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闘い
真実
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「愛ちゃん! 行こう」
そう言うと彼女は手を前に出し目を閉じた。
「おおっ! 変身か!?」
男心をくすぐるぜ!
テンションが上がってきた。やっぱり変身は漢のロマンだよな!
「変身じゃないよ! 纏だよ!
ま、と、い!」
「纏? なんかめちゃかっこいいなっ‼︎」
すると、後ろからバシッと頭を掴まれた。
「黙ってみてなよ。集中がいるんだから」
愛ちゃんはそう言いながら僕の頭をシェイクする。三半規管を破壊する恐ろしい技だ。コーヒーをリバースしそう。だが目は絶対離さないぜッ!
空は目を輝かせる僕に頬を赤らめながら再び目を瞑った。すると一瞬発光し手に黒い刀が現れ、服装も着物へと変わった。
よく見ると鞘に金の桜が散りばめてあり夜空に照らされ綺麗だ。
「おお~っ! かっこいいな!!
でも今まで着てた服どこいったの?」
「さっきも言ったでしょ? 纏ってるの!
服の上から霊衣を羽織ってる感じよ」
そう言う愛ちゃんのすごく呆れ顔だった。
空は顔を熱らせ俯いていた。
「そう言えば愛ちゃんは変身しないの?
てか数珠とか水晶とかお経書いてあるやつとかないんだね?
地獄先生的なやつ!」
「ま、と、い、な?
占い師かよ。そんなん無くてもお祓いなんてできるよ。てかそもそもお経が何言ってるかあんた分かってるの?」
「ん? 呪文みたいなやつで意味ないと思ってた」
愛ちゃんは頭を抑えていた。
あれれ~頭痛かな?
「一般人にはお経が何言ってるか勉強でもしない限りわからないでしょ?
それを霊に聞かせたって、霊も元人間なんだから何言ってるかわかんないんだよ。
だから成仏するわけないじゃん。日本人に英語で説教してるようなもんだよ。
だからこそ、成仏には共感が大事なの。
まあ、送り火って言う手もあるにはあるんだけど……」
「えぇ!? そうなの?」
でも確かにそうだ。
僕が霊だったとして、お経唱えられても何言ってんだこいつって思う。
「でもね。一応呪文みたいなものはあるよ。
それはね。あの世に送る前に神様にこの人を宜しくみたいな挨拶をするんだよ」
そう言うと空は胸の前で合掌した。
「まあ気休めみたいなもんだけどね」
なるほど、言われてみればという事が多すぎて、いかに今まで無知だったのかを思い知らされる。当たり前は当たり前では無いんだな。
「よっしゃ! 行きますか!」
僕は腕を伸ばして体をほぐした。
怖いけど気合を入れて空を守らねば。
「待って! あんたはここまで!」
そう言うと愛ちゃんは僕の腕を掴んだ。
「え? どうしてですか?」
「どうしてって危ないからだよ。
霊が見えるだけの一般人に出る幕はないよ」
愛ちゃんの口調が強めだ。
まるで子供に言い聞かせるように僕の目をじっと見つめて言った。
「大丈夫です! ここまで来て仲間外れなんて嫌ですよ!
なぁ空?」
そう言って空を見ると、彼女もいままでに無く真剣な顔をしていた。
「あっくんここに残って。お願いだから。
私は手伝って欲しいだけで、戦って欲しいわけじゃないの」
「空……でも……」
二人の視線が僕に刺さる。何も言えなくなって頷くしか無かった。
「よろしい。意地悪でいってるんじゃないの。
この仕事は体も危険だけど、心もやられてしまうの。
心は一度壊れたら完全には戻らない。だからこれ以上は、あたしらに任せなさい」
愛ちゃんは諭すように僕に言うと、二人は背を向けてマンションに入っていった。
本当にこれでいいのか?
