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嫌悪の魔神
見える子
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「優樹君!」
声の方へふり向くと、ミクちゃんがこっちへ向かって歩いてくるところ。
ちなみに白羽の矢は僕だけでなく、ミクちゃんにも立っていた。
普段はセーラー服だから中学生だと分かっていたが、私服だと小学生に見えなくもない。
だから女子児童への聞き込みは彼女に頼んでいたのだが、見るとミクちゃんは一人の女子児童を連れている。
「優樹君。この女の子が、寒太君を見たそうよ」
「本当に?」
僕は寒太の方を振り向く。
「知っている子か?」
「同じクラスの柴田だ。まあ、あんまり話した事はないけど。だって、あいつ俺の姿を見るとすぐに逃げていくし」
分かるような気がする。この女の子が、逃げたくなる気持ちが……
「この子が見たのは、昨日なのだけどね。さあ、柴田さん。この人に、もう一度さっきの話をしてくれない」
ミクちゃんに促されて、柴田さんは僕の前に進み出た。
「あの……」
と、言い掛けて柴田さんは押し黙った。
どうしたのだろう? 僕の方を見て固まっているが。
「優樹君」
ミクちゃんが耳打ちしてきた。
「この子、見えるらしいの」
「え? そうなの」
という事は、僕の横にいる寒太の霊に気が付いて驚いているのか?
「それとこの子、寒太君の事を怖がっているみたいなの」
虐められていたのかな?
確かに、寒太ならそういう事やっていそうだ。
僕は寒太の方を向いた。
「寒太。しばらくの間、ここを離れていてくれないか」
「なんで?」
「この子、霊が見えるらしい」
「知っているよ」
「なに?」
「柴田って、見えるって有名なんだ。まあ、俺は信じていなかったけど」
「そうか。とにかく、柴田さんは君の姿を見て怯えているようだ。だから……」
「はあ!? なんで俺を見て怯えるんだよ!?」
寒太は柴田さんの前に回り込む。
「ひぃぃっ!」
柴田さんは小さな悲鳴を上げて後ずさった。
「おい! 柴田! なんでいつも俺を避けるんだよ!?」
「いや! 怖い!」
「なんでだよ!? 俺は別に、おまえには何もしてないだろう!」
いや、現に今、威嚇をしているだろう。
「い……いや……」
嫌がる柴田さんに顔面を近づける。
こりゃあ止めた方がいいな。
懐から退魔銃を取り出したその時……
「こらあ!」
近くで待機していた樒が駆けつけてきて、寒太のドタマを殴りつけた。
「痛て! 何すんだよ!?」
「女の子を虐めるんじゃない!」
そのまま樒は、寒太の襟首を掴んで柴田さんから引き離す。
「痛ててて! 放せよ! 大女!」
あ~あ、樒の地雷踏んだな、寒太……
「誰が大女だってぇぇ?」
鬼の様な形相で樒に睨みつけられ、寒太は震え上がる。
「ひいいいい!」
「優樹。ミクちゃん。こいつは連れていくから、その子から事情を聞いておいて」
「分かった」
寒太を引きずって、樒は歩み去っていく。
さて、邪魔者は片づいたことだし……
柴田さんの方を向くと、まだ怯えていた。
「大丈夫だよ。いじめっ子はあの大きなお姉さんが、お仕置きしてくれるから」
「あの……」
柴田さんはようやく口を開く。
「今の……寒太君の幽霊? じゃあ、やはり昨日の事故で……」
ん? なんでこの子、寒太があの事故と関わっている事を知っているのだ?
寒太はあの事故で死んでいないのだから、知っている人間はいないはずだが……
いや、ロックさんの話では寒太のクラスメートの女の子が見ているはず。
「君。寒太が昨日の事故に関わっている事をなぜ知っているの?」
「そ……それは……」
「有村さんという女の子に聞いたのだね?」
柴田さんはコクっと頷く。
「昨日……澄香ちゃんから……有村さんから、電話があったんです。寒太君を殺してしまったって」
彼女は、ぽつりぽつりと話し始めた。
声の方へふり向くと、ミクちゃんがこっちへ向かって歩いてくるところ。
ちなみに白羽の矢は僕だけでなく、ミクちゃんにも立っていた。
普段はセーラー服だから中学生だと分かっていたが、私服だと小学生に見えなくもない。
だから女子児童への聞き込みは彼女に頼んでいたのだが、見るとミクちゃんは一人の女子児童を連れている。
「優樹君。この女の子が、寒太君を見たそうよ」
「本当に?」
僕は寒太の方を振り向く。
「知っている子か?」
「同じクラスの柴田だ。まあ、あんまり話した事はないけど。だって、あいつ俺の姿を見るとすぐに逃げていくし」
分かるような気がする。この女の子が、逃げたくなる気持ちが……
「この子が見たのは、昨日なのだけどね。さあ、柴田さん。この人に、もう一度さっきの話をしてくれない」
ミクちゃんに促されて、柴田さんは僕の前に進み出た。
「あの……」
と、言い掛けて柴田さんは押し黙った。
どうしたのだろう? 僕の方を見て固まっているが。
「優樹君」
ミクちゃんが耳打ちしてきた。
「この子、見えるらしいの」
「え? そうなの」
という事は、僕の横にいる寒太の霊に気が付いて驚いているのか?
「それとこの子、寒太君の事を怖がっているみたいなの」
虐められていたのかな?
確かに、寒太ならそういう事やっていそうだ。
僕は寒太の方を向いた。
「寒太。しばらくの間、ここを離れていてくれないか」
「なんで?」
「この子、霊が見えるらしい」
「知っているよ」
「なに?」
「柴田って、見えるって有名なんだ。まあ、俺は信じていなかったけど」
「そうか。とにかく、柴田さんは君の姿を見て怯えているようだ。だから……」
「はあ!? なんで俺を見て怯えるんだよ!?」
寒太は柴田さんの前に回り込む。
「ひぃぃっ!」
柴田さんは小さな悲鳴を上げて後ずさった。
「おい! 柴田! なんでいつも俺を避けるんだよ!?」
「いや! 怖い!」
「なんでだよ!? 俺は別に、おまえには何もしてないだろう!」
いや、現に今、威嚇をしているだろう。
「い……いや……」
嫌がる柴田さんに顔面を近づける。
こりゃあ止めた方がいいな。
懐から退魔銃を取り出したその時……
「こらあ!」
近くで待機していた樒が駆けつけてきて、寒太のドタマを殴りつけた。
「痛て! 何すんだよ!?」
「女の子を虐めるんじゃない!」
そのまま樒は、寒太の襟首を掴んで柴田さんから引き離す。
「痛ててて! 放せよ! 大女!」
あ~あ、樒の地雷踏んだな、寒太……
「誰が大女だってぇぇ?」
鬼の様な形相で樒に睨みつけられ、寒太は震え上がる。
「ひいいいい!」
「優樹。ミクちゃん。こいつは連れていくから、その子から事情を聞いておいて」
「分かった」
寒太を引きずって、樒は歩み去っていく。
さて、邪魔者は片づいたことだし……
柴田さんの方を向くと、まだ怯えていた。
「大丈夫だよ。いじめっ子はあの大きなお姉さんが、お仕置きしてくれるから」
「あの……」
柴田さんはようやく口を開く。
「今の……寒太君の幽霊? じゃあ、やはり昨日の事故で……」
ん? なんでこの子、寒太があの事故と関わっている事を知っているのだ?
寒太はあの事故で死んでいないのだから、知っている人間はいないはずだが……
いや、ロックさんの話では寒太のクラスメートの女の子が見ているはず。
「君。寒太が昨日の事故に関わっている事をなぜ知っているの?」
「そ……それは……」
「有村さんという女の子に聞いたのだね?」
柴田さんはコクっと頷く。
「昨日……澄香ちゃんから……有村さんから、電話があったんです。寒太君を殺してしまったって」
彼女は、ぽつりぽつりと話し始めた。
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