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呪殺師は可愛い男の子が好き
一時休戦2
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「それじゃあ、あたしはこれで」
ネズミ式神は、壁を抜けて出て行った。
僕は芙蓉さんの方を振り向く。
「今の話、信用できると思いますか?」
芙蓉さんは、首を縦に振る。
「信用はできると思うわ。ただ」
ただ?
「ヒョーは、何かを企んでいるわね。今回の襲撃も、失敗なんかではなく、奴にとっては計画通りだったのかもしれない。計画通り順調に進んだからこそ、計画通りに休戦を申し出たのかもしれない」
「計画通り? 僕たちは、ヒョーの掌で踊らされているとでも?」
芙蓉さんが無言で頷くと、樒が噛みついてきた。
「何言っているんです。私たちは、奴の式神の大半をやっつけたのよ」
「樒さん。ヒョーは、十ニの式神を操りますが、そのすべてが戦闘用というわけではありません」
「え?」
「十二の式神は、それぞれ役割を持っています。その中で戦闘に特化しているのは、竜式神と虎式神。それ以外の式神も戦えないわけではないのですが、それほど強くはありません」
だから、ミクちゃんのアクロも虎式神相手に苦戦していたのか。
「つまり、私と優樹が倒した式神は、雑魚という事?」
「そうですね。ヒョーが本来、戦闘には使わないような式神を使って来たのは、陽動の可能性があります」
「陽動?」
「あるいは、こちらの手の内を見るつもりだった」
「じゃあ、私たちはまんまと、手の内を見せてしまったって事?」
「それは分かりません。とにかく、ヒョーが次に攻撃を仕掛けてくるまでは何とも」
「次の攻撃? 明朝六時とか言っているけど、今すぐ攻撃をかけてこないという保証はあるのですか?」
「ヒョーだって人間である以上、式神を使うにはブースターのような薬が必要となります。ブースターを飲んでから、強力な式神を使える時間はせいぜいニ~三十分」
芙蓉さんは、懐中時計を出した。
「まもなく十一時半。ヒョーが式神を使える時間はもうありません」
「続けてブースターを使えば……」
「ブースターの連続使用は、健康リスクがあります。ミクちゃんのように若い子ならいいですが、私の様なオバさんにはちょっとキツいわね」
オバさんって……芙蓉さん、まだ二十代でしょ。
「ヒョーの年齢は不明ですが、私より若いという事はないでしょう。そうなると、健康リスクは避けると思われます。もちろん、せっぱ詰まった状況ならリスクを無視して薬を使うかもしれませんが、それはないでしょう」
なぜ?
「ヒョーは今回、予告状を出してきました。そんな酔狂な事をするぐらいなのだから、かなり余裕があるのでしょう。健康リスクを犯してまで、攻撃してくるとは思えません」
「そう思わせて、攻撃してくる可能性は?」
「ないとは言えませんが、ヒョーがそんな事をするメリットはありません」
「しかし、ヒョーはなぜ六時なんて時間を指定したのでしょう? もっと早くくればいいのに」
「それは、だいたい分かります。ブースターの使用間隔は最低でも一時間は開けておいた方がいいのですが、安全を考えるなら、六時間開けるのが理想的。明朝六時というのは、最適の時間と言えます。それよりも、私たちが寝ずの番などをしたら、いざという時に戦えなくなります。私たちは、権堂さんをいつでも守れる状態で寝ましょう」
ネズミ式神は、壁を抜けて出て行った。
僕は芙蓉さんの方を振り向く。
「今の話、信用できると思いますか?」
芙蓉さんは、首を縦に振る。
「信用はできると思うわ。ただ」
ただ?
「ヒョーは、何かを企んでいるわね。今回の襲撃も、失敗なんかではなく、奴にとっては計画通りだったのかもしれない。計画通り順調に進んだからこそ、計画通りに休戦を申し出たのかもしれない」
「計画通り? 僕たちは、ヒョーの掌で踊らされているとでも?」
芙蓉さんが無言で頷くと、樒が噛みついてきた。
「何言っているんです。私たちは、奴の式神の大半をやっつけたのよ」
「樒さん。ヒョーは、十ニの式神を操りますが、そのすべてが戦闘用というわけではありません」
「え?」
「十二の式神は、それぞれ役割を持っています。その中で戦闘に特化しているのは、竜式神と虎式神。それ以外の式神も戦えないわけではないのですが、それほど強くはありません」
だから、ミクちゃんのアクロも虎式神相手に苦戦していたのか。
「つまり、私と優樹が倒した式神は、雑魚という事?」
「そうですね。ヒョーが本来、戦闘には使わないような式神を使って来たのは、陽動の可能性があります」
「陽動?」
「あるいは、こちらの手の内を見るつもりだった」
「じゃあ、私たちはまんまと、手の内を見せてしまったって事?」
「それは分かりません。とにかく、ヒョーが次に攻撃を仕掛けてくるまでは何とも」
「次の攻撃? 明朝六時とか言っているけど、今すぐ攻撃をかけてこないという保証はあるのですか?」
「ヒョーだって人間である以上、式神を使うにはブースターのような薬が必要となります。ブースターを飲んでから、強力な式神を使える時間はせいぜいニ~三十分」
芙蓉さんは、懐中時計を出した。
「まもなく十一時半。ヒョーが式神を使える時間はもうありません」
「続けてブースターを使えば……」
「ブースターの連続使用は、健康リスクがあります。ミクちゃんのように若い子ならいいですが、私の様なオバさんにはちょっとキツいわね」
オバさんって……芙蓉さん、まだ二十代でしょ。
「ヒョーの年齢は不明ですが、私より若いという事はないでしょう。そうなると、健康リスクは避けると思われます。もちろん、せっぱ詰まった状況ならリスクを無視して薬を使うかもしれませんが、それはないでしょう」
なぜ?
「ヒョーは今回、予告状を出してきました。そんな酔狂な事をするぐらいなのだから、かなり余裕があるのでしょう。健康リスクを犯してまで、攻撃してくるとは思えません」
「そう思わせて、攻撃してくる可能性は?」
「ないとは言えませんが、ヒョーがそんな事をするメリットはありません」
「しかし、ヒョーはなぜ六時なんて時間を指定したのでしょう? もっと早くくればいいのに」
「それは、だいたい分かります。ブースターの使用間隔は最低でも一時間は開けておいた方がいいのですが、安全を考えるなら、六時間開けるのが理想的。明朝六時というのは、最適の時間と言えます。それよりも、私たちが寝ずの番などをしたら、いざという時に戦えなくなります。私たちは、権堂さんをいつでも守れる状態で寝ましょう」
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