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嫌悪の魔神

いや、心おきあるよ!

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 片側二車線の道路の反対側の歩道を歩いているのは、おかっぱ頭に麦藁帽子を被り浅黒い肌に白いワンピースをまとった幼女。

 しかも、その後を寒太が歩いている。

 間違えない、タンハーだ。

 僕と樒とミクちゃんは、コンビニの窓越しにその様子を眺めていた。

「あの子がタンハー? なんかイメージ違うな」

 タンハーを初めて見たミクちゃんは、首を捻っていた。

「ミクちゃん。見かけに騙されちゃだめよ。あいつは一見、可愛らしい幼女だけど、中身は魔神なんだから」
「ううん、それは分かるのだけど……ラーガ、アラティ、タンハーの三姉妹って言ったら、お釈迦様にエッチな誘惑をして修行を邪魔した魔神でしょ」
「まあ、そうだけど」
「あんな、あたしより胸の小さい子に、男を誘惑なんてできるのかな?」

 いや……それは……ていうか、ミクちゃん。なんかタンハーの胸を見て優越感に浸っていないか?

 相手は子供なんだし……

 いや、僕も人のこと言えんか。

 タンハーに『背が高いからって威張るな』と言われて、ちょっとだけ優越感覚えたし……

「ううん……その辺はどうだろう? 優樹に説明してもらおうか」
「なんで僕が!?」
「だって女の私には、男の欲求なんて分からないし」
「まあ……そうだな……」

 しかし、なんて説明すれば……

「つまりだな、男にもいろんな趣味の人がいてだな……」
「それは分かるけど、貧乳でも男の人を誘惑できるものなの?」
「だからあ、巨乳好きの男もいれば貧乳好きの男もいるのだよ。割合としては、巨乳好きの方が多いらしい」
「そうなの?」
「中には……」

 ここで僕は、信号待ちしているタンハーを指さした。

「ああいう子供がいいというロリコンもいるのだよ」
「そうなんだ。それじゃあ、優樹君の好みのタイプの女は?」

 う! それは……

 なんて答えれば……てか、なんでみんな僕に注目するう!

 ミクちゃんだけでなく、樒も司馬さんも降真亜羅までニヤニヤと僕を見つめている。

 よし! ここは……

「ああ! こんな事をしている場合じゃない! タンハーに逃げられる!」
「優樹。セリフ棒読みよ」

 う! やっぱし……

「大丈夫よ。優樹君」

 そう言ってミクちゃんは、タブレットを僕に向ける。

 そこには、タンハーと寒太の後ろ姿が映っていた。

「こんな事もあろうかと、式神に追跡させているから」
「おお! ミクちゃん偉い!」

 樒がミクちゃんの頭をなでなでする。

「えっへん! さあ、優樹君。追跡は大丈夫だから、心おきなく好みの女性を語っていいわよ」

 いや、心おきあるよ!

「この二人。何か話をしているわ」

 突然そう言って、僕の窮地? を救ってくれたのは降真亜羅だった。
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