188 / 269
事故物件2
タンハーのスマホ
しおりを挟む
家に帰り着いた時には、僕の体調はすっかり回復していた。
ブースターって凄いな。
「ただいま」
リビングに入ると、樒が来ていて母さんと話をしていた。
「お帰り……」
僕の方を振り向いた母さんの顔がひきつっていた。
そうか。現場で倒れた事を樒から聞いたのだな。
心配かけてごめんね。……ん?
母さん、なんでスマホを僕に向けて写真を撮るの?
あれ? 樒まで僕にスマホを向けて……
「優樹。あんた」「その格好で帰ってきたの?」
え? その格好? ……!
「あああああ!」
不覚! 女装したままだった。
「可愛い! 私、本当は娘がほしかったのよね」
「息子で悪かったね」
「あら? 悪くないわよ。男の子のままでも、優樹は可愛いから。でも、女の子の格好をさせるともっと可愛いわ」
「分かったから、もう写真撮らないでよ」
「良いじゃない。減るもんじゃないし」
「僕の心がすり減る」
スマホから電話の呼び出し音が鳴ったのは、僕が自室へ逃げ込んだ時。
電話の相手は、魔入さん。
『社さん。今、私はあの家の前にいるのだけど』
「はあ? 何やっているんです! 危険だから、すぐに離れて下さい」
『それが、ディレクターがパワーストーンを回収できなかったのなら、弁償しろと言われて』
「お金と命とどっちが大切ですか!」
『どっちも大切よ。だから、退魔弾の代金は負担するから、私がパワーストーンを回収する間、護衛してほしいのよ』
「そんな事、樒に頼んで下さい」
『頼んだけど、断られたから君に頼んでいるんじゃない』
「樒が無理なら、僕なんか余計無理です」
『お願い。無料とは言わないから』
「お金を積まれても行きません」
『君。さっき、キスシーンを放送しないでと言っていたわね』
「ええ、言いましたけど、どうせ放送するのでしょ」
『護衛してくれたら、あの映像はカットするわ』
「本当でしょうね?」
『本当よ。正直言って私としても、あのシーンは入れたくないのよね。君のファンが減るから……』
いや、それは減らしたいのだけど……でも、先生にキスシーンを見られたくないし……
『そうそう。家の中まで入らなくてもいいわ』
「家に入らないで、どうやってパワーストーンを回収するんですか?」
『ドローンを使うわ』
「ドローン? しかし、ドローンのような無線機器も、霊の妨害を受けやすいのですよ」
『大丈夫。私の使っているドローンは、霊障対策を施してある特別製よ』
そんなのあったんだ。
「そうですか。しかし、あのパワーストーンって、そこまでして回収しなきゃ行けないほど高価な物なのですか?」
見たところブラックオニキスの様だけど、あれはそんな高価な石ではないはず。
『石そのものは高価ではないけど、高名な霊能者の念が込められているのよ』
まあ、そうだとすると安くはないな。
『それとね。スマホを持ってきてほしいの』
「スマホ? スマホを無くしたのですか?」
『違うわよ。この前、私のお爺ちゃんに使ってもらった幽霊でも使えるスマホ』
タンハーのスマホか。しかし、あれは……
「あれは樒が持っているので……」
『だから、君から頼んでみて』
「それは良いですけど、何に使うのですか?」
『ドローンで運んで、幽霊に渡してからインタビューを』
物好きな……しかし、そんな事をしたら貴重なスマホを紛失しそうだし、樒がOKするとは思えないな。
「まあ、いいですけど……樒がダメだと言ったら諦めて下さい」
だが、電話を切ってから、リビングに戻ると
「良いわよ」
僕から事情を聞いた樒は、あっさりとスマホを差し出した。
「良いの?」
「ただしレンタル料はいただくわよ。これは不正請求じゃないからね。魔入さんにはちゃんとその事を伝えてね」
「分かった」
僕は樒からスマホを受け取ると、再びあの物件に向かった。
ブースターって凄いな。
「ただいま」
リビングに入ると、樒が来ていて母さんと話をしていた。
「お帰り……」
僕の方を振り向いた母さんの顔がひきつっていた。
そうか。現場で倒れた事を樒から聞いたのだな。
心配かけてごめんね。……ん?
