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嫌悪の魔神
妹だという女の子?
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僕は観葉植物の間から顔を出して、司馬さんに声をかけた。
「司馬さん、ありがとう。もういいです」
司馬さんは振り向く。
「もういいの?」
「ええ。彼女が戻ってきたら、正直に話して協力を求めてみます」
「いいけど、私も同席させてね。このままだと、私は彼女を騙したことになるから」
程なくして、降真亜羅が戻ってきた。
「あら? 君は」
降真亜羅は、司馬さんの後に立っている僕を見て怪訝な表情を浮かべる。
ちなみに樒とミクちゃんには、観葉植物の向こうで待機してもらっていた。
「たしか、社君だったわね。君もここに来ていたの?」
僕はここで降真亜羅に頭を下げる。
「ごめんなさい、降真さん。あなたを疑っていました」
いきなり謝られて、降真亜羅は呆気にとられる。
まあ、正直言うと彼女への疑いが完全に晴れたわけではなく『さっきまでは疑っていたけど、今は信じているよーん』と思わせるためにやっているのだけどね。
「え? え? なんで謝るの? 疑っていたって?」
ここで寒太の写真を表示したスマホを見せた。
「え? この子は! 社君。知っているの?」
「ええ。僕は、ある人から、この子を捜すように頼まれていたのです」
正確には、人ではなく死神だけど……
「え? そうだったの?」
「はい。この男の子は荒木寒太と言って、実は誘拐された可能性のあると聞いていたのです。そしたら、降真さんが寒太を連れていたと、司馬さんから聞いたので……司馬さんは何も悪くはないのです。僕が無理に頼み込んで、降真さんを呼び出してもらい事情を聞き出してもらったのですから」
「あ! という事は私、あの子を誘拐したとか思われていたのかな?」
「ごめんなさい。寒太を保護してくれた人に、とんでもない失礼をしてしまいました」
「ああ、いいのよ。社君、頭を上げて。しょうがないわよ。この状況じゃ、私が疑われても」
僕の横で司馬さんも頭を下げた。
「ごめんね、降真さん。私もちょっと疑っていたの」
「いいのよ、司馬さん。それに私もあの男の子の扱いに困っていて、誰かに相談したいと思っていたの。私の方も助かったわ」
「困っていたの?」
「ええ。このまま、いつまでも私の家に置いておくわけにはいかないでしょ」
「それはちょうど良かったわ。社君、今から降真さんの家に行って、男の子を引き取ってくればいいじゃない」
「そうだね、降真さん。今からお家へお邪魔していいかな?」
「え? 今から家に来るの?」
降真亜羅は明らかに狼狽えた。
家に来られたら困るようだ。
やはり、今まで言っていた事は作り事で降真亜羅がアラティなのか?
しかし、これで彼女を怪しいと決めつけるのも無理があるな。
人にはそれぞれ事情があり、家に他人を入れたくないわけとかがあるだろう。
「ダメかな? 家に行ったら迷惑?」
「い……いえ、そんな事はないけど……家の中がすごく散らかっていて……」
「それじゃあ、僕は家の外で待っているから、寒太を連れてきてくれるかな?」
「そ……そうね。それならいいわ。あら?」
不意に降真亜羅がスマホを取り出した。
「母から着信が入っているわ。ちょっとごめんなさい。もしもし、え? それっていつのこと?」
彼女はスマホを耳から離して、僕の方を向いた。
「社君、あの子は寒太君って言ったわね?」
「ええ」
「寒太君の妹だという女の子が家へ来て、寒太君を連れて行ったそうよ」
「え?」
「二十分ほど前の事だそうだけど……」
妹だという女の子?
まさか! そいつって……
「司馬さん、ありがとう。もういいです」
司馬さんは振り向く。
「もういいの?」
「ええ。彼女が戻ってきたら、正直に話して協力を求めてみます」
「いいけど、私も同席させてね。このままだと、私は彼女を騙したことになるから」
程なくして、降真亜羅が戻ってきた。
「あら? 君は」
降真亜羅は、司馬さんの後に立っている僕を見て怪訝な表情を浮かべる。
ちなみに樒とミクちゃんには、観葉植物の向こうで待機してもらっていた。
「たしか、社君だったわね。君もここに来ていたの?」
僕はここで降真亜羅に頭を下げる。
「ごめんなさい、降真さん。あなたを疑っていました」
いきなり謝られて、降真亜羅は呆気にとられる。
まあ、正直言うと彼女への疑いが完全に晴れたわけではなく『さっきまでは疑っていたけど、今は信じているよーん』と思わせるためにやっているのだけどね。
「え? え? なんで謝るの? 疑っていたって?」
ここで寒太の写真を表示したスマホを見せた。
「え? この子は! 社君。知っているの?」
「ええ。僕は、ある人から、この子を捜すように頼まれていたのです」
正確には、人ではなく死神だけど……
「え? そうだったの?」
「はい。この男の子は荒木寒太と言って、実は誘拐された可能性のあると聞いていたのです。そしたら、降真さんが寒太を連れていたと、司馬さんから聞いたので……司馬さんは何も悪くはないのです。僕が無理に頼み込んで、降真さんを呼び出してもらい事情を聞き出してもらったのですから」
「あ! という事は私、あの子を誘拐したとか思われていたのかな?」
「ごめんなさい。寒太を保護してくれた人に、とんでもない失礼をしてしまいました」
「ああ、いいのよ。社君、頭を上げて。しょうがないわよ。この状況じゃ、私が疑われても」
僕の横で司馬さんも頭を下げた。
「ごめんね、降真さん。私もちょっと疑っていたの」
「いいのよ、司馬さん。それに私もあの男の子の扱いに困っていて、誰かに相談したいと思っていたの。私の方も助かったわ」
「困っていたの?」
「ええ。このまま、いつまでも私の家に置いておくわけにはいかないでしょ」
「それはちょうど良かったわ。社君、今から降真さんの家に行って、男の子を引き取ってくればいいじゃない」
「そうだね、降真さん。今からお家へお邪魔していいかな?」
「え? 今から家に来るの?」
降真亜羅は明らかに狼狽えた。
家に来られたら困るようだ。
やはり、今まで言っていた事は作り事で降真亜羅がアラティなのか?
しかし、これで彼女を怪しいと決めつけるのも無理があるな。
人にはそれぞれ事情があり、家に他人を入れたくないわけとかがあるだろう。
「ダメかな? 家に行ったら迷惑?」
「い……いえ、そんな事はないけど……家の中がすごく散らかっていて……」
「それじゃあ、僕は家の外で待っているから、寒太を連れてきてくれるかな?」
「そ……そうね。それならいいわ。あら?」
不意に降真亜羅がスマホを取り出した。
「母から着信が入っているわ。ちょっとごめんなさい。もしもし、え? それっていつのこと?」
彼女はスマホを耳から離して、僕の方を向いた。
「社君、あの子は寒太君って言ったわね?」
「ええ」
「寒太君の妹だという女の子が家へ来て、寒太君を連れて行ったそうよ」
「え?」
「二十分ほど前の事だそうだけど……」
妹だという女の子?
まさか! そいつって……
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