転生している場合じゃねぇ!

E.L.L

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さすがに2度の落下には耐えられなかったのか、袋が破れてしまった

「あら
どうしてかしら」

うん
すごい衝撃だっただろうね
地面にめり込んでたんだから
何キロなのそれ

「ちょっと袋を替えてもらいましょう」

元の道に戻ろうとするが、不意に足に痛みを覚える

「痛…」

「どうされました?!」

大袈裟にエルザが反応する

「あ、いや…」

靴擦れしていた
幼児にしては歩きすぎたらしい

「レオ様!
大変です!」

エルザはバッとしゃがむと俺の足の擦りむいた状態を確認しようとした

「だ、大丈夫だよ!」

こんな小さなことで恥ずかしい
中身は高校生だもの
黙っていればよかったと猛烈に後悔する

「いいえ!
傷口からバイ菌が入ってしまったら大変です!!」

「それより、袋!!」

中身が滝のように流れてしまっている

「米は後でも拾えます!」

「大変じゃんか!!」

「そうですけども!」

「お願い、エルザ!!」

「…分かりました…」

エルザは非常に不服そうに米を集めた
今判明したけどそれ米だったんだね
俺の知ってるふっくらした感じのより更に丸い
なんなら雹に少し似ている
この世界特有の米なのかな
エルザは米を両手で抱える

「お店に戻りましょう
…とは言っても、足痛いですよね
さ、レオ様」

エルザが米を抱きしめたまま屈む
さ、 とは?

「えっと…」

「肩車致しますので」

「いやいやいやいや」

「大丈夫です
落としませんから」

そういうことではなくてね
肩車は精神的にも辛い上に、エルザの負担が大きすぎる
万一バランスを崩せば米と共に全てが投げ出されるだろう
多分逃避行の時の感じからするとエルザは身を呈してでも守ってくれようとするだろうが、その結果エルザが怪我をするのは困る
常識のないビビと俺の1体1の生活とか俺の神経が焼ききれる

「俺歩けるよ」

「いけません
膿んでしまいます」

「ちょっと擦りむいただけだから!」

「怖い病気はですね
ちょっとしたことから始まるのです!!」

「帰ったら!
すぐ消毒するから!」

「分かりました
肩車がおいやなのですね
では、レオ様、こちらの米をお持ちください
私がレオ様ごと抱えますから」

「待て待て」

無理
りんごひとつしか持たせなかったくせに!
しかも、その目測で合ってんだよ
幼児が何キロかも不明な穀物持てるか!
君と一緒にするな!

「もう!
ワガママですね!」

プンプン怒ってるけど、俺何か間違ってる?

「分かった!
じゃあ俺ここで待ってる」

「何言ってんですか!
自分のお立場が分かっているんですか?」

「そりゃ…あの、危ない、かな?」

「危ないです!」

「で、でもさ!
こっから穀物屋まで5分くらいだよ?」

「小さい子供から目を離した結果の悲劇はよく聞きます
レオ様に何かあっては私の命だけでは償えません」

「落ちついて
目が血走ってるよ」

まだ俺に何事も起こっていないのに既に自分を殺しそうな勢いである
この鬼気迫った感じどこかで見た事あるな

「でもさ、エルザめちゃくちゃ足速いじゃん
俺に合わせて歩いて5分だよ?
あのスピードなら瞬きする間くらいじゃん
頑張ればあのお店、ここから見えるし
俺ちゃんとここに座ってるし、フードも被っておくから!」

「…」

「ほら、日が暮れちゃうよ」

見た目も高校生なら迷わず行っただろうな
いや、そもそもそしたら靴擦れなんかせず、何ならに荷物ももっと持って帰路に着いていただろうな
早く大きくなりたい
エルザは再びものすごく不服そうな顔をすると残像が残るかと思うほどのスピードで駆けていった
ちょっと待て
あの重さの米持って?
穴空いてるのに1粒も落ちていない
なんと言うか、エルザと戦車1台って威力互角なんじゃない?
フードを下ろし、足を伸ばして座る
ぼんやりとしていると
その時、懐かしい香りがした

「え…」

間違えるわけないこの香りだけは
バッと顔を上げると俺のフードが落ちそうになる
慌ててフードを抑える
俺の目の前で立ち止まったその人物はしゃがみこんで俺の顔を覗き込んだ

「どうしたの?
迷子?」

ああ、声と顔まで同じだ
でも、何でここに
ナツ、君がいるんだ?
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