転生している場合じゃねぇ!

E.L.L

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チッと大きく舌打ちするのはもちろんあいつ
女神(仮)だ
もうイカ焼きとビール持ってても不自然ではないくらいくつろいでいる
が相変わらず中世の美術品みたいに綺麗だ

「まだ何の成果も上がんねぇのかよ」

赤ん坊にどうしろと?

「…すんません」

「ボーナスどころか、何もせず転生人生終わるんじゃね?」

「あの、その場合って…」

「永遠に彼女には会えない」

「わあああああああああああああああああああ!!!
そ、そんな…」

「わーったらさっさと魔王倒してこいや」

「いや、でもですね
魔王軍らしき人達には会いましたよ」

「…ほう」

「多分エルザさんとかいう名前っぽい女性と今住んでるんですけど―」

「待て
お前の生活はほぼ見ている」

「見ている?」

「当たり前だろ
見てなきゃどうやってボーナス判定するんだよ」

「確かに…
じゃあ説明は以下略で
男たちに襲撃されたんですよ」

「あいつらは魔王軍じゃないぞ」

「は?!」

「魔王軍じゃない」

キッパリと言った

「え
じゃああいつらは誰です?」

「当時の王国軍だな」

「王国?」

「お前のいたところの国の軍」

「え」

やれやれ
みたいな顔してますけどね
手掛かり無さすぎでしょうよ
あんな辺鄙なとこだったら世情も何も分かるわけないでしょう
そもそも1週間くらい俺とエルザ(仮)しかいない世界だったんだぞ
俺が魔王じゃなきゃエルザ(仮)が魔王でしかないような世界しか俺にはなかったんだぞ

「ちょっと待ってください
王国軍に追われているってことは国王が魔王ですか?」

「だから魔王軍じゃねえって言っただろ、ボンクラ
魔王軍じゃない上に王国軍ってことは国王と魔王は関係ねぇ」

口悪すぎない?

「…
魔王軍と王国軍は敵対してますか?」

「そうだなぁ…」

「…敵の敵は味方
俺魔王軍側の存在じゃないんですか?
獅子身中の虫みたいに立ち回れってことですか?」

「お前質問しすぎ
こっちだって答えらんないこと多いんだから質問されても困るんだよ」

シッシッと言わんばかりに手をヒラヒラされる

「…じゃあ何を答えられるんです?」

「あの女の名前はエルザで正解だ」

「それって魔王と関係あります?」

「ないな」

なんて役に立たない女神(仮)なんだ
もっとさ、特殊な武器とか能力とか授けたり、いい感じのアドバイスとか寄越したりしてくれよ、なんかよくあるやつみたいに!
最弱に見えて実は最強!!みたいな特性とかさ!

「…気づいたのかと思った」

「え?」

よく聞こえなかったので聞き返したのに、女神(仮)は今までで1番面倒くさそうな表情を浮かべた

「なんだ、まだ居たのか」

「戻り方分からないんですよ」

「起きろ」

「自分の意思でどうこうできたことないんですけど」

「チッ」

酷い
次転生するならもっとマシな女神に当たりたい
いや待った
そもそも元の世界が俺にとっては最高の世界だ
早くナツの所へ戻るんだ

「ああ!」

「…何だよ」

相変わらずのうるさいアピール

「ほぼ見ているってことは、あの、着替えとかオムツとか…」

俺の全てはナツのものだ

「お前の体に1ミクロンも興味ねぇから安心しろ」
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