244 / 253
嫌悪の魔神
親の顔が見たい
しおりを挟む
「ああ、すっきりしたわ」
そう言って部長さんは、僕に退魔銃を返した。
「それじゃあ、僕はこいつを連れて帰りますので」
退魔弾三十数発を食らって、すっかりズタボロになった寒太の霊を伴い僕は六星邸を後にする。
ズタボロになったけど、しばらくすれば回復するだろう。
ただ、退魔弾を食らっても、悪霊化の進行は止められないようだな。
一昨日よりも、寒太から発する不快感が強くなっていた。
「ひでえよお……児童虐待だよ……」
泣き言を言いながら横に浮いている寒太の霊を、僕は睨みつける。
「覗きは犯罪だって知っているかい? その程度で済んだだけでも、ありがたい方だよ」
「なんで犯罪になるんだよ?」
「女の人が嫌がるからだよ」
「いいじゃないか。女が嫌がったって、俺が見たいんだし」
こ……このクソガキが……! いったいどういう教育を受けてきたのだ?
「寒太。ちょっと君の家に寄ってみたいのだが、いいか?」
「え? いや、別にいいけど……なんで?」
「いや、大した事はないんだ」
単に、親の顔が見たくなっただけだが……
「寒太。君のお父さんやお母さんは、そういう事をしても、怒らないのか?」
「はあ? んなの、怒られるに決まってるじゃん。だから、ばれないようにやってんだよ」
「ばれなきゃいいって、問題じゃないだろう」
「なんで? だって、パパはいつも「そういう事は、ばれないように上手にやれ」って言って怒るぞ」
怒る方向が間違っているのだが……
その父親にしてこの子ありだな。
「ちなみにお母さんは、どんな事言っているのだ?」
「ん~ママは「○んでしまえ!」とか「家から出て行け!」とか、後は何言っているのか分からんような罵声を浴びせてくるな」
まあ……分からんでもないが、それ母親としてどうなのだ?
「そういう時は、パパがママを宥めてくれるのだが、ママは「こんな恥ずかしいガキは、あの女のところへ送り返せ」って騒ぐんだよな」
あの女?
「寒太。今のお母さんは、本当のお母さんじゃないのか?」
「よく分からないけど、そうらしい。本当のママは、俺を生んですぐに出て行ったって……」
ううむ……寒太の場合、親に恵まれなかったようだが……
だからと言って、寒太の悪事が許されるわけじゃない。
程なくして、僕は寒太の家に着いた。
先に六星先輩の家に来ていたからあまり驚かなかったけど、ここも豪邸の部類だな。
まあ、六星先輩の家は次元を越えていたけど……
「大きな家だな。寒太のお父さんは、何をやっているのだ?」
「えっへん! 俺のパパは社長だぜ」
「なるほど」
「パパは偉いんだぞ。だから俺も偉い。だから、おまえももっと俺を敬え」
こいつは……
「寒太、おまえ学校でも、そうやってお父さんが社長だって自慢しているのか?」
「そうだけど」
悪びれる様子もないな。
「だから、おまえはクラスのみんなに嫌われているのだよ」
「え? なんで? 社長の息子だって言えば、みんなから尊敬されるって聞いたぞ」
「誰から?」
「ママが言っていたのだが……」
ここで寒太が言うママは、今の母親だよな。
なんのために寒太にそんな事を?
バカなのか? それとも……
「ちょっと、失礼します」
突然声をかけられて振り向いた。
そこにいるのは、身長二メートルはありそうな、がっしりとした体格に黒服を纏った中年男。
なんだ! こいつは?
そう言って部長さんは、僕に退魔銃を返した。
「それじゃあ、僕はこいつを連れて帰りますので」
退魔弾三十数発を食らって、すっかりズタボロになった寒太の霊を伴い僕は六星邸を後にする。
ズタボロになったけど、しばらくすれば回復するだろう。
ただ、退魔弾を食らっても、悪霊化の進行は止められないようだな。
一昨日よりも、寒太から発する不快感が強くなっていた。
「ひでえよお……児童虐待だよ……」
泣き言を言いながら横に浮いている寒太の霊を、僕は睨みつける。
「覗きは犯罪だって知っているかい? その程度で済んだだけでも、ありがたい方だよ」
「なんで犯罪になるんだよ?」
「女の人が嫌がるからだよ」
「いいじゃないか。女が嫌がったって、俺が見たいんだし」
こ……このクソガキが……! いったいどういう教育を受けてきたのだ?
「寒太。ちょっと君の家に寄ってみたいのだが、いいか?」
「え? いや、別にいいけど……なんで?」
「いや、大した事はないんだ」
単に、親の顔が見たくなっただけだが……
「寒太。君のお父さんやお母さんは、そういう事をしても、怒らないのか?」
「はあ? んなの、怒られるに決まってるじゃん。だから、ばれないようにやってんだよ」
「ばれなきゃいいって、問題じゃないだろう」
「なんで? だって、パパはいつも「そういう事は、ばれないように上手にやれ」って言って怒るぞ」
怒る方向が間違っているのだが……
その父親にしてこの子ありだな。
「ちなみにお母さんは、どんな事言っているのだ?」
「ん~ママは「○んでしまえ!」とか「家から出て行け!」とか、後は何言っているのか分からんような罵声を浴びせてくるな」
まあ……分からんでもないが、それ母親としてどうなのだ?
「そういう時は、パパがママを宥めてくれるのだが、ママは「こんな恥ずかしいガキは、あの女のところへ送り返せ」って騒ぐんだよな」
あの女?
「寒太。今のお母さんは、本当のお母さんじゃないのか?」
「よく分からないけど、そうらしい。本当のママは、俺を生んですぐに出て行ったって……」
ううむ……寒太の場合、親に恵まれなかったようだが……
だからと言って、寒太の悪事が許されるわけじゃない。
程なくして、僕は寒太の家に着いた。
先に六星先輩の家に来ていたからあまり驚かなかったけど、ここも豪邸の部類だな。
まあ、六星先輩の家は次元を越えていたけど……
「大きな家だな。寒太のお父さんは、何をやっているのだ?」
「えっへん! 俺のパパは社長だぜ」
「なるほど」
「パパは偉いんだぞ。だから俺も偉い。だから、おまえももっと俺を敬え」
こいつは……
「寒太、おまえ学校でも、そうやってお父さんが社長だって自慢しているのか?」
「そうだけど」
悪びれる様子もないな。
「だから、おまえはクラスのみんなに嫌われているのだよ」
「え? なんで? 社長の息子だって言えば、みんなから尊敬されるって聞いたぞ」
「誰から?」
「ママが言っていたのだが……」
ここで寒太が言うママは、今の母親だよな。
なんのために寒太にそんな事を?
バカなのか? それとも……
「ちょっと、失礼します」
突然声をかけられて振り向いた。
そこにいるのは、身長二メートルはありそうな、がっしりとした体格に黒服を纏った中年男。
なんだ! こいつは?
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる