211 / 269
事故物件2
とんずら
しおりを挟む
その頃、夜の住宅街を、台車を押して走る三姉妹の姿があった。
台車に積まれているダンボール箱の中には、直径二センチ高さ三センチ程の小さな壷がぎっしりと詰まっている。
小さな壷だが、その一つ一つには凶悪な悪霊が封印されていた。
三姉妹の先頭を進んでいた長女の羅亜香が、なにやらぶつぶつと小声でつぶやいている。
「計画は完璧だったのよ。北条菖蒲のいる物件へ社優樹を行かせて襲われるようにし向ける。あの女はショタコンだから社優樹を襲っても不自然ではなく、霊界スマホ奪還という目的は悟られない。そして、襲った結果、霊界スマホを所持しているのは彼ではなく、神森樒だと分かった。そこで、北条菖蒲を六道魔入に憑依させて、電話をかけさせて、社優樹の手で霊界スマホを持ってこさせる事に成功して見事に奪還できた。それなのに……」
羅亜香は、悔しそうに霊界スマホを握りしめる。
「まさか。スマホに追跡装置を仕掛けられていたとは……」
長女のすぐ後を進んでいた次女の降真 亜羅はその呟き声を聞き逃さなかった。
嫌悪の魔神アラティをその身に秘めている、現在十六歳の女子高生である亜羅は悩ましげな顔をする。
「あのさあ、ラー姉。普通に考えて罠だって分からない? 霊界スマホが人間の手に渡った時点で、死神が仕組んでいたのじゃないかって思わないの?」
「思わないわよ。ねえ、ハーちゃん」
羅亜香は、一番後ろを進んでいた三女の葉子に同意を求める。
「わらわは、少し変だと思ったぞよ」
「裏切り者!」
「そんな事よりラー姉。アジトに残してきた悪霊達はどうするぞよ? これを車に積んだら、取りに戻るか?」
羅亜香は腕時計に目を走らせる。
「無駄よ。今頃は、死神が回収しているわ。ああ! もう! せっかく霊界から連れてきた悪霊を、半分も失うなんて……」
「半分持ち出せただけでもマシぞよ」
三姉妹が街角を曲がった時、コインパーキングの黄色い看板が見えてきた。
そこに、逃走用のワゴン車を用意してあったのだ。
ワゴン車の荷台に、ダンボールと台車を積み込むと、亜羅は腕時計で時間を確認した。
「そろそろ、死神がアジトに残してきた悪霊の回収作業を終える頃よ」
亜羅は、霊界スマホから外しておいた霊界GPSを握りしめる。
「とにかく、私がこれを持って逃げ回るから。ラー姉とハーちゃんは次のアジトへ向かって」
「分かったわ」「分かったぞよ」
「まったく、アジトだけでなく、私の学校まで死神に知られちゃったじゃないの。これが済んだら、転校先探さないと……」
「転校先は私が手続きしておくから、亜羅は囮役お願いね」
「はいはい」
亜羅は身体を霊体化すると、夜空へ飛び立っていった。
台車に積まれているダンボール箱の中には、直径二センチ高さ三センチ程の小さな壷がぎっしりと詰まっている。
小さな壷だが、その一つ一つには凶悪な悪霊が封印されていた。
三姉妹の先頭を進んでいた長女の羅亜香が、なにやらぶつぶつと小声でつぶやいている。
「計画は完璧だったのよ。北条菖蒲のいる物件へ社優樹を行かせて襲われるようにし向ける。あの女はショタコンだから社優樹を襲っても不自然ではなく、霊界スマホ奪還という目的は悟られない。そして、襲った結果、霊界スマホを所持しているのは彼ではなく、神森樒だと分かった。そこで、北条菖蒲を六道魔入に憑依させて、電話をかけさせて、社優樹の手で霊界スマホを持ってこさせる事に成功して見事に奪還できた。それなのに……」
羅亜香は、悔しそうに霊界スマホを握りしめる。
「まさか。スマホに追跡装置を仕掛けられていたとは……」
長女のすぐ後を進んでいた次女の降真 亜羅はその呟き声を聞き逃さなかった。
嫌悪の魔神アラティをその身に秘めている、現在十六歳の女子高生である亜羅は悩ましげな顔をする。
「あのさあ、ラー姉。普通に考えて罠だって分からない? 霊界スマホが人間の手に渡った時点で、死神が仕組んでいたのじゃないかって思わないの?」
「思わないわよ。ねえ、ハーちゃん」
羅亜香は、一番後ろを進んでいた三女の葉子に同意を求める。
「わらわは、少し変だと思ったぞよ」
「裏切り者!」
「そんな事よりラー姉。アジトに残してきた悪霊達はどうするぞよ? これを車に積んだら、取りに戻るか?」
羅亜香は腕時計に目を走らせる。
「無駄よ。今頃は、死神が回収しているわ。ああ! もう! せっかく霊界から連れてきた悪霊を、半分も失うなんて……」
「半分持ち出せただけでもマシぞよ」
三姉妹が街角を曲がった時、コインパーキングの黄色い看板が見えてきた。
そこに、逃走用のワゴン車を用意してあったのだ。
ワゴン車の荷台に、ダンボールと台車を積み込むと、亜羅は腕時計で時間を確認した。
「そろそろ、死神がアジトに残してきた悪霊の回収作業を終える頃よ」
亜羅は、霊界スマホから外しておいた霊界GPSを握りしめる。
「とにかく、私がこれを持って逃げ回るから。ラー姉とハーちゃんは次のアジトへ向かって」
「分かったわ」「分かったぞよ」
「まったく、アジトだけでなく、私の学校まで死神に知られちゃったじゃないの。これが済んだら、転校先探さないと……」
「転校先は私が手続きしておくから、亜羅は囮役お願いね」
「はいはい」
亜羅は身体を霊体化すると、夜空へ飛び立っていった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる