173 / 253
事故物件2
退魔銃に色気が足りない
しおりを挟む
できれば退魔銃は使わないで済ませたいけど……もしこれでも手に負えない事態になったら、外で待機している樒を呼ぶことになるのだが……
爺さんは、しきりに周囲を見回して困惑していた。
「なぜだ? ここは、私が警備していたビルのはず。でも、まるで廃墟のようではないか」
「あなたは胸が苦しくなった後、そのままお亡くなりになったのです」
「では、私は死んでいるのか?」
「はい。あなたが死んでから、半年が経過しています」
「半年も? それでは……私は……私は……」
爺さんは、頭を抱えて震えだした。
危ない兆候だろうか?
「私は……私は……」
え? 突然爺さんは満面の笑みを浮かべた。
「もう借金を返さなくていいのか!」
え? そっち?
「まったく、半年も前に死んでいた事にも気がつかないで、借金取りに怯えていたとは……教えてくれてありがとう。お嬢ちゃん」
「あの……僕、男なのですけど……」
「ありがと……」
そのまま爺さんは成仏して姿を消した。
まあ、いいか。仕事が楽に片づいたのだから。
それだというのに、魔入さんは不満そう。
何が気に入らないのだろう?
「簡単過ぎるのよ」
「いいじゃないですか。仕事が楽に終わったのだから……」
「君は、それでいいかもしれないけど、私はそれじゃあ困るの。私はこれから、今回撮った映像を視聴者に受けるように脚色しなきゃならないのよ」
「はあ」
そんな事、僕の知ったこっちゃない。
「脚色なんて、いつもやっているのでしょ」
「そりゃあそうだけど……」
「何が不満なのですか?」
「今回の霊は、なんの不満も言わないであっさりと成仏しちゃったわ」
「良いことじゃないですか」
「良くないわよ。不満を言ってくれないと、何が不満で成仏できなかったのか、でっち上げなきゃならないじゃないの。まあ、でっちあげるけど」
「僕としては、それがスゴくイヤなのですけど」
「何がイヤなの?」
「今回のお爺さん、いい人でしたよ。それを魔入さんは、何か怨念でもあるのかのように描写するのでしょ」
「まあ、そうなるわね。そうだ! あのお爺さん、借金を返さなくて済むと言っていたわね。過酷な取り立てをした闇金への恨みで、成仏できなかったという事にしましょう」
「やめましょうよ! お金を貸していたのが闇金とは限らないでしょ! 真っ当な会社かもしれないし」
「貸金業やっている人間に、真っ当な人間なんている訳ないでしょ」
偏見だよ。
「金貸しなんて、金が返せないと、胸の肉を寄越せとか言うような奴らよ」
それシェークスピアの創作だから。あ! でも、臓器を売れとかいう奴は実際にいるか。
「もういいです。好きにして下さい。でも、お爺さんにも遺族がいるかもしれないし、あんまりヒドい番組作ったら訴えられますよ」
「それは大丈夫。幽霊が誰なのかは、特定されないようにやるから」
「そうですか」
「しかし、残念だわ。できれば、君が退魔銃を撃つところも撮影したかったのに」
「退魔弾は高いんですよ」
「必要経費として一万円出すわ」
樒には、外で待機してもらっていてよかった。あいつの前で金の話とかされたら面倒だし……
「それにしても、君の退魔銃は色気が足りないわね」
「はあ? 銃に色気もへったくりも……」
「いやいや。君はベストの内側に隠したショルダーホルスターから退魔銃を抜いているわね」
「それが何か?」
「巨乳お姉さんがそれをやるなら、色気があるけど貧乳の君では……」
「貧乳もへったくりも僕は男です」
「だからね」
突然、魔入さんは僕のスカートを捲り上げる。
「ひゃううう! な……何するんですか!」
僕は慌ててスカートを抑えた。
「足に着けるホルスターってあるじゃない。だから、それに退魔銃を付けて、銃を抜くときにチラリと太ももを見せれば色気が出るわ」
「この場合、色気なんて必要ないでしょ!」
「視聴率を上げるのには必要なのよ」
そんなの僕の知ったこっちゃない。
「まあ今回は仕方ないけど、次は退魔銃が必要になるような物件に当たると良いわね」
「まだやるんですか? そのうち痛い目に遭いますよ」
いや、一度痛い目に遭え! ただし、僕と関係のないところで……
爺さんは、しきりに周囲を見回して困惑していた。
「なぜだ? ここは、私が警備していたビルのはず。でも、まるで廃墟のようではないか」
「あなたは胸が苦しくなった後、そのままお亡くなりになったのです」
「では、私は死んでいるのか?」
「はい。あなたが死んでから、半年が経過しています」
「半年も? それでは……私は……私は……」
爺さんは、頭を抱えて震えだした。
危ない兆候だろうか?
「私は……私は……」
え? 突然爺さんは満面の笑みを浮かべた。
「もう借金を返さなくていいのか!」
え? そっち?
「まったく、半年も前に死んでいた事にも気がつかないで、借金取りに怯えていたとは……教えてくれてありがとう。お嬢ちゃん」
「あの……僕、男なのですけど……」
「ありがと……」
そのまま爺さんは成仏して姿を消した。
まあ、いいか。仕事が楽に片づいたのだから。
それだというのに、魔入さんは不満そう。
何が気に入らないのだろう?
「簡単過ぎるのよ」
「いいじゃないですか。仕事が楽に終わったのだから……」
「君は、それでいいかもしれないけど、私はそれじゃあ困るの。私はこれから、今回撮った映像を視聴者に受けるように脚色しなきゃならないのよ」
「はあ」
そんな事、僕の知ったこっちゃない。
「脚色なんて、いつもやっているのでしょ」
「そりゃあそうだけど……」
「何が不満なのですか?」
「今回の霊は、なんの不満も言わないであっさりと成仏しちゃったわ」
「良いことじゃないですか」
「良くないわよ。不満を言ってくれないと、何が不満で成仏できなかったのか、でっち上げなきゃならないじゃないの。まあ、でっちあげるけど」
「僕としては、それがスゴくイヤなのですけど」
「何がイヤなの?」
「今回のお爺さん、いい人でしたよ。それを魔入さんは、何か怨念でもあるのかのように描写するのでしょ」
「まあ、そうなるわね。そうだ! あのお爺さん、借金を返さなくて済むと言っていたわね。過酷な取り立てをした闇金への恨みで、成仏できなかったという事にしましょう」
「やめましょうよ! お金を貸していたのが闇金とは限らないでしょ! 真っ当な会社かもしれないし」
「貸金業やっている人間に、真っ当な人間なんている訳ないでしょ」
偏見だよ。
「金貸しなんて、金が返せないと、胸の肉を寄越せとか言うような奴らよ」
それシェークスピアの創作だから。あ! でも、臓器を売れとかいう奴は実際にいるか。
「もういいです。好きにして下さい。でも、お爺さんにも遺族がいるかもしれないし、あんまりヒドい番組作ったら訴えられますよ」
「それは大丈夫。幽霊が誰なのかは、特定されないようにやるから」
「そうですか」
「しかし、残念だわ。できれば、君が退魔銃を撃つところも撮影したかったのに」
「退魔弾は高いんですよ」
「必要経費として一万円出すわ」
樒には、外で待機してもらっていてよかった。あいつの前で金の話とかされたら面倒だし……
「それにしても、君の退魔銃は色気が足りないわね」
「はあ? 銃に色気もへったくりも……」
「いやいや。君はベストの内側に隠したショルダーホルスターから退魔銃を抜いているわね」
「それが何か?」
「巨乳お姉さんがそれをやるなら、色気があるけど貧乳の君では……」
「貧乳もへったくりも僕は男です」
「だからね」
突然、魔入さんは僕のスカートを捲り上げる。
「ひゃううう! な……何するんですか!」
僕は慌ててスカートを抑えた。
「足に着けるホルスターってあるじゃない。だから、それに退魔銃を付けて、銃を抜くときにチラリと太ももを見せれば色気が出るわ」
「この場合、色気なんて必要ないでしょ!」
「視聴率を上げるのには必要なのよ」
そんなの僕の知ったこっちゃない。
「まあ今回は仕方ないけど、次は退魔銃が必要になるような物件に当たると良いわね」
「まだやるんですか? そのうち痛い目に遭いますよ」
いや、一度痛い目に遭え! ただし、僕と関係のないところで……
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~
トベ・イツキ
キャラ文芸
三国志×学園群像劇!
平凡な少年・リュービは高校に入学する。
彼が入学したのは、一万人もの生徒が通うマンモス校・後漢学園。そして、その生徒会長は絶大な権力を持つという。
しかし、平凡な高校生・リュービには生徒会なんて無縁な話。そう思っていたはずが、ひょんなことから黒髪ロングの清楚系な美女とお団子ヘアーのお転婆な美少女の二人に助けられ、さらには二人が自分の妹になったことから運命は大きく動き出す。
妹になった二人の美少女の後押しを受け、リュービは謀略渦巻く生徒会の選挙戦に巻き込まれていくのであった。
学園を舞台に繰り広げられる新三国志物語ここに開幕!
このお話は、三国志を知らない人も楽しめる。三国志を知ってる人はより楽しめる。そんな作品を目指して書いてます。
今後の予定
第一章 黄巾の乱編
第二章 反トータク連合編
第三章 群雄割拠編
第四章 カント決戦編
第五章 赤壁大戦編
第六章 西校舎攻略編←今ココ
第七章 リュービ会長編
第八章 最終章
作者のtwitterアカウント↓
https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09
※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
毎日記念日小説
百々 五十六
キャラ文芸
うちのクラスには『雑談部屋』がある。
窓側後方6つの机くらいのスペースにある。
クラスメイトならだれでも入っていい部屋、ただ一つだけルールがある。
それは、中にいる人で必ず雑談をしなければならない。
話題は天の声から伝えられる。
外から見られることはない。
そしてなぜか、毎回自分が入るタイミングで他の誰かも入ってきて話が始まる。だから誰と話すかを選ぶことはできない。
それがはまってクラスでは暇なときに雑談部屋に入ることが流行っている。
そこでは、日々様々な雑談が繰り広げられている。
その内容を面白おかしく伝える小説である。
基本立ち話ならぬすわり話で動きはないが、面白い会話の応酬となっている。
何気ない日常の今日が、実は何かにとっては特別な日。
記念日を小説という形でお祝いする。記念日だから再注目しよう!をコンセプトに小説を書いています。
毎日が記念日!!
毎日何かしらの記念日がある。それを題材に毎日短編を書いていきます。
題材に沿っているとは限りません。
ただ、祝いの気持ちはあります。
記念日って面白いんですよ。
貴方も、もっと記念日に詳しくなりません?
一人でも多くの人に記念日に興味を持ってもらうための小説です。
※この作品はフィクションです。作品内に登場する人物や団体は実際の人物や団体とは一切関係はございません。作品内で語られている事実は、現実と異なる可能性がございます…
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる