霊能者のお仕事

津嶋朋靖(つしまともやす)

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嫌悪の魔神

それが狙い

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 コンビニの広い駐車場にバイクを止めた。

 そのすぐ横に、ミクちゃんを後に乗せた樒のバイクが止まる。

「この店なの? 優樹のクラスメートがバイトしているのは」
「そうだよ」
「アラティは、もう来ているのかしら?」

 まだ、アラティと決まったわけじゃないけど……

「魔神クラスの霊気はないから、まだ来ていないんじゃないかな」
「ミクちゃん。ロックさんの話では、奴らが肉体化していたら、霊気も普通の人間と変わらないそうよ」 
「え? そうなの?」
「そうでなかったら、降真亜羅が転校してきた時点で、優樹が正体に気が付くわよ」
「いや、樒。まだ彼女がアラティと決まったわけではないし……」
「いや、ここまで怪しかったら間違いないでしょ」

 うーん……しかし、安易に人を疑うのは……

「いらっしゃいませ。あら? 社君」

 店内に入ると、司馬さんが出迎えてくれた。

「ども。降真さんは?」
「まだよ。ところでそっちの女の子達は、霊能者協会の同僚よね? てか、神森さんも霊能者だったの?」

 クラスは違うけど、樒の事は知っていたのか。

「そうよ。能力的には、私の方が優樹より上だけど」

 低能力ですんません。

「そちらの可愛い女の子は?」

 司馬さんに『可愛い』と言われたのがよほど嬉しかったのか、ミクちゃんの表情がパーっと輝く。

「どうもぉ! 綾小路あやのこうじ未来みくでーす。現役JCでーす」

 式神使いという事は、黙っていた方がよさそうだな。

「とりあえず、降真さんはもうすぐ来るから、張り込みなら、そこのイートイン使ってね」

 コンビニのイートインといったらカウンター席みたいなのが主流だけど、この店はテーブル席が四つあるタイプ。
 
 その中の一つに、僕達はそれぞれ飲み物を手に取って席に着いた。

「ミクちゃん。式神は?」

 僕に聞かれたミクちゃんは、飲みかけのオレンジジュースをテーブルに置いてリュックからタブレットを取り出した。

「店の入り口前に居るよ。カメラを持たせて」

 タブレットには、カメラから送られてくる映像が映っている。 

「しかし優樹。普通の人には式神が見えないけど、降真亜羅がアラティなら式神に気が付いて警戒されるわよ」
「それが狙い」
「え?」
「式神が見えたのなら、何らかのリアクションがあるはず。それが確認できたら、降真亜羅がアラティである可能性が高くなる」
「なるほど」
「あくまでも、可能性が上がるだけだけどね。ただの霊能者という可能性もあるし。逆にノーリアクションだったら、アラティではないという事になる」

 程なくして、うちの学校の制服を着た女子高生がタブレットの画面に映る。

「優樹。この子なの?」

 樒の質問に僕は頷く。

 現れたのは間違えなく降真亜羅。

 さて、式神に対してどんなリアクションをするか?

 降真亜羅は、店の入口の前で立ち止まった。

 不意に画面の向こうから、こっちを睨みつけてくる。

「式神が見えているのか?」
「こりゃあ決まりね」

 その時、降真亜羅はスカートの前を押さえた。

 なんのつもりだ? 

 降真亜羅は、そのまま店内に入ってくる。

「いらっしゃいませ。あら? 降真さん」
「司馬さん。警察を呼んで」
「何かあったの?」
「店の前にカメラを置いて、スカートの中を盗撮している奴がいるわ」

 え?
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