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事故物件

おかしな流れになってきたぞ

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 仏様を見せ物にするなんて良くないと思っていたのに、まさか仏様の方から出演したいとは……

 姪御さんに説教してもらう事を期待してお爺さんを呼び出したのに、なんかおかしな流れになってきたぞ。

「良いの? お爺ちゃん」

 千尋さんも、困惑している様子だ。

「実はわしも心残りな事があってな。一度で良いから、テレビ番組というやつに出て見たかったのじゃ。『のど自慢』には、何度も挑戦したがダメじゃった」

 この人……目立ちたがり屋だったのか

「心霊番組なら、死んでからでも出られるじゃろう。わしを出してくれるか?」
「私はかまわないけど……ていうか出演してもらえると、助かるのだけど……叔父さんが怒るわよ。『仏様を金儲けの道具にするな』って」
「ならば、わしが説得してやろう。電話を貸しなさい」

 千尋さんはスマホを差し出した。

 しかし、スマホはお爺さんの手をすり抜けてしまう。

「しまった! 今のわしに電話はかけられん」

 幽霊だから当然だね。

「お爺さん。ちょっといいですか?」

 樒に声をかけられ、お爺さんは警戒気味に振り向いた。

「なんじゃ? ねえちゃん」

 樒はスマホを差し出す。

「以前は、大変失礼な事をいたしました。これは、ほんのお詫びです。使ってみて下さい」
「携帯電話? いや、わしは幽霊じゃぞ。さっきも見たと思うが、現世の物にれることなど……ありゃ? さわれるぞ」

 樒が差し出したスマホを、爺さんは受け取ることができた。

 あのスマホって!?

「おお! これはよい。しかし、なぜ幽霊のわしにさわれるのじゃ?」

 スマホが爺さんの手からすり抜ける事はなかった。

「これは魔神タンハーからもらった、幽霊でも使えるスマホです」

 いや、もらったんじゃなくて、没収したんだろ。

 つーか、まだ持っていたのか。

 スマホを受け取った爺さんは、さっそく息子さんに電話をかけた。

「ああ登志夫としお。わしじゃ。先ほど降霊術で呼び出されて現世に来ておる。突然じゃが、わしはチイちゃんの番組に出演するぞ。なに? ばち当たりじゃと? 馬鹿者! 仏様本人が出たいと言っておるのじゃ。つまらん事を言っていると、おまえにばち当てるぞ」

 爺さんはスマホを樒に返すと、千尋さんの方を向き直った。

「チイちゃん。話はついたぞ。番組に出ても良いと言っておる」
「本当?」
「それで、わしは何をすればよいのじゃ? やはり、両手を前に突き出して『うらめしやあ』と言えばいいのか?」
「ううん……それは……ちょっと古いかも……」

 数時間後、収録を終えて爺さんは霊界へ帰っていった。
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