母さん、なんでスマホを僕に向けて写真を撮るの?
あれ? 樒まで僕にスマホを向けて……
「優樹。あんた」「その格好で帰ってきたの?」
え? その格好? ……!
「あああああ!」
不覚! 女装したままだった。
「可愛い! 私、本当は娘がほしかったのよね」
「息子で悪かったね」
「あら? 悪くないわよ。男の子のままでも、優樹は可愛いから。でも、女の子の格好をさせるともっと可愛いわ」
「分かったから、もう写真撮らないでよ」
「良いじゃない。減るもんじゃないし」
「僕の心がすり減る」
スマホから電話の呼び出し音が鳴ったのは、僕が自室へ逃げ込んだ時。
電話の相手は、魔入さん。
『社さん。今、私はあの家の前にいるのだけど』
「はあ? 何やっているんです! 危険だから、すぐに離れて下さい」
『それが、ディレクターがパワーストーンを回収できなかったのなら、弁償しろと言われて』
「お金と命とどっちが大切ですか!」
『どっちも大切よ。だから、退魔弾の代金は負担するから、私がパワーストーンを回収する間、護衛してほしいのよ』
「そんな事、樒に頼んで下さい」
『頼んだけど、断られたから君に頼んでいるんじゃない』
「樒が無理なら、僕なんか余計無理です」
『お願い。無料とは言わないから』
「お金を積まれても行きません」
『君。さっき、キスシーンを放送しないでと言っていたわね』
「ええ、言いましたけど、どうせ放送するのでしょ」
『護衛してくれたら、あの映像はカットするわ』
「本当でしょうね?」
『本当よ。正直言って私としても、あのシーンは入れたくないのよね。君のファンが減るから……』
いや、それは減らしたいのだけど……でも、先生にキスシーンを見られたくないし……
『そうそう。家の中まで入らなくてもいいわ』
「家に入らないで、どうやってパワーストーンを回収するんですか?」
『ドローンを使うわ』
「ドローン? しかし、ドローンのような無線機器も、霊の妨害を受けやすいのですよ」
『大丈夫。私の使っているドローンは、霊障対策を施してある特別製よ』
そんなのあったんだ。
「そうですか。しかし、あのパワーストーンって、そこまでして回収しなきゃ行けないほど高価な物なのですか?」
見たところブラックオニキスの様だけど、あれはそんな高価な石ではないはず。
『石そのものは高価ではないけど、高名な霊能者の念が込められているのよ』
まあ、そうだとすると安くはないな。
『それとね。スマホを持ってきてほしいの』
「スマホ? スマホを無くしたのですか?」
『違うわよ。この前、私のお爺ちゃんに使ってもらった幽霊でも使えるスマホ』
タンハーのスマホか。しかし、あれは……
「あれは樒が持っているので……」
『だから、君から頼んでみて』
「それは良いですけど、何に使うのですか?」
『ドローンで運んで、幽霊に渡してからインタビューを』
物好きな……しかし、そんな事をしたら貴重なスマホを紛失しそうだし、樒がOKするとは思えないな。
「まあ、いいですけど……樒がダメだと言ったら諦めて下さい」
だが、電話を切ってから、リビングに戻ると
「良いわよ」
僕から事情を聞いた樒は、あっさりとスマホを差し出した。
「良いの?」
「ただしレンタル料はいただくわよ。これは不正請求じゃないからね。魔入さんにはちゃんとその事を伝えてね」
「分かった」
僕は樒からスマホを受け取ると、再びあの物件に向かった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる