霊能者のお仕事

津嶋朋靖(つしまともやす)

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事故物件

意地悪かな?

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「それでチイちゃん。わしを呼び出して何用じゃ?」

 お爺さんの霊を前にして、千尋さんは見事に狼狽うろたえていた。

「ええっとね……その……お……お爺ちゃんに、お礼を言いたくて……」
「お礼? はて、わしは何かしたかのう?」
「ほら……お爺ちゃんの遺産を、叔父さんから分けてもらったじゃない。叔父さんにお礼を言ったら、礼ならお爺ちゃんに言うようにと言われたのよ」
「なるほど。それで降霊術を使って、わしを呼び出したのか。うむ。よい子じゃな。チイちゃんは」
「あは……あはは……」
「千尋さん。お爺さんに、頼み事があったんじゃなかったの?」

 僕がそう言った途端、千尋さんは怒りの形相でにらみつけてきた。

 コワ!

「優樹。あんた時々、意地悪いじわるになるわね」

 樒がボソっと耳元で囁く。

「そうかな? 意地悪かな?」
「意地悪よ。いつもは可愛い顔しているのに、今は悪魔みたいな表情浮かべているわよ」

 え! マジ?

 鏡を見た。

 うわ! ちょっとやばいかも……

「六道魔入さんは心霊番組をやっているけど、叔父さんからは家族の霊をさらし者にするのだけは止めろと釘を刺されているらしいのよ」

 そんな事情もあったのか。

「樒は、なんでそんな事を知っているの?」
「週刊誌のインタビュー記事にあったのよ」 

 一方、千尋さんは……

「ねえ。お爺ちゃん。ここって、素敵なお部屋でしょ。私の新居なのよ」

 話をらすのに必死だった。

「ほう。いい部屋じゃ。チイちゃんにぴったりじゃ。そうか! わしの遺産を、この部屋を買うのに使ったのじゃな」
「そ……そうなのよ。それでお爺ちゃんに、お部屋を見てもらいたくて……」
「そうじゃったのか」

 千尋さんは、小さな仏壇の扉を開いた。

「ここにね。お爺ちゃんの遺影を飾っているのよ」
「おお! これは懐かしい。みんなで箱根へ行った時に撮った写真じゃないか」

 なんとか誤魔化ごまかせているみたいだ。

「ところで、チイちゃん。今、仕事は何をしているのじゃ? まだ、テレビの仕事を続けているのか?」
「え……ええ、まだ続けているわ」
「確か、心霊番組だったな?」
「そうよ。『六道魔入の怪奇レポート』だけど」
「それそれ。わしも生きているときは、見ていたぞ」
「そうなの。嬉しい」
「まあ、登志夫としおはあの番組を嫌っていたみたいだが」
「どうして、叔父さんは私の番組が嫌いなの?」
「仏様を見せ物にするなんて、罰当たりな番組だとか言っておった。あいつは、あれで信心深いやつじゃからな」

 そうだよね。僕も叔父さんとは同意見。仏様を見世物にするなんてよくないよ。

「どうじゃ。良い機会じゃから、わしもその番組に出演させてくれんか?」
「え?」

 え? ちょっと待って。説教してくれるのじゃなかったの?
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