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超常現象研究会
顧問の先生
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なぜもへったくれもない。樒がここに来たとしたら、僕と同じ理由しか考えられない。
「樒も何か弱みを握られたのか?」
「え? 弱みって?」
樒はきょとんとしている。違うのか?
「先輩たちに弱みを握られて、ここへ呼び出されたんじゃないのか?」
「違うわよ。優樹こそ、幽霊おじさんの件で来たんじゃないの?」
え? 幽霊おじさん。なんの関係があるんだ?
「私思い出したのよ。春頃、この超常現象研究会の先輩たちに勧誘を受けていたとき、先輩たちに話しかけてきた先生がいたのよ。その先生が昨日のおじさんと似ているような気がして……ひょっとして顧問の先生じゃないかと思って……」
顧問の先生! そうだ! 確かに以前にもこの部室に連れ込まれた事があったが、部室内に顧問の先生がいた。その先生と昨日のおじさん似ている。
あの時は先生が『強引な勧誘は止めなさい』と先輩たちを叱ってくれたおかげで助かったけど……
僕は先輩たちの方を向き直った。
「顧問の先生はどこにいますか?」
僕の質問に答えたのは小山内先輩。
「水上先生の事? ここ数日学校を休んでいるわよ」
「休んでいる理由は?」
「さあ?」
「先生の写真ありますか?」
「あるけど」
華羅先輩がスマホを操作して僕に画面を見せてくれた。
そこには七人の人物が並んだ集合写真があった。
七人の中に、ここにいる三人の先輩が写っているという事は、超常現象研究会の集合写真なのだろう。そしてその中にスーツ姿の大人の男性がいた。
この人が顧問の先生のようだが、その顔はまさに昨日の幽霊おじさん。
「なんですってえ!」
僕と樒から昨日の経緯を聞いた六星先輩は素っ頓狂な声を上げた。
「先生が電車の中で痴漢!? しかも、逃げようとして電車にひかれて死んでいた!?」
「うそ!?」「あの真面目で優しい先生が痴漢なんて」
三人ともひどく取り乱していた。無理もないな。
「あり得ないわよ。先生はこの部室で私と二人切りになる事だってあったのよ。だけど先生は私にはなにも……」
そこまで言い掛けて六星先輩は他の二人の方を向いた。
「小山内さん。華羅さん。あなたたち、先生からなにかエッチなことを……」
「されてませんよ」「先生がそんな事をするはずありません」
「そうよね。とにかく、先生がそんな事をするはずがありません。きっと、冤罪です」
「私もそう思います。昨日会った本人の霊も否定していたし、被害に遭った女子高生も分からないと言っていました。ところで先生の身長分かります?」
華羅先輩がメモ長を取り出して樒の質問に答えた。
「百八十六センチです」
昨日、聞いた身長とぴったり同じ。
「そう私より少し背が高い。一方被害者の女子高生は優樹と同じ身長。そこで昨日はこうして……」
そこまで言って、樒は突然背後から片手で僕を押さえつけた。
なにする気だ? まさか!
「ひぁうううう! やめろお!」
予想通り樒は僕の尻をなで回した。
「このように再現実験をしたのだけど、満員電車の中で先生が女子高生の尻を触るのは不可能という結論に達したのです」
「何が再現実験だ! いい加減にしろ! この痴女!」
「だから、再現実験だと言っているでしょ。優樹も我慢しなさいよ」
できるか!
「とにかく、事情はわかりました」
一通り事情を聞き終わってから、六星先輩が厳かに言った。
「ところで神森さん、社君。あなたたちは今から先生が地縛されている駅へ行くのですか?」
「ええ行きますわ」「行きますよ」
「よろしければ、私も現場へ連れて行ってもらえませんか」
「良いわよね? 優樹」「問題ないと思うけど、一応芙蓉さんには電話を入れておこう」
六星先輩は他に二人に帰るように言った後、僕らの方を向く。
「それでは、準備をしてくるので少し待っていてもらえませんか」
「ええ」「いいですよ」
すると六星先輩は二枚の入部申請書を机の上に置いた。
「では、待っている間に二人はこの書類にサインを……」
「「しません!」」
こんな状況でも勧誘は忘れないのか!
「樒も何か弱みを握られたのか?」
「え? 弱みって?」
樒はきょとんとしている。違うのか?
「先輩たちに弱みを握られて、ここへ呼び出されたんじゃないのか?」
「違うわよ。優樹こそ、幽霊おじさんの件で来たんじゃないの?」
え? 幽霊おじさん。なんの関係があるんだ?
「私思い出したのよ。春頃、この超常現象研究会の先輩たちに勧誘を受けていたとき、先輩たちに話しかけてきた先生がいたのよ。その先生が昨日のおじさんと似ているような気がして……ひょっとして顧問の先生じゃないかと思って……」