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呪殺師は可愛い男の子が好き

エアガン

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 家に帰ってから、エアガンを眺めてみた。

 本当に、こんな物が式神に効くのだろうか?

 いや、効果があるのはBB弾の方だったな。

 だが、もう一つ問題がある。

 このBB弾に効果があったとしても、当たらなければどうにもならん。

 とりあえず、練習してみるか。

 パソコンで作った標的を、プリントアウトして壁に貼り付けてみた。

 十分後……

「優樹。あんた、のび太君に弟子入りした方がよくない?」

 突然、背後から聞こえた声に振り向くと、樒があきれ顔で立っていた。
 
「樒! いつのまに僕の部屋に……」
「いや、さっきから見ていたのだけど、なんか忙しそうだったので話しかけづらくて……」
「あたしもいまーす!」
「ミクちゃんまで」
「優樹が恐怖にうち震えているかと思って、二人で様子を見に来たのだけど」

 樒は、標的の貼ってある壁を指さした。

「優樹に、エアガンの趣味があるとは知らなかったわ」
「いや、これはだな……」
「それにしても、下手くそね」

 標的には穴は一つもなく、その下に数十発のBB弾が散らばっているだけ……

「しょうがないだろ。エアガンなんて初めて撃ったのだから」
「ちょっと貸してみ」

 樒は僕からエアガンを受け取ると、標的に向かって撃った。

 ど真ん中とは行かないが、かなり中心に近いところに穴ができる。

「私も初めてだけど、的には当たったわよ。ミクちゃんもやってみる?」
「はーい」

 ミクちゃんが撃つと、ど真ん中に当たった。

 ウソ!? 僕が下手すぎ……

「しかし、なんでエアガンなんか始めたの?」
「これは、先生からもらったんだよ」

 二人に、指導室での経緯を話した。

「ええ!? こんなBB弾が、式神に効くの!」
「うっそう!?」

 二人は一様に驚く。

「氷室先生か。あの人も霊が見えるみたいだけど、式神に効くエアガンなんて、ちょっとありえないんじゃないかな? ミクちゃん、どう思う?」

 樒に聞かれてミクちゃんは考え込む。

「ううん……どうだろう? 式神に効く矢とかは、昔からあったらしいから……」
「じゃあ、実験してみよう」

 実験?

「ミクちゃん。ウサギ式神出して」
「はあい」

 ミクちゃんは懐から人型を取り出すと、そのまま床に叩きつけた。

「ご注文はウサギですか?」

 いや、ここは『いでよ! 式神』では?

 人型がムクムクと膨れ上がり、ウサギの姿になる。

「じゃあ、優樹。このウサギを撃ってみて」
「ちょっと待て! ウサギを撃つのか? 可哀想だろ」
「優樹。そういう事言っていると、猟友会を敵に回すよ」
「いやいや! 食べるためとか、害獣駆除なら分かるが、試し撃ちでウサギを撃つのは……それにこのウサギは、ミクちゃんのペットだし……」
「優樹君。この子は別にあたしのペットじゃないよ。式神だよ」
「いや……それは分かるけど……式神に対する愛情とかはないのかな?」
「あるよ。でも、大丈夫。式神は、痛みを感じないから……」

 そうなのか?

 だが、それを聞いていたウサギ式神が大いに慌てた。

「ちょっちょっちょっ! ミクちゃん、勝手に決めないで。僕だって、痛みは感じるから」
「え? そうなの? だってあんた、石とかぶつけられても平気じゃない」
「式神と相互作用のない物体をぶつけられてもすり抜けるだけだけど、もし相互作用のある物体をぶつけられたら、僕だって痛いよ」
「相互作用って何?」
「ミクちゃん。物理学の勉強、ちゃんとしようね」

 非科学的な存在が、科学の勉強をしろとは……

 ウサギは僕の傍に寄って来た。

「社優樹様。ちょっと、そのBB弾を見せて下さい」
「ああ」

 ビニール袋から、BB弾を一つ摘んで見せた。

「これは!? この弾は式神と相互作用があります。ありまくりです! こんな物をぶつけられたら、式神だって滅茶苦茶痛いですよ」
「そうなのか?」
「僕は頭脳労働系の式神なのですよ。こんな物騒な物の試し撃ちの標的なんかにしないで下さい。標的にするなら、暴力バカのアクロを呼び出して下さい」
「アクロって?」
「ミクちゃんが使役する三つの式神の一つです。とにかく怪力の式神ですが、頭は空っぽな奴ですよ」
「いや、もう試し撃ちはいいよ。式神に効果があるという事は分かったのだから」

 僕はBB弾を袋に戻した。

「優樹。明日は私も行くから安心しなよ」
「あたしも行くよ。優樹君は、あたしが守ってあげるから安心して」
「ありがとう。二人とも……でも、無理はしないでくれ。相手は呪殺師ヒョーだから」
「大丈夫よ、優樹。明日は芙蓉さんも来るから。芙蓉さんの式神、私も見たことあるけど凄く強いわよ」
「そうなのか?」
「強いよ。あれなら、呪殺師ヒョーの式神より強いかも」
「それは心強い」

 しかし、自分の身は自分で守る努力はしないといけないな。

 その日、僕は夜まで射撃練習を続けた。
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