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嫌悪の魔神

親の顔が見たい

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「ああ、すっきりしたわ」

 そう言って部長さんは、僕に退魔銃を返した。

「それじゃあ、僕はこいつを連れて帰りますので」

 退魔弾三十数発を食らって、すっかりズタボロになった寒太の霊を伴い僕は六星邸を後にする。

 ズタボロになったけど、しばらくすれば回復するだろう。

 ただ、退魔弾を食らっても、悪霊化の進行は止められないようだな。

 一昨日よりも、寒太から発する不快感が強くなっていた。

「ひでえよお……児童虐待だよ……」

 泣き言を言いながら横に浮いている寒太の霊を、僕は睨みつける。

「覗きは犯罪だって知っているかい? その程度で済んだだけでも、ありがたい方だよ」
「なんで犯罪になるんだよ?」
「女の人が嫌がるからだよ」
「いいじゃないか。女が嫌がったって、俺が見たいんだし」

 こ……このクソガキが……! いったいどういう教育を受けてきたのだ?

「寒太。ちょっと君の家に寄ってみたいのだが、いいか?」
「え? いや、別にいいけど……なんで?」
「いや、大した事はないんだ」

 単に、親の顔が見たくなっただけだが……

「寒太。君のお父さんやお母さんは、そういう事をしても、怒らないのか?」
「はあ? んなの、怒られるに決まってるじゃん。だから、ばれないようにやってんだよ」
「ばれなきゃいいって、問題じゃないだろう」
「なんで? だって、パパはいつも「そういう事は、ばれないように上手にやれ」って言って怒るぞ」

 怒る方向が間違っているのだが……

 その父親にしてこの子ありだな。

「ちなみにお母さんは、どんな事言っているのだ?」
「ん~ママは「○んでしまえ!」とか「家から出て行け!」とか、後は何言っているのか分からんような罵声を浴びせてくるな」

 まあ……分からんでもないが、それ母親としてどうなのだ?

「そういう時は、パパがママをなだめてくれるのだが、ママは「こんな恥ずかしいガキは、あの女のところへ送り返せ」って騒ぐんだよな」

 あの女?

「寒太。今のお母さんは、本当のお母さんじゃないのか?」
「よく分からないけど、そうらしい。本当のママは、俺を生んですぐに出て行ったって……」

 ううむ……寒太の場合、親に恵まれなかったようだが……

 だからと言って、寒太の悪事が許されるわけじゃない。 

 程なくして、僕は寒太の家に着いた。

 先に六星先輩の家に来ていたからあまり驚かなかったけど、ここも豪邸の部類だな。

 まあ、六星先輩の家は次元を越えていたけど……

「大きな家だな。寒太のお父さんは、何をやっているのだ?」
「えっへん! 俺のパパは社長だぜ」
「なるほど」
「パパは偉いんだぞ。だから俺も偉い。だから、おまえももっと俺を敬え」

 こいつは……

「寒太、おまえ学校でも、そうやってお父さんが社長だって自慢しているのか?」
「そうだけど」

 悪びれる様子もないな。

「だから、おまえはクラスのみんなに嫌われているのだよ」
「え? なんで? 社長の息子だって言えば、みんなから尊敬されるって聞いたぞ」
「誰から?」
「ママが言っていたのだが……」

 ここで寒太が言うママは、今の母親だよな。

 なんのために寒太にそんな事を?

 バカなのか? それとも……

「ちょっと、失礼します」

 突然声をかけられて振り向いた。

 そこにいるのは、身長二メートルはありそうな、がっしりとした体格に黒服を纏った中年男。

 なんだ! こいつは?
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