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事故物件2

憑依された

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 僕に怒鳴られても、タンハーはまったく悪びれる様子はなかった。

「子供の悪戯程度で出動するなんて、日本の警察は暇じゃのう」

 おまえ、日本中の警察官に謝れ!

「バイク泥棒が、子供の悪戯程度で済むか! だいたいなんで、バイクを盗んだりした!?」
「いや……急いでいたら、ちょうどいいところにエンジンのかかったバイクが捨ててあったので……」
「そういうのは捨ててあったんじゃなくて、駐輪していたというんだよ!」
「ええ!? ハーちゃん小さいから、良くわかんなーい」

 都合のいいときだけ、子供に戻りやがって……

「どうやら悪い子には、お仕置きが必要なようだな」
「ふん! お仕置きだと……今のわらわは霊体じゃ。あの大女ならともかく、おまえに霊体を殴れるのか?」
「殴る事はできないが、僕にはこういう玩具があってね」

 退魔銃をタンハーに向けた。

「銃? バカか。霊体に銃が通じるわけがないだろう。ホレホレ、撃てるもんなら撃ってみい」

 ではお言葉に甘えて……

 とは言っても、直撃させるのは可哀想だから、肩を掠めるように撃った。

 しかし……

「ひいいい! 熱い! 熱い! なんじゃその銃は!? めちゃくちゃ痛いぞ」

 掠めただけでここまで痛がるとは……ちょっと可哀想だったかな。

「これは、対悪霊用の退魔銃だ」
「ひいい! そんな凶悪な武器で、か弱い幼女をいじめるのか!」
「この銃は霊体には効果あるが、肉体に対してはただのBB弾だ。だから、今更肉体に戻ろうなんてするなよ。効果が無くなるから」
「何言っている? BB弾だって、当たったら痛いじゃないか」
「いやいや、肉体に戻ったらここにいるお巡りさんにおまえの姿が見えちゃうだろ。そうすると僕はこれを撃てなくなるじゃないか」
「なに!? そうだったのか。では……」

 タンハーの身体が光を放ち、肉体に戻っていく。

 単純な奴。これでこいつの姿は婦警さん達に丸見えだな。

 僕は退魔銃をホルスターに戻すと、婦警さん達の方を振り向く。

「お巡りさん。さっき、バイクを運転していた子供がここに……」
「え?」「あんたどこに隠れていたのよ?」
「え? いや……わらわは……」
「こっちへ来なさい」
「ちょっ! ま……」

 そのままタンハーは、婦警さん達に捕まりパトカーに乗せられて行った。

 さて邪魔者は片づいたと、後は……

「魔入さん。あれ?」

 魔入さんの姿がない。

 どこに? !

 唐突に背後から気配……

 横っ飛びに飛び退く。

 振り返ると、両手を前に突き出した状態の魔入さんが立っていた。

 まるで、今まさに背後から僕を押さえつけようとしていたかのように……

「魔入さん?」
「なかなか勘がいいな」
「え?」

 魔入さんって、こんな喋り方だったっけ?

「だけど、私のテリトリーに入ったからには、もう逃がさない」

 え?

 ザワザワ!

 家を覆っていた蔦が蠢き始めた。

 しかし、僕の方へ向かって来ない。

 門の方へと伸びていき、そこを完全に覆い尽くしていく。

 この家を囲っている塀は、とても高くてよじ登れそうにない。 
 
 完全に退路を塞がれた。

「魔入さん。あなたは……」

 魔入さんは何も答えず、ただ不気味な笑みを浮かべている。

 これは……?

 悪霊に憑依されている!
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