霊能者のお仕事

津嶋朋靖(つしまともやす)

文字の大きさ
226 / 314
嫌悪の魔神

きつね神

しおりを挟む
 次の場所で、比較的状態の良い浮遊霊に話しかけてみた。

 五十代くらいの女性だが……

「ごめんね。おばちゃん地縛霊じゃないから、いつもここにいるわけじゃないのよ」
「そうでしたか」
「昨日はずっと、新宿で映画館をハシゴしていたから、ここには来ていないね」

 無料タダで映画や芝居を観られるのは浮遊霊の特権。だから劇場には幽霊が集まりやすいと聞いていたが、本当だったんだな。

「ああ、そうだ!」

 そう言ってから、彼女は小さなほこらを指差す。

 祠の前には、一人の中年男性が突っ立っていた。

「あのおじさんに聞いてみな。あの人は、私が死ぬ前からここにいる地縛霊だから」
「はあ」

 とは言ったものの、おばさんの紹介してくれた地縛霊はあまり状態がよろしくない。

 しかし、せっかくだから声ぐらいかけてみよう。

「あの、すみません。ちょっとお話をお聞きしたいのですが……」

 男の霊は、僕の方を向いて口を開いた。

「ガラスが、雨の様に降ってきたんだ」
「はあ……」
「許さない、こんな……こんなヒドいこと」

 だめだ、こりゃあ。やっぱり話が通じない。

「モンタージュ写真の長髪男。あいつがやったのか? 教えてくれ」

 いや……僕に聞かれましても……

「違う。やったのは桐島」

 困った。話しかけるんじゃなかった。

「君達、何か困りごとかコン?」

 その声は、僕の背後からかかった。

 声の方を振り向くと……

 キツネ? 

 そこにいたのは一匹のキツネ。

 しかし、本物のキツネではない事はすぐに分かった。

 霊的存在だ。それもかなり格が高い亜神レベル。

「ミクちゃん。このキツネは式神?」

 樒の質問に、ミクちゃんは首を横にふる。

「このキツネさんは、そこの祠にまつられているお稲荷様だよ」

 なるほど、だからキツネの姿か。

 お稲荷様は、僕達が話しをしていた地縛霊を前足で指す。

「その地縛霊は、五十年前からそこにおるコン」

 五十年も経っていたら、そりゃあ意識は保てないな。

 てか語尾が『コン』って……キツネだから仕方ないのか?

「その男も、最初の頃はわしが話し相手になっていたコン。しかし、近頃はすっかりボケてしまって話し相手にならないコン」

 それは困った。

「その男に聞きたい事があるなら、わしが代わりに答えてやるコン」

 それは助かる。報酬はやはり油揚げかな?

「その代わり、その男を供養してやってほしいコン」

 そんな事でいいのなら……

「わっかりました」

 僕はスマホを取り出すと、霊能者協会にこの状況をメールで伝えた。

 程なくして返事が来る。

「霊能者協会に、供養依頼を出しました。近日中に協会の者が供養に来ます」

 たぶん来るのは母さんだと思うけど……

「それで、おまえさん達が聞きたいことは……」

 お稲荷様は、寒太を前足で指す。

「この悪ガキの事かコン?」

 悪ガキ呼ばわりされて寒太は激昂した。

「悪ガキとは何だ! このクソギツネ!」

 次の瞬間、樒のパンチが寒太の頭に炸裂。

「口の効き方に気をつけろ! この方は神様よ!」

 頭を押さえている寒太に、ミクちゃんも詰め寄る。

「そうよ、寒太君。失礼な事言うと、バチが当たるわよ」

 二人が寒太を折檻している間に、僕はお稲荷様の方へ行く。

「すみません、あいつバカなので。僕らでお仕置きしておきますから、どうかバチの方は……」
「バチの事なら、心配しなくていいコン」
「感謝します」
「バチなら、昨日のうちに当ててやったコン」
「それは良かっ……」

 え?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた

里奈使徒
キャラ文芸
 白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。  財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。  計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。  しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。  これは愛なのか、それとも支配なのか?  偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?  マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。 「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。

処理中です...