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脱走! 脱走! 大脱走!!
*洞窟*〈ショコラ〉
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『アホ! ボケ! カス! スカポンタン娘!!』宇宙服の通信機から、ミルの怒声が響き渡った。『何年、宇宙で暮らしとるんや! 昼間の彗星が、危険やっちゅうことが、分からんのか! この、アホンダラ!!』
ミルに、一方的に言われっ放しだけど、あたしは言い返す事ができないでいた。
しょうがないよ。これはあたしが悪いし……
幸いな事に、乱気流に飛ばされた先にはジェットの収まった噴出口があった。あたしはとっさにジェットパックを吹かして、その穴に飛び込んだのである。
穴の底は、それほど深くなく穴の壁も底も非揮発成分で覆われていた。どうやら、この噴出口、かなり長い間ジェットが吹き出していないみたい。
さしずめ、死火山てとこか。
『ええか! 日没まで、そこから動いたらあかんで!』
「分かってるわよ」
『まったく、なんだって外へ出たりしたんや?』
「だって、ミルが船外作業してるって言うから、大丈夫だと思って……」
『うちらは、安全な退避所で作業しとるや。だけど、昼間はここから動けん』
『嵐が収まりましたぜ』
『さよか。ほな、ショコラ。うちら、これから船に帰るさかい。あんたも嵐が収まったら、すぐ帰るんやで』
「うん」
あたしは通信を切って時計を見た。日没まで後、三十分か。
あらためてあたしは、洞窟内を見回した。
直径は十メートルほど、深さは三十メートルくらい。
昔は、この穴からも、勢い良く水蒸気ジェットが吹き出していたんだろう。
長い年月の間にダスト粒子が滞積して、穴が塞がったんだ。
あたしは屈み込んで、底の砂を手にすくい取ってみた。
そこに、それが埋まっていた。
ミルに、一方的に言われっ放しだけど、あたしは言い返す事ができないでいた。
しょうがないよ。これはあたしが悪いし……
幸いな事に、乱気流に飛ばされた先にはジェットの収まった噴出口があった。あたしはとっさにジェットパックを吹かして、その穴に飛び込んだのである。
穴の底は、それほど深くなく穴の壁も底も非揮発成分で覆われていた。どうやら、この噴出口、かなり長い間ジェットが吹き出していないみたい。
さしずめ、死火山てとこか。
『ええか! 日没まで、そこから動いたらあかんで!』
「分かってるわよ」
『まったく、なんだって外へ出たりしたんや?』
「だって、ミルが船外作業してるって言うから、大丈夫だと思って……」
『うちらは、安全な退避所で作業しとるや。だけど、昼間はここから動けん』
『嵐が収まりましたぜ』
『さよか。ほな、ショコラ。うちら、これから船に帰るさかい。あんたも嵐が収まったら、すぐ帰るんやで』
「うん」
あたしは通信を切って時計を見た。日没まで後、三十分か。
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直径は十メートルほど、深さは三十メートルくらい。
昔は、この穴からも、勢い良く水蒸気ジェットが吹き出していたんだろう。
長い年月の間にダスト粒子が滞積して、穴が塞がったんだ。
あたしは屈み込んで、底の砂を手にすくい取ってみた。
そこに、それが埋まっていた。
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