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冥婚
冥婚
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荻原君の家は、駅から歩いて十分ほどのところにあった。
ごく普通の庭付き一戸建て住宅。
僕と樒が家の前にバイクを止めると、先に帰っていた荻原君が玄関から出てくる。
「荻原君。チョコレートが落ちていたのはどの辺りです?」
「ここです」
荻原君は玄関の前を指さす。
その地点から、事故のあった交差点に目を向けると十メートルほど離れていた。
あそこから飛んできたのか。
樒が周囲を見回していた。
「家には、彼女いないわね」
僕も見回したが、荻原家の敷地内に地縛霊は見あたらない。
では事故現場の方だな。
「荻原君。生前の飯島露さんの写真はありますか」
「はい」
荻原君はスマホを取り出し、運動会のときに撮った写真を僕のスマホに送ってもらった。
「僕たちは事故現場を見に行ってきます。荻原君は家の中にいて下さい」
そう言って僕と樒は事故現場に向かった。
「しかし、私もいろんな霊を見てきたけど、こんなケース初めてだわ。たしかこういうの冥婚と言ったわね」
「冥婚?」
「知らないの? 生者と死者に分かれた者同士の結婚よ」
「そんな事ってあるの?」
「神話や伝説ではよくあるし、それに台湾では現実に幽霊と結婚させられた人がよくいるそうよ」
「させられたって事は、本人の意思とは関係なしって事?」
「そう。台湾では道に落ちている赤い封筒を、男がうっかり拾ったりすると、隠れて見ていた遺族に捕まって幽霊の娘と結婚させられてしまう事が実際にあるんだって」
「怖いな。お! 本人がいた」
交差点付近の歩道に、飯島露の幽霊がいた。
スマホの写真と比べたが間違えない。
飯島露が立っている側には、花束が添えられていた。と言うことは、ここが事故現場か。
近くの路上には、黒い大きなワゴン車が駐車していた。その車を、飯島露は睨みつけている。
この車が、どうかしたのだろうか?
近づこうとした時、不意に樒に肩を掴まれた。
「優樹。言わなくても分かると思うけど、この霊ちょっと危ないよ」
樒の言うとおり、分かっていた。
飯島露からは、危険な波動が伝わってきていたのだ。悪霊化しかかっている。
「樒。今回は場合によっては、強制除霊もやむをえないと思う。でも、一度話をしてからにしよう」
「いいの?」
「僕が話しかけるから、危ないと思ったらいつでも九字を切って」
「分かったわ。優樹、気をつけてね」
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僕と樒が家の前にバイクを止めると、先に帰っていた荻原君が玄関から出てくる。
「荻原君。チョコレートが落ちていたのはどの辺りです?」
「ここです」
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その地点から、事故のあった交差点に目を向けると十メートルほど離れていた。
あそこから飛んできたのか。
樒が周囲を見回していた。
「家には、彼女いないわね」
僕も見回したが、荻原家の敷地内に地縛霊は見あたらない。
では事故現場の方だな。
「荻原君。生前の飯島露さんの写真はありますか」
「はい」
荻原君はスマホを取り出し、運動会のときに撮った写真を僕のスマホに送ってもらった。
「僕たちは事故現場を見に行ってきます。荻原君は家の中にいて下さい」
そう言って僕と樒は事故現場に向かった。
「しかし、私もいろんな霊を見てきたけど、こんなケース初めてだわ。たしかこういうの冥婚と言ったわね」
「冥婚?」
「知らないの? 生者と死者に分かれた者同士の結婚よ」
「そんな事ってあるの?」
「神話や伝説ではよくあるし、それに台湾では現実に幽霊と結婚させられた人がよくいるそうよ」
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「そう。台湾では道に落ちている赤い封筒を、男がうっかり拾ったりすると、隠れて見ていた遺族に捕まって幽霊の娘と結婚させられてしまう事が実際にあるんだって」
「怖いな。お! 本人がいた」
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スマホの写真と比べたが間違えない。
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近くの路上には、黒い大きなワゴン車が駐車していた。その車を、飯島露は睨みつけている。
この車が、どうかしたのだろうか?
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樒の言うとおり、分かっていた。
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「樒。今回は場合によっては、強制除霊もやむをえないと思う。でも、一度話をしてからにしよう」
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「分かったわ。優樹、気をつけてね」
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