そう思ったが、僕には確かに力がない。
「くそっ」
僕は吐き捨てるように言った。
このマンションは築年数がだいぶ経っており、所々の電球が切れ薄暗い。
それぞれの部屋の扉の前には、子供の自転車やおもちゃ。ゴミ袋や枯れた植木鉢などが無造作に置かれていてお世辞にも治安が良さそうには見えなかった。
古いコンクリートと生活臭が交わる階段を二人で登っていると不安感に襲われる。
コツンコツンと響く度に私の緊張感は増していった。
「やっぱり何度経験しても怖いよね」
私は恐怖心を和らげるために話しかけた。
「空ちゃん」
肩を叩かれ愛ちゃんの方を見るとほっぺたに人差し指がムニっと当たった。
「引っかかったー! ははははっ」
この人は本当に緊張感がない。
「もう! 愛ちゃん辞めてよ!」
私は頬を膨らませた。
でも、心が軽くなった。やっぱり愛ちゃんは優しいな。
そんな事をしながら歩いていると愛ちゃんがいきなり止まった。
「着いたよ。三○二号室。ここだね」
そう言うと彼女はカバンから針金を取り出して鍵穴をガチャガチャしだした。
いつ見ても手際がいい。でも愛ちゃんどこでこんな技術を覚えたんだろう。
「もうちょいだからちょっと待ってね」
私は「うん」と返事をしてマンションの前にある公園を見た。
あっくんが心配だった。怒ってないかな?
手伝わせて大事なところは立ち合わせないなんて私でも嫌だなって思う。
ブランコが揺れていた。
あっくんが乗っているのがわかった。でも、なんとなく寂しそうに見えて心が痛かった。
この光景見覚えがある。
引越しの前の日、彼が私の家に来てくれたあの日だ。
なのに私は嘘をついて追い返したんだっけ。
あの時も心配で覗いたとき、彼はとても寂しそうで胸が苦しかった。
だから、今回こそは……。
ガチャっ
「開いたよ! 入るから気をつけて!」
そう言うと愛ちゃんは少し扉を開けて中を覗いた。
「心愛ちゃんいる?」
「いや、見えないね。戸が閉まってる。入るよ!」
二人は足元を確認しながら中に入った。床がキィっと歩く度に軋む。
入った瞬間息が詰まるくらい空気がキンッと冷たく感じた。
全身をくまなく観察されているような感覚がある。
私は刀に手をかけた。
手が震えている。足がふらつき思うようにに進まない。怖い、やっぱり何度経験しても恐怖が無くならない。
すると愛ちゃんが開けるよと言ってリビングの扉に手をかけた。
キィィィィィィンッ
その時、黒板思いっきり引っ掻いたような音が耳に響き、二人とも思わず耳を塞いだ。
その瞬間、バンっと扉が空いた。
「お姉ちゃんたち、誰?」
見ると部屋の隅に女の子が立っていた。
心愛ちゃんだ。髪がボサボサで目には痣が出来ており、首元には閉められたであろう痕がある。
「心愛ちゃんだね?」
私が駆け寄ろうとしたら愛ちゃんの手がそれを防いだ。
「空ちゃんだめ!
構えていて、あたしがやるから!」
そう言うと彼女は、心愛ちゃんに手をかざしジリジリと近づいていった。
「助けて! お姉ちゃん。
痛いよぅ、苦しいよぅ」
声がかすれていてよく聞こえない。
恐らく喉が潰れているのだろう。
「助けてあげる。辛かったね。お母さんに叩かれて。お姉ちゃんが一緒にいるから、お話してみて?」
「ううん。ママはわるくないの。ぜんぶ、ここあがわるいの。ここあがいうこときかないからママがたたくの。
でも、いきなりママがここあのクビをギュってしたの。こわかったよ……いたかったよ……」
そう言うと彼女は目を抑えた。
抑える手にも痣があり、虐待の悲惨さが伺える。
「そんなことないよ心愛ちゃん!
心愛ちゃんは何も悪いことしてないじゃない!」
私は思わず叫んでしまった。
「心愛ちゃん。何でまだここに残ってるの?
何かやり残した事があるの?
お姉ちゃんに教えてくれるかな?」
愛ちゃんは優しく問いかけた。
「なんにもないよ。ただママがしんぱいなの」
私は内心ホッとした。良かったお母さんを恨んでるわけじゃないのか。私は膝をつき優しく話しかけた。
「お母さんは心配ないよ。きちんと罪を償っている。だからもう安心だよ?
お母さん思いでえらいね」
それを聞いた心愛ちゃんはにっこりと笑った。
「よかった。ママとまたあそびた」
「もう充分遊んだろ?」
そう言うと愛ちゃんは拳に力を込めた。
バリバリバリバリと大きな音がして拳が発光した。
これは彼女が霊を無理やり、いわば地獄へ送るときに使う技だ。
「愛ちゃん! なんで?」
愛ちゃんの表情は怒りに満ちていた。
「この子何一つ本当のこと言ってない。
普通の人は騙されても霊感がある奴は騙せないんだよ!
あんたの魂は真っ黒だ!」
「真っ黒って何言ってるの?
部屋が暗いからそう見えるんだよ!」
そう言って私は愛ちゃん腕を掴んだ。
微動だにしない。本気でやるつもりだ。
「あんたまだ分かんないのか!
この部屋中この子のどす黒い魂で埋め尽くされてんだよ!」
私は辺りを見渡すと、天井に薄らと丸い蛍光灯の明かりが見える。電気が付いている?
ずっとついていたの?
周りにあるはずの家具もモヤがかかったように見える。
「ひはは、ひひひぃはははははは」
いきなり心愛ちゃんが笑い出した。声が低くしゃがれている。女の子が出せる声じゃない。
「やっぱり、これはお母さんが一概に悪いとは言えないね。
あんた既に悪霊になってるね‼︎
あんたこれまで何人やったんだ?」
そう言うと愛ちゃんは床を人蹴りし、心愛ちゃんに向かって拳を振りかざした。
バチィ
その瞬間、愛ちゃんの体が弾け飛んだ。
背中を壁に打ち付けて苦しそうに悶えている。息ができないらしくウゥッと弱く唸っている。
「愛ちゃん!!!」
私は彼女に駆け寄ろうとしたが、カッと睨まれた。苦しそうに来るなと言った。
私は刀に手をかけ、心愛を見据え、姿勢を低くした。
呼吸を止めた瞬間斬る。
ふぅーと息をついた。
バギィバキバギバキバギバキバギ
骨が砕けるような音がする。彼女の腕や脚が不気味に長く伸びて四つん這いになった。口は耳まで裂け舌が垂れ下がっている。
「ににに、にん、げんも、ここ殺したい、
ちがたれるなかみがもれるあかとしろできれい。
おねえちゃんておいしいの。
どんなあじ?
どんなあじ?」
化物だ。面影はもうほとんどない。まるでカトンボのように伸びた手足と小さな体で地面をドタドタと這いずり回っている。
吐き気を催すほど不気味だ。
刀が震える。怖い怖い怖い怖い。息が乱れる。斬るの?
本当に?
まだ彼女を助ける手は残っているはずだ。彼女だって本当はまだ生きたかったはずだ。
探せ、探せ。
私が迷っていると心愛ちゃんだったものは窓を突き破り外へと飛び出した。
「やばい!
外には輝くんが!
空ちゃん早く行って!」
愛ちゃんは這いずりながら私に叫んだ。
「空、絶対情けをかけんなよ!」
私は部屋を飛び出し無我夢中で走った。
私のせいだ。私が迷ったから。
もう大切な人は失いたくない。絶対に!
キィッキィッ
あーあ、二人ともまだかなぁ。
もう、三十分ぐらい待ってる。
除霊見たかったなぁー。
どんな事するんだろう。やっぱり紙がついた棒を振って悪霊退散とか言うんだろうか。
恥ずかしくて見られたくなかったのかな?
ドクンッ
その時、心臓を鷲掴みされる感覚が襲った。
「なんだ?」
直感的に振り向くと、マンションの壁を這いつくばってる何かがいる。
僕は目を凝らした。
こっちを向いている?俺を見ているのか。絶対人じゃない。昆虫みたいに壁を這いずっている。
目があった。その瞬間思った。
逃げなきゃ。あいつはヤバすぎる!!
しかし脚が地面に縫い付けられたように動かない。背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
それは、凄い勢いでこちらに走ってくる。ドタドタと言う音が近づいてくる度に身体中に響く。
何かないか、何か?
パニックでうまく探せない。
ドタドタドタドタドタドタ
それは目の前に来て止まった。そして立ち尽くす僕の両肩をがっと掴んだ。
「くくくくび、ちちちちぎるとちが、ふふんすいになるんだよ」
ブチブチと言う音をさせて大きく口を開けている。皮膚が千切れて血が飛び散る。
頭からかぶりつこうとしているようだ。
それは白目がなく真っ黒で不気味な目をしている。
世界がゆっくりになる。ああ、走馬灯って本当にあるだ。
ああ、終わった。
僕は観念した。何をしても無駄だと思わせるほどの恐怖に身を委ねた。
その瞬間ポケットが熱くなり、パチンと弾けた。
するとその化け物は、大きな奇声を発しながら吹き飛んだ。
太腿に目をやるとあるはずのポケットがなくなり肌が見えていた。
地面にはコーヒーの豆が落ちていた。
マスターが守ってくれたようだ。あの人も霊媒関係の人だったのか。
すると、空が走ってきて僕を庇うかのように前に立った。
「はぁはぁ間に合った。
大丈夫あっくん。怪我は? どっか痛くない?」
振り返った彼女の顔は鬼気迫っていた。汗だくだ、必死に走って来たらしい。
「大丈夫だよ。それよりなんだあのキモいやつ。やばすぎるだろ?」
「あれは、心愛ちゃんだよ」
そう言うと化物に向き直った。しかし、怪物は何処にも居なかった。そこには小さい女子が蹲り泣いていた。
「痛いよぉ……ママ……
助けてぇ……」
なんだ?
何が起こってるんだ?
僕は彼女に駆け寄った。
「大丈夫か?
元に戻れたのか。辛かったな」
「あっくんダメっ‼︎」
その言葉で振り返ると、何かが背中から入ってくる。
「いでぇぇぇ」
思わず声が出た。
僕は振り向くと、女の子はニヤニヤしながら僕の体に手を突っ込んでいた。
「ねぇ、しんぞうちょうだい?」
そう言って内臓を掻き分ける感じと共に手が上に行くのを感じる。
痛すぎる。体内を直接こねられると激痛と吐き気で気を失いそうだ。
ぐぎぎぎあああああああ
自分が発してるのが信じられないほど苦痛な叫びを上げた。
こいつ、わざと内臓に爪を立てて遊んでるようだ。
あまりの痛みに意識が飛びそうになったその時。何かが脳に流れ込んできた。
目の前にマンションの一室が広がる。すると、若い女の人が僕を見て驚いている。
いや、怖がってるのか?
この人は心愛ちゃんのお母さんだ。
僕の手には黒いクレヨンを持っている。何か書いていたようだ。
……そうだ、それを母親に見せたんだ。
でも何故母親は怖がってるんだろう。
僕は絵を見るとその絵には真っ黒に塗りつぶされた背景で人の顔に袋がかぶされ吊るされていた。
だけど、何故だろう恐怖を感じない。
見てお母さん。凄いねって言って欲しい。そう思った。
するとまた場面が変わった。
グチャグチャと音がする。
手元を見ると、僕は子猫の首に包丁を突き刺している。何度も何度。
だが不思議と気持ち悪いと言うより、中はどうなってるんだろう早く見たいと言う気持ちになった。
場面が変わる。
また室内だ。
目の前にはまた母親がいる。
「来ないでお願い……来ないでぇ!」
そう言ってスマホを投げつけられた。
痛い。目が腫れてる。とっさに抑えると冷たい。見るとそれは包丁だった。
だが痛みなんてどうでも良かった。
見てみたい。人間て中身どうなってるんだろう。
大好きなお母さんはきっと普通の人間より綺麗だよね。
その瞬間息が苦しくなった。ぅぅぅぅと低い声が聞こえる。その声の主は僕だ。
頭の血がひいて冷たくなる感じがする。
目の前にはごめんねと繰り返しながら僕の首を締める母親がいた。
苦しい。口から泡が出てくる。助けて辛い。これが窒息するってことか。太腿があったかい。漏らしたようだ。
そして僕は意識を失った。
目を覚ますと先程と同じ部屋だ。
だが扉が開かない。閉じ込められたようだ。しばらくしたらお母さんが戻ってくるだろう。そう思い、包丁と今度は確実に殺せるように押し入れに隠れて待った。
何日経っただろう。
今まで感じたことのない空腹が襲う。
僕は自分の爪を食べたり髪の毛を食べたりタンスの木やティッシュなどを食べたが空腹は無くならなかった。
動けない。常に眠い。
するといきなり空腹がなくなった。
とても眠い何でだろう。
あれ? なんだか気持ちよくなってきたかも。
これが死…………
「あっくん!」
その瞬間僕の体が後ろに吹き飛んだ。
空の刀は女の子手をスパッと切り離した。
なんだったんだあれは、彼女の記憶?
あれが彼女の感じていた事だとしたら……。
「あっくん!
どいて!
邪魔しないで!」
彼女の怒鳴り声が、呆けている僕を現実に戻した。邪魔か……。
女の子は腕を押さえて奇声を上げてていた。
すると手足がゴギゴギと音を立て伸び、元に戻った。
「うわぁ……」
ドン引きだ、めちゃきもい。
空は刀に手を置き低く構えた。
すると化け物は苦しみながら立ち上がりった。
「ぐぎぎぎぎぎぃぃ…いだいだいだい……
こわしてやるぅう」
そう言うとそれは手を横に伸ばして手を広げた。
すると、いきなり人が現れた。
その人は首根っこを掴まれ項垂れている。女の……人?
そう言うと彼女は手を前に出し目を閉じた。
「おおっ! 変身か!?」
男心をくすぐるぜ!
テンションが上がってきた。やっぱり変身は漢のロマンだよな!
「変身じゃないよ! 纏だよ!
ま、と、い!」
「纏? なんかめちゃかっこいいなっ‼︎」
すると、後ろからバシッと頭を掴まれた。
「黙ってみてなよ。集中がいるんだから」
愛ちゃんはそう言いながら僕の頭をシェイクする。三半規管を破壊する恐ろしい技だ。コーヒーをリバースしそう。だが目は絶対離さないぜッ!
空は目を輝かせる僕に頬を赤らめながら再び目を瞑った。すると一瞬発光し手に黒い刀が現れ、服装も着物へと変わった。
よく見ると鞘に金の桜が散りばめてあり夜空に照らされ綺麗だ。
「おお~っ! かっこいいな!!
でも今まで着てた服どこいったの?」
「さっきも言ったでしょ? 纏ってるの!
服の上から霊衣を羽織ってる感じよ」
そう言う愛ちゃんのすごく呆れ顔だった。
空は顔を熱らせ俯いていた。
「そう言えば愛ちゃんは変身しないの?
てか数珠とか水晶とかお経書いてあるやつとかないんだね?
地獄先生的なやつ!」
「ま、と、い、な?
占い師かよ。そんなん無くてもお祓いなんてできるよ。てかそもそもお経が何言ってるかあんた分かってるの?」
「ん? 呪文みたいなやつで意味ないと思ってた」
愛ちゃんは頭を抑えていた。
あれれ~頭痛かな?
「一般人にはお経が何言ってるか勉強でもしない限りわからないでしょ?
それを霊に聞かせたって、霊も元人間なんだから何言ってるかわかんないんだよ。
だから成仏するわけないじゃん。日本人に英語で説教してるようなもんだよ。
だからこそ、成仏には共感が大事なの。
まあ、送り火って言う手もあるにはあるんだけど……」
「えぇ!? そうなの?」
でも確かにそうだ。
僕が霊だったとして、お経唱えられても何言ってんだこいつって思う。
「でもね。一応呪文みたいなものはあるよ。
それはね。あの世に送る前に神様にこの人を宜しくみたいな挨拶をするんだよ」
そう言うと空は胸の前で合掌した。
「まあ気休めみたいなもんだけどね」
なるほど、言われてみればという事が多すぎて、いかに今まで無知だったのかを思い知らされる。当たり前は当たり前では無いんだな。
「よっしゃ! 行きますか!」
僕は腕を伸ばして体をほぐした。
怖いけど気合を入れて空を守らねば。
「待って! あんたはここまで!」
そう言うと愛ちゃんは僕の腕を掴んだ。
「え? どうしてですか?」
「どうしてって危ないからだよ。
霊が見えるだけの一般人に出る幕はないよ」
愛ちゃんの口調が強めだ。
まるで子供に言い聞かせるように僕の目をじっと見つめて言った。
「大丈夫です! ここまで来て仲間外れなんて嫌ですよ!
なぁ空?」
そう言って空を見ると、彼女もいままでに無く真剣な顔をしていた。
「あっくんここに残って。お願いだから。
私は手伝って欲しいだけで、戦って欲しいわけじゃないの」
「空……でも……」
二人の視線が僕に刺さる。何も言えなくなって頷くしか無かった。
「よろしい。意地悪でいってるんじゃないの。
この仕事は体も危険だけど、心もやられてしまうの。
心は一度壊れたら完全には戻らない。だからこれ以上は、あたしらに任せなさい」
愛ちゃんは諭すように僕に言うと、二人は背を向けてマンションに入っていった。
本当にこれでいいのか?
そう思ったが、僕には確かに力がない。
「くそっ」
僕は吐き捨てるように言った。
このマンションは築年数がだいぶ経っており、所々の電球が切れ薄暗い。
それぞれの部屋の扉の前には、子供の自転車やおもちゃ。ゴミ袋や枯れた植木鉢などが無造作に置かれていてお世辞にも治安が良さそうには見えなかった。
古いコンクリートと生活臭が交わる階段を二人で登っていると不安感に襲われる。
コツンコツンと響く度に私の緊張感は増していった。
「やっぱり何度経験しても怖いよね」
私は恐怖心を和らげるために話しかけた。
「空ちゃん」
肩を叩かれ愛ちゃんの方を見るとほっぺたに人差し指がムニっと当たった。
「引っかかったー! ははははっ」
この人は本当に緊張感がない。
「もう! 愛ちゃん辞めてよ!」
私は頬を膨らませた。
でも、心が軽くなった。やっぱり愛ちゃんは優しいな。
そんな事をしながら歩いていると愛ちゃんがいきなり止まった。
「着いたよ。三○二号室。ここだね」
そう言うと彼女はカバンから針金を取り出して鍵穴をガチャガチャしだした。
いつ見ても手際がいい。でも愛ちゃんどこでこんな技術を覚えたんだろう。
「もうちょいだからちょっと待ってね」
私は「うん」と返事をしてマンションの前にある公園を見た。
あっくんが心配だった。怒ってないかな?
手伝わせて大事なところは立ち合わせないなんて私でも嫌だなって思う。
ブランコが揺れていた。
あっくんが乗っているのがわかった。でも、なんとなく寂しそうに見えて心が痛かった。
この光景見覚えがある。
引越しの前の日、彼が私の家に来てくれたあの日だ。
なのに私は嘘をついて追い返したんだっけ。
あの時も心配で覗いたとき、彼はとても寂しそうで胸が苦しかった。
だから、今回こそは……。
ガチャっ
「開いたよ! 入るから気をつけて!」
そう言うと愛ちゃんは少し扉を開けて中を覗いた。
「心愛ちゃんいる?」
「いや、見えないね。戸が閉まってる。入るよ!」
二人は足元を確認しながら中に入った。床がキィっと歩く度に軋む。
入った瞬間息が詰まるくらい空気がキンッと冷たく感じた。
全身をくまなく観察されているような感覚がある。
私は刀に手をかけた。
手が震えている。足がふらつき思うようにに進まない。怖い、やっぱり何度経験しても恐怖が無くならない。
すると愛ちゃんが開けるよと言ってリビングの扉に手をかけた。
キィィィィィィンッ
その時、黒板思いっきり引っ掻いたような音が耳に響き、二人とも思わず耳を塞いだ。
その瞬間、バンっと扉が空いた。
「お姉ちゃんたち、誰?」
見ると部屋の隅に女の子が立っていた。
心愛ちゃんだ。髪がボサボサで目には痣が出来ており、首元には閉められたであろう痕がある。
「心愛ちゃんだね?」
私が駆け寄ろうとしたら愛ちゃんの手がそれを防いだ。
「空ちゃんだめ!
構えていて、あたしがやるから!」
そう言うと彼女は、心愛ちゃんに手をかざしジリジリと近づいていった。
「助けて! お姉ちゃん。
痛いよぅ、苦しいよぅ」
声がかすれていてよく聞こえない。
恐らく喉が潰れているのだろう。
「助けてあげる。辛かったね。お母さんに叩かれて。お姉ちゃんが一緒にいるから、お話してみて?」
「ううん。ママはわるくないの。ぜんぶ、ここあがわるいの。ここあがいうこときかないからママがたたくの。
でも、いきなりママがここあのクビをギュってしたの。こわかったよ……いたかったよ……」
そう言うと彼女は目を抑えた。
抑える手にも痣があり、虐待の悲惨さが伺える。
「そんなことないよ心愛ちゃん!
心愛ちゃんは何も悪いことしてないじゃない!」
私は思わず叫んでしまった。
「心愛ちゃん。何でまだここに残ってるの?
何かやり残した事があるの?
お姉ちゃんに教えてくれるかな?」
愛ちゃんは優しく問いかけた。
「なんにもないよ。ただママがしんぱいなの」
私は内心ホッとした。良かったお母さんを恨んでるわけじゃないのか。私は膝をつき優しく話しかけた。
「お母さんは心配ないよ。きちんと罪を償っている。だからもう安心だよ?
お母さん思いでえらいね」
それを聞いた心愛ちゃんはにっこりと笑った。
「よかった。ママとまたあそびた」
「もう充分遊んだろ?」
そう言うと愛ちゃんは拳に力を込めた。
バリバリバリバリと大きな音がして拳が発光した。
これは彼女が霊を無理やり、いわば地獄へ送るときに使う技だ。
「愛ちゃん! なんで?」
愛ちゃんの表情は怒りに満ちていた。
「この子何一つ本当のこと言ってない。
普通の人は騙されても霊感がある奴は騙せないんだよ!
あんたの魂は真っ黒だ!」
「真っ黒って何言ってるの?
部屋が暗いからそう見えるんだよ!」
そう言って私は愛ちゃん腕を掴んだ。
微動だにしない。本気でやるつもりだ。
「あんたまだ分かんないのか!
この部屋中この子のどす黒い魂で埋め尽くされてんだよ!」
私は辺りを見渡すと、天井に薄らと丸い蛍光灯の明かりが見える。電気が付いている?
ずっとついていたの?
周りにあるはずの家具もモヤがかかったように見える。
「ひはは、ひひひぃはははははは」
いきなり心愛ちゃんが笑い出した。声が低くしゃがれている。女の子が出せる声じゃない。
「やっぱり、これはお母さんが一概に悪いとは言えないね。
あんた既に悪霊になってるね‼︎
あんたこれまで何人やったんだ?」
そう言うと愛ちゃんは床を人蹴りし、心愛ちゃんに向かって拳を振りかざした。
バチィ
その瞬間、愛ちゃんの体が弾け飛んだ。
背中を壁に打ち付けて苦しそうに悶えている。息ができないらしくウゥッと弱く唸っている。
「愛ちゃん!!!」
私は彼女に駆け寄ろうとしたが、カッと睨まれた。苦しそうに来るなと言った。
私は刀に手をかけ、心愛を見据え、姿勢を低くした。
呼吸を止めた瞬間斬る。
ふぅーと息をついた。
バギィバキバギバキバギバキバギ
骨が砕けるような音がする。彼女の腕や脚が不気味に長く伸びて四つん這いになった。口は耳まで裂け舌が垂れ下がっている。
「ににに、にん、げんも、ここ殺したい、
ちがたれるなかみがもれるあかとしろできれい。
おねえちゃんておいしいの。
どんなあじ?
どんなあじ?」
化物だ。面影はもうほとんどない。まるでカトンボのように伸びた手足と小さな体で地面をドタドタと這いずり回っている。
吐き気を催すほど不気味だ。
刀が震える。怖い怖い怖い怖い。息が乱れる。斬るの?
本当に?
まだ彼女を助ける手は残っているはずだ。彼女だって本当はまだ生きたかったはずだ。
探せ、探せ。
私が迷っていると心愛ちゃんだったものは窓を突き破り外へと飛び出した。
「やばい!
外には輝くんが!
空ちゃん早く行って!」
愛ちゃんは這いずりながら私に叫んだ。
「空、絶対情けをかけんなよ!」
私は部屋を飛び出し無我夢中で走った。
私のせいだ。私が迷ったから。
もう大切な人は失いたくない。絶対に!
キィッキィッ
あーあ、二人ともまだかなぁ。
もう、三十分ぐらい待ってる。
除霊見たかったなぁー。
どんな事するんだろう。やっぱり紙がついた棒を振って悪霊退散とか言うんだろうか。
恥ずかしくて見られたくなかったのかな?
ドクンッ
その時、心臓を鷲掴みされる感覚が襲った。
「なんだ?」
直感的に振り向くと、マンションの壁を這いつくばってる何かがいる。
僕は目を凝らした。
こっちを向いている?俺を見ているのか。絶対人じゃない。昆虫みたいに壁を這いずっている。
目があった。その瞬間思った。
逃げなきゃ。あいつはヤバすぎる!!
しかし脚が地面に縫い付けられたように動かない。背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
それは、凄い勢いでこちらに走ってくる。ドタドタと言う音が近づいてくる度に身体中に響く。
何かないか、何か?
パニックでうまく探せない。
ドタドタドタドタドタドタ
それは目の前に来て止まった。そして立ち尽くす僕の両肩をがっと掴んだ。
「くくくくび、ちちちちぎるとちが、ふふんすいになるんだよ」
ブチブチと言う音をさせて大きく口を開けている。皮膚が千切れて血が飛び散る。
頭からかぶりつこうとしているようだ。
それは白目がなく真っ黒で不気味な目をしている。
世界がゆっくりになる。ああ、走馬灯って本当にあるだ。
ああ、終わった。
僕は観念した。何をしても無駄だと思わせるほどの恐怖に身を委ねた。
その瞬間ポケットが熱くなり、パチンと弾けた。
するとその化け物は、大きな奇声を発しながら吹き飛んだ。
太腿に目をやるとあるはずのポケットがなくなり肌が見えていた。
地面にはコーヒーの豆が落ちていた。
マスターが守ってくれたようだ。あの人も霊媒関係の人だったのか。
すると、空が走ってきて僕を庇うかのように前に立った。
「はぁはぁ間に合った。
大丈夫あっくん。怪我は? どっか痛くない?」
振り返った彼女の顔は鬼気迫っていた。汗だくだ、必死に走って来たらしい。
「大丈夫だよ。それよりなんだあのキモいやつ。やばすぎるだろ?」
「あれは、心愛ちゃんだよ」
そう言うと化物に向き直った。しかし、怪物は何処にも居なかった。そこには小さい女子が蹲り泣いていた。
「痛いよぉ……ママ……
助けてぇ……」
なんだ?
