Dear my...

E.L.L

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32章

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何で英司がいるの?
いるはずない
夢?

「あ、あの…」

英司が何かを言おうとする
ダメだ
ここにいちゃ
私は急いで踵を返そうとしたが、腕を掴まれた

「ま、待ってください!」

「何で?なんでここにいるの?!」

腕を振り払おうとするけど、しっかり掴んでいて離れない

「氷野さん、落ち着いて!」

結子、じゃない
記憶は戻っていない

「びっくりさせて本当にごめん!でも話が!!」

「私は…」

「あのね!俺、優柔不断で自信もなくて!でも、ストラップが…」

一気に色々言おうとして一生懸命まくし立てくる英司を見ていたら、少し落ち着いてきた
普通の口調になるくらい取り乱してる

「あの、手を、放してくださ―」

「嫌です!」

英司が食い気味に拒否する
拒否するのも、言葉をかぶせてくるのも凄く珍しい

「分かりました
お話、しましょう
でも、あの、ここ玄関なので中で…」

私が静かに言うとパッと手を離した
耳が赤くなっている

「あ…すみません……あの…痛かった、ですか?」

「大丈夫ですよ」

優しいところは本当に変わっていない
思わず顔が緩む
でも、ここに英司がいるということは私との関係を知っているってことだ
でも

氷野さん―

彼の口から私の名が呼ばれることはなかった
それに、私はもう彼の隣には…
目頭が熱くなりかける

「お茶、でいいですか?」

英司がマグカップを取り出す

「…あの…ケトルとか、ありますか?」

場所分からないんだ

「ありますよ
あ、私がいれます」

私は棚からケトルを取り出すとお湯を沸かした
隣で英司がじっと見ている
昔から私が何かをしている時たまにじっと見てくる癖があった
久しぶりで恥ずかしい

「あ、あの…」

「!
すみません…」

英司はちょっと慌ててテーブルの方に行くとちょこんと座った

なんて言えばいいんだろう
本当のことを今更話す?
それとも誤魔化す?
英司はどこまで知っているの?
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