!!』
「――残念だけど、この通り。龍神の存在は秘密裏に――とは、いかなくなったわねぇ」
 その場の全員が様々な様子で中継映像を見届けたところで、菜月がそう言った。
 
 
ー Phase.003『 龍神慶歌けいかの好きなモノ 』ー
 
 
 菜月の言葉に、京香は感慨深いといった様子で言った。
「そうかそうか。電子世界で生まれたとはいえ、彼も龍神だものなぁ……。――己の大先輩が住まう神社も、その身で訪れてみたかったのだろう」
 その京香に、京香のバディであり異能隊副隊長でもある克仁かつひとが静かに進言した。
「隊長。先ほどの中継で、あの龍神が“物質世界すらも自由に泳げる自立型プログラムである”と気付いた者も少なくはないでしょう。――第三者に手を出される前に早急に手を打つ方がよろしいかと」
 深い紺色の髪をきっちりとしたオールバックに整えた克仁は、事の深刻さを表現する者として、その場の誰よりも適任であった。
 しかし、そんな克仁からの進言にも、京香は変わらず落ち着いた様子で頷いた。
「うむ。そうだな。――して、春摩しゅんま博士、……おや?」
 だが、その京香も、“今の”春摩の様子には思わず首を傾げた。
「え、なになに。どうしたのヨ」
 そして、光酉をはじめ、光酉と共に会議室にやってきた面々も、そんな春摩の様子にやや困惑していた。
 なぜなら、驚いた様子で光酉たちに視線を向けた春摩が、そのまま固まってしまっていたからである。
 さらに、そうして驚いた様子で光酉たちを凝視したまま固まっているのは、春摩だけではない。
 春摩と共に本部へやってきていた研究員たちも、同じような様子で固まっているのだ。
 そのような状況から、異能隊の全員が首を傾げていたところ、次郎が口を開いた。
「おい、どうし――」
「……き……きき……」
 しかし、そんな次郎じろうの声は彼らの耳には入らなかったらしい。
 春摩は、その次郎の言葉を遮るようにして、口をはくはくと動かしながら音を発した。
 そんな春摩をいぶかしむようにしながら次郎が復唱した。
「“き”?」
 すると、その日一番の大きな声で春摩が言った。
「奇跡だッ!!!」
 その突拍子のない言葉に、異能隊の多くが、
「はぁ?」
 と、呆れた声を発した。
 しかし、それまでの小心ぶりはどこへいったのか、興奮した様子の春摩は、眼鏡を幾度もかけ直しながら大変な早口を披露した。
「まままままさか現実世界にこここんな神秘的な美少女がいるなんて!! 信じられない!! 奇跡だ!! 奇跡でしかない!! しししししかもしかも三人も!!」
 そして、その春摩とまったく同じ動作を繰り返す春摩研究所の研究員たちもまた、
「本当に奇跡だ……」
「信じられない……」
「これが神の御業みわざか……」
 などと、それぞれの言葉で此度こたびの感動を表現していた。
 その様子から次郎は、“龍神の件とは全く関係のない私情”により春摩らが今の状態になっているのであろうと察した。
 次郎は、思わずため息を吐くと言った。
「あー……、なんか感動してるとこ悪ぃけどよ。今はお前らが持ってきた龍神探しに集中してもらってもいいか?」
 そんな次郎の言葉に、春摩はハッとした様子で眼鏡を鳴らす。
 そして、何かを振り切るようにして視線を下げながら早口で謝罪した。
「はっ……、す、すみません! ああ、あまりに神秘的な方々が突然降臨されたので……」
 そして、ひとつ咳払いをすると、春摩は真剣な面持ちで言った。
「で、ですが、これで慶歌けいかの呼び寄せる事ができるかもしれません!」
「何?」
 春摩の言葉に、次郎はそう言うなり京香を見た。
 京香は、それに応えるように頷き言った。
「春摩博士。詳しく話してくれ」
「は、はい! えっと、まず、こ、こちらにおおせの神々は、その……、この異能隊で保護を受けられている方々なのですか? それとも、医療班とか……」
 春摩はそう言うと、指先を揃えた手のひらを上に向け、光酉と共に会議室にやってきた瑠璃、シズル、マリウスの三人を丁寧に示した。
 京香はそれに不思議そうにすると、首を傾げながら答える。
「いや? その三人は戦闘員だが?」
「せっ、せせせ、戦ッ……!?」
 京香の言葉に驚愕した様子の春摩は、大きく動揺した様子で言った。
「い、異能隊はこんなか弱い少女たちも戦いの場に出しているのですか!? た、確かに総隊長様もとても美しく可憐な方ですが、それでも安心して戦いの場に出られるのは戦神せんじん族だからこそであって、こんな……」
 その春摩の言葉に、異能隊の面々は何かしらに納得したような様子を示した。
 そんな隊員たちと一度視線を交わすと、春摩に向き直った京香は笑いながら言った。
「ははは。お褒め頂き光栄だ。だが、博士はひとつ勘違いをされているようだ」
「え?」
「外見では判断しづらいかもしれないが、今、この会議室の中で、生物学上”女性“と分類されるのは、私一人だけなのだ。春摩博士」
「……え? ひ、ひとり……? で、ですが……え……えええっ!?」
 どうやら春摩や春摩研究所の研究員たちは、少女のようにも見える三人のみでなく、大人らしい身長の菜月も、その容姿や口調から“女性”であると思っていたらしい。
 それに対し、菜月が満足気に言った。
「アラ、びっくりさせちゃったわねぇ? まぁ、アタシってとんでもなく美人だから、そんな勘違いも仕方ない事だわ」
「こ、こんな事が……」
 動揺したままの春摩は、己が女性と勘違いした青年三人と菜月を幾度も見返した。
 そんな春摩に、事を進めるべく燈哉とうやが言った。
「ま、そういうコトで。瑠璃たちは、か弱い少女でも神々でもないわけだけど。話の流れ的に、――まさかあの龍神、美少女好きとか言うわけ?」
 片眉を上げた燈哉の言葉に、春摩はやや慌てながら早口で訂正した。
「はっ! あっ、い、いえいえ! 美少女好きというわけではないんです! その、もちろん美しいモノは好みますが、美少女というより、神秘的な容姿をした美少女を非常に好む、という感じですね!!」
 下がってもいない眼鏡を幾度もかけ直しながらそう言った春摩に、次郎は思わず言った。
「あんま変わんねぇだろ、それ」
 すると、太郎たろう春丞しゅんすけも次郎に続いた。
「美少女好きの龍神……ちょっと新しいかも……」
「美人はイイもんなぁ」
「お前らは少し黙ってろ」
 そんな二人に、
「呑気だネェ、お前サンたち」
 と言った光酉は、春摩に視線を戻した。
「ま、うちの瑠璃が神秘的に可愛いのはよく分かってんだけどサ。燈哉が言った通り、この子たちは美少女どころか少年でもない。青年の男――なんだけど。それでもこの三人が居ると分かれば、龍神は自分から来てくれるってワケ?」
「は、はい!!」
 春摩は頭を振りかぶり、大きく頷く。
「性別も年齢も関係ありません!! 大切なのは美しく神秘的なこの御姿ですので!――ですから、慶歌がまだ都内を散策しているなら、一般の方々が利用する公園など、セキュリティレベルの低い場所にさえ居て頂ければすぐに来てくれます! セキュリティレベルの低いエリアに居る人々の顔は、毎秒スキャンを行っているはずなので!」
「なるほどネェ。でも、いくら神秘的な美人を好むからって、それだけで本当に来るのかネェ?」
「はい! 必ず来てくれます!」
「へぇ。随分自信満々だネェ。春摩博士。――じゃあ、なんでそう言い切れんのか、教えてもらえる?」
 そんな光酉の問いに、自信に満ちた様子の春摩は、胸元でぐっと拳を握り言った。
「はい! なぜなら、僕たち研究所のメンバー全員が――、御三方を神秘的だと感じたからです!!」
「………………はァ?」
 春摩の示した根拠に、光酉をはじめ、異能隊の半数が眉をしかめた。
 だが、その部隊員たちの様子が目に入らないほどに興奮しているのか、両手を胸元の高さで握りしめた春摩は、天を仰ぎながら続ける。
「例えば、御三方が巫女服を着てくださったらどれだけ神々しく輝かしいことか……!! そんな神々しい姿をした人間が居ると分かれば、どこに居ても慶歌はすぐに飛んで来るに違いありませんっ!! 何せ慶歌には、僕らが愛してやまない神秘的なキャラクターたちを毎日のように共有していましたし、慶歌も彼女たちをとても気に入ってくれていたのです!! ですから間違いありません!! 御三方の協力があれば、慶歌は必ず来てくれます!!」
「巫女……服……」
「はいッ!!」
 握りしめた拳に更に力を込め、春摩が大きく頷くと、春摩研究所のメンバーたちも、
「きっとそうだ」
「そうに違いない」
「それで来ないわけがない」
 と、口々に言いながら頷き合っていた。
 対する光酉は半目がちに脱力し、
「あ、そう……」
 とだけ言った。
 また、その光酉と同じく、一通りの発言から研究員たちの“性癖”を悟った部隊員のうち、ほんの一部はにこやかにその様子を見守ったが、ほとんどの隊員たちは光酉と同じ表情になっていた。





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