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超常現象研究会
誤解1
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携帯に着信があったのは、バス停でバスを待っている間のこと。
電話をかけてきたのは芙蓉さん。
『もしもし。優樹君。今日も囮作戦は実行するのね?』
「はい。これからバスで八名駅へ向かうところです」
『本来はこんな事、霊能者の仕事じゃないけど、地縛霊に気持ちよく成仏してもらうには仕方ないわね。とにかく早く終わらせたいので、応援を一人送るわ』
「誰ですか?」
『未来ちゃんよ』
「ミクちゃん!? ちょっと待って下さい! まさかミクちゃんに囮をさせる気ですか?」
冗談じゃない。あんな小さな子が痴漢被害に遭ったりしたら、トラウマになるぞ。
『違うわよ。ミクちゃんには離れた場所に居ながらにして、式神を送ってもらうから』
式神! あのウサギか。
『昨日は電車内に猫を放ったそうね。満員電車の中で黒猫が走り回る様子を、何人かの人に見られていたそうよ』
え? そうだったの……
『動画サイトにも上がっているわ。だから、今回から猫は禁止。式神を使って』
まあ確かに普通の人には見えない式神の方が適任だな。
「分かりました」
通話を切った。
「お久しぶりです。社優樹様」
「わ! びっくりした」
スマホをどけたら、そこにウサギがいたのに驚いて声を上げてしまった。もちろんただのウサギではない。
ただのウサギが空中に浮遊していたり、人の言葉を喋ったりするはずがない。
このウサギはミクちゃんの式神だ。
式神は僕が手にしているスマホの上に、ちょこんと乗っかった。
重さをまったく感じない。というより、式神には質量なんてないのだろうな。
ウサギはスマホの上から僕を見上げた。
「社優樹様。びっくりしたのは僕の方ですよ。どうしたのです? そのお姿は」
女装の事か……こいつが見ているという事は、ミクちゃんにも見られているのだろうな……
「これはだな……痴漢を捕まえるための囮で……」
「なるほど……しかし、わが主が僕の目からそのお姿を見て、笑い転げておりますぞ」
くっそー!
「それはそうと我が主が電話で話したいそうなので、今から主に電話をかけてもらえませんか」
電話? それなら、芙蓉さんの後に電話を代わって貰えばいいのに……
「ミクちゃんは、芙蓉さんのところに居るんじゃないのか?」
「いいえ。主は神森樒さまの部屋におります」
樒の部屋? 見舞いかな?
ウサギの言う電話番号に電話をかけた。
呼び出し音の後、ミクちゃんの声が……
『もしもし、優樹君。ひどいよ! 樒ちゃんを泣かせるなんて』
は? 樒が泣いている?
「ちょっと待って。樒は泣いているの?」
あの樒が泣くなんて、信じられん。
『泣いているよ。優樹君に『ウザい』って言われたって』
はあ? そんな事言ったっけ? いや、思っていたって、そんな事面と向かって言わんぞ。そもそもあの怪力女を怒らせるような事を言っては、僕の身が危ないじゃないか。
ていうか、樒って『ウザい』と言われて泣くような女か?
『え? 言っていないの?』
「言うわけないだろう。そんな事」
『じゃあ、樒ちゃんの事をウザいとは思っていないの?』
「思っていない」
『じゃあ愛しているの?』
「それはない」
『ん? 樒ちゃんの勘違いかな? じゃあもう一度樒ちゃんに聞いてみるね』
電話が切れた。
いったい何だったんだ?
バスが来たのはちょうどその時だった。
電話をかけてきたのは芙蓉さん。
『もしもし。優樹君。今日も囮作戦は実行するのね?』
「はい。これからバスで八名駅へ向かうところです」
『本来はこんな事、霊能者の仕事じゃないけど、地縛霊に気持ちよく成仏してもらうには仕方ないわね。とにかく早く終わらせたいので、応援を一人送るわ』
「誰ですか?」
『未来ちゃんよ』
「ミクちゃん!? ちょっと待って下さい! まさかミクちゃんに囮をさせる気ですか?」
冗談じゃない。あんな小さな子が痴漢被害に遭ったりしたら、トラウマになるぞ。
『違うわよ。ミクちゃんには離れた場所に居ながらにして、式神を送ってもらうから』
式神! あのウサギか。
『昨日は電車内に猫を放ったそうね。満員電車の中で黒猫が走り回る様子を、何人かの人に見られていたそうよ』
え? そうだったの……
『動画サイトにも上がっているわ。だから、今回から猫は禁止。式神を使って』
まあ確かに普通の人には見えない式神の方が適任だな。
「分かりました」
通話を切った。
「お久しぶりです。社優樹様」
「わ! びっくりした」
スマホをどけたら、そこにウサギがいたのに驚いて声を上げてしまった。もちろんただのウサギではない。
ただのウサギが空中に浮遊していたり、人の言葉を喋ったりするはずがない。
このウサギはミクちゃんの式神だ。
式神は僕が手にしているスマホの上に、ちょこんと乗っかった。
重さをまったく感じない。というより、式神には質量なんてないのだろうな。
ウサギはスマホの上から僕を見上げた。
「社優樹様。びっくりしたのは僕の方ですよ。どうしたのです? そのお姿は」
女装の事か……こいつが見ているという事は、ミクちゃんにも見られているのだろうな……
「これはだな……痴漢を捕まえるための囮で……」
「なるほど……しかし、わが主が僕の目からそのお姿を見て、笑い転げておりますぞ」
くっそー!
「それはそうと我が主が電話で話したいそうなので、今から主に電話をかけてもらえませんか」
電話? それなら、芙蓉さんの後に電話を代わって貰えばいいのに……
「ミクちゃんは、芙蓉さんのところに居るんじゃないのか?」
「いいえ。主は神森樒さまの部屋におります」
樒の部屋? 見舞いかな?
ウサギの言う電話番号に電話をかけた。
呼び出し音の後、ミクちゃんの声が……
『もしもし、優樹君。ひどいよ! 樒ちゃんを泣かせるなんて』
は? 樒が泣いている?
「ちょっと待って。樒は泣いているの?」
あの樒が泣くなんて、信じられん。
『泣いているよ。優樹君に『ウザい』って言われたって』
はあ? そんな事言ったっけ? いや、思っていたって、そんな事面と向かって言わんぞ。そもそもあの怪力女を怒らせるような事を言っては、僕の身が危ないじゃないか。
ていうか、樒って『ウザい』と言われて泣くような女か?
『え? 言っていないの?』
「言うわけないだろう。そんな事」
『じゃあ、樒ちゃんの事をウザいとは思っていないの?』
「思っていない」
『じゃあ愛しているの?』
「それはない」
『ん? 樒ちゃんの勘違いかな? じゃあもう一度樒ちゃんに聞いてみるね』
電話が切れた。
いったい何だったんだ?
バスが来たのはちょうどその時だった。
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