何が起こってるんだ?
僕は彼女に駆け寄った。
「大丈夫か?
元に戻れたのか。辛かったな」
「あっくんダメっ‼︎」
その言葉で振り返ると、何かが背中から入ってくる。
「いでぇぇぇ」
思わず声が出た。
僕は振り向くと、女の子はニヤニヤしながら僕の体に手を突っ込んでいた。
「ねぇ、しんぞうちょうだい?」
そう言って内臓を掻き分ける感じと共に手が上に行くのを感じる。
痛すぎる。体内を直接こねられると激痛と吐き気で気を失いそうだ。
ぐぎぎぎあああああああ
自分が発してるのが信じられないほど苦痛な叫びを上げた。
こいつ、わざと内臓に爪を立てて遊んでるようだ。
あまりの痛みに意識が飛びそうになったその時。何かが脳に流れ込んできた。
目の前にマンションの一室が広がる。すると、若い女の人が僕を見て驚いている。
いや、怖がってるのか?
この人は心愛ちゃんのお母さんだ。
僕の手には黒いクレヨンを持っている。何か書いていたようだ。
……そうだ、それを母親に見せたんだ。
でも何故母親は怖がってるんだろう。
僕は絵を見るとその絵には真っ黒に塗りつぶされた背景で人の顔に袋がかぶされ吊るされていた。
だけど、何故だろう恐怖を感じない。
見てお母さん。凄いねって言って欲しい。そう思った。
するとまた場面が変わった。
グチャグチャと音がする。
手元を見ると、僕は子猫の首に包丁を突き刺している。何度も何度。
だが不思議と気持ち悪いと言うより、中はどうなってるんだろう早く見たいと言う気持ちになった。
場面が変わる。
また室内だ。
目の前にはまた母親がいる。
「来ないでお願い……来ないでぇ!」
そう言ってスマホを投げつけられた。
痛い。目が腫れてる。とっさに抑えると冷たい。見るとそれは包丁だった。
だが痛みなんてどうでも良かった。
見てみたい。人間て中身どうなってるんだろう。
大好きなお母さんはきっと普通の人間より綺麗だよね。
その瞬間息が苦しくなった。ぅぅぅぅと低い声が聞こえる。その声の主は僕だ。
頭の血がひいて冷たくなる感じがする。
目の前にはごめんねと繰り返しながら僕の首を締める母親がいた。
苦しい。口から泡が出てくる。助けて辛い。これが窒息するってことか。太腿があったかい。漏らしたようだ。
そして僕は意識を失った。
目を覚ますと先程と同じ部屋だ。
だが扉が開かない。閉じ込められたようだ。しばらくしたらお母さんが戻ってくるだろう。そう思い、包丁と今度は確実に殺せるように押し入れに隠れて待った。
何日経っただろう。
今まで感じたことのない空腹が襲う。
僕は自分の爪を食べたり髪の毛を食べたりタンスの木やティッシュなどを食べたが空腹は無くならなかった。
動けない。常に眠い。
するといきなり空腹がなくなった。
とても眠い何でだろう。
あれ? なんだか気持ちよくなってきたかも。
これが死…………
「あっくん!」
その瞬間僕の体が後ろに吹き飛んだ。
空の刀は女の子手をスパッと切り離した。
なんだったんだあれは、彼女の記憶?
あれが彼女の感じていた事だとしたら……。
「あっくん!
どいて!
邪魔しないで!」
彼女の怒鳴り声が、呆けている僕を現実に戻した。邪魔か……。
女の子は腕を押さえて奇声を上げてていた。
すると手足がゴギゴギと音を立て伸び、元に戻った。
「うわぁ……」
ドン引きだ、めちゃきもい。
空は刀に手を置き低く構えた。
すると化け物は苦しみながら立ち上がりった。
「ぐぎぎぎぎぎぃぃ…いだいだいだい……
こわしてやるぅう」
そう言うとそれは手を横に伸ばして手を広げた。
すると、いきなり人が現れた。
その人は首根っこを掴まれ項垂れている。女の……人?
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