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事故物件2

転校生

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 数日後、番組が放送された。

 約束通り、樒とのキスシーンは削除してもらったようだが……

 その翌朝、ホームルーム前の教室では……

「すげー! 蔦の化け物が襲ってきたぞ」

 何人かの生徒が、昨夜放送された「六道魔入の怪奇レポート」の録画をスマホで見ていた。

「これ、CGじゃないのか?」

 本物だよ。

「可愛いなあ、この女の子。名前はなんて言うのかな?」

 ごめん。それ本当は僕。  

 彼らの背後からスマホをのぞき込むと、僕が蔦の化け物に捕まり宙づりにされたシーンが映っていた。

「このモザイク邪魔だな」
「くそう! せっかくのパンチラが」

 この変態どもが……

 不意に変態の一人が、僕の方を振り向く。

「そういえば社。おまえも霊能者協会に入っているんだろ。この可愛い女の子、誰だか知らないか?」
「し……知らない」

 知っているけど、知らない方が幸せだよ。

「もったいぶらないで教えろよ」

 しつこいなあ。

「だから、知らないって。協会に所属していると言っても、みんな顔見知りというわけじゃないんだから」
「これ、本当に女の子かしら?」

 なぬ!?

 声の方を振り向くと、一人の女生徒が自分のスマホを見つめている。

 その画面にも、僕が蔦に絡め捕られているシーンが……

「司馬さん。なぜ、これが女の子じゃないと?」

 司馬さんは、僕の方を振り向いた。

「この子が実は、女装した男の娘……」

 ギク! なぜばれた?

「だったらいいなあ、という単なる私の願望よ」
「願望?」
「私ね、可愛い男の子が、ヒドい目に遭って苦しんでいる姿を見るとゾクゾクするのよね。もし、この子が男の娘だったら、私的には最高なのだけど……」

 ここにも変態がいたあ!

 教室に担任が入って来たのはその時……

「ホームルームを始めるが、その前にみんなに転校生を紹介する」

 教室に入ってきた少女は、うちの学校とは違う制服を着ていた。

 たぶん、新しい制服が間に合わないので、前の学校の制服を着てきたのだろうと思うが……

「おお!」「可愛い!」

 教室のあちこちから、男子生徒の声が上がる。

 まあ、声を上げているのは、さっき僕の動画を見て騒いでいた変態達だけだが……

 変態達が喜ぶだけあって、彼女は整った顔立ちをしているがなんか表情が固い。

 まあ、転校したてで緊張しているのだろう。

 ん?

 僕と目が合った途端、彼女は驚いたような表情を浮かべた。

 あれ? この人顔見知りだったっけ?

 改めて彼女をよく観察してみた。

 身長は百六十前後。艶やかな黒髪は腰まであり、浅黒い肌をしている。

 ううん……この人どっかで会ったかな?

 まあ、僕の顔はネットで流出しちゃったから、案外それを見ただけかもね。

 彼女は教壇に上り、黒板に「降真亜羅」と書くと僕たちに向かって一礼した。

降真こうま亜羅あらです。諸事情によりセントレア学園から転校してきました。仲良くして下さい」

(「事故物件2」終了)
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