霊能者のお仕事

津嶋朋靖(つしまともやす)

文字の大きさ
上 下
102 / 269
呪殺師は可愛い男の子が好き

ネズ子

しおりを挟む
 起きあがろうとした時、不意に闇子が僕の両腕を押さえつけてきた。

「なにを? うわわ!」

 闇子は、僕の身体の上にまたがるように乗っかってきた。

 前に、樒にもこれをやられたけど、この女は樒の倍は重い! 苦しい!

「ねず子。私が押さえているから、この坊やの手を縛っておくれ」

 ねず子? 誰だ?

「はいはい。少々お待ちを」

 この声! ねずみ式神!

「いや、一瞬びっくりしましたよ。闇子さんが、優樹君を逆レイプするのかと思いました」
「そんなことしないよ。さっさと縛りな」
「はいはーい」

 小さなネズミに、そんなことできるのか?

 と思っていたら、ネズミが急に大きくなり、ビジネススーツをまとった二十歳ぐらいの女性の姿になった。

「ちゅー!」

 しかし、一見OLのように見えるけど、よく見ると頭にはネズミ耳があり、スカートからはネズミ尻尾が出ている。

「さあ、優樹君。ちょっと我慢していて欲しいでちゅー。痛くないように縛って上げるでちゅー」
「ちょっと待て! あんたネズミの時は普通に喋っていたのに、人間の姿になった途端、なんで語尾に『ちゅー』をつけるんだ!?」
「男の子は、細かいことを気にしちゃだめでちゅー」

 そう言って、ねず子は僕の手を縛っていく。

「いや、女の子の私も、それずっと疑問に思っていたのだけど」
「女の子だなんて、厚かましいでちゅー! 闇子さんは、どう見てもおばさんでちゅー!」
「せめてお姉さんと言え! この化けネズミ!」  
「ちゅー!」

 闇子に叩かれそうになり、ねず子はひらりと避ける。

 その時には、僕の手は縛り上げられていた。

 しかし、闇子は僕の上からどこうとしない。

「あのう、そろそろ上からどいてもらえませんか。重いのですけど……」

 だが、闇子はどくどころか僕におおかぶさってきた。

 顔が近づいてくる。

「坊や。今、重いって言ったね」

 え? 

「あ~あ。地雷踏んだな。知らねえぞ」」

 え? ヒルコが地雷って言ったけど、どういう意味?

 やば! 『重い』は、闇子にとって地雷だったんだ。

「重いと言っただろ」
「重くないです! 軽いです!」
「百三十キロの私が、軽いわけないだろう!」

 ひいい! そんなにあったんだ。

「さば読むなよ。もう後、十キロあるだろ!」

 後からヒルコが茶々を入れる。

五月蠅うるさい! 黙ってろ!」

 てか、本当は百四十! ヤダ! つぶれる!

「ヒルコさん、奥さんを宥めてよ」
「わりい。俺と闇子が夫婦というのはフィクションであって、実在の人物団体等は一切関係ないんだ」

 そんなあ……

「坊や。可愛い顔しているね。さぞかし周りから、ちやほやされているんだろ」
「ちやほやなんか、されてません!」
「私なんか、生まれてから『可愛い』なんて言われたことないよ」
「そんなこと、僕に言われても」
「私のことも『デブで不細工』と思っているのだろう」
「思っていません!」

 キモいとは思っていたけど……

「いいや思っていた。あんたにも、私の気持ちを分からせてやるよ」
「な……なにを……」
「その可愛い顔を、私の怪力でグチャグチャに整形してやるよ」

 ひいいいい!

「おい。闇子」
「止めても無駄だよ。ヒルコ」
「そうじゃない。着いたぞ」
「え?」

 ヒルコの背後の壁が、いつの間にかめくれ上がっていた。その向こうに薄暗い空間。

 そこに現れたのは、一人の人物のシルエット。

 その人物は横に虎を従えていた。

 いや、これは昨夜、ミクちゃんが戦った虎式神。

 ということは、この人がヒョー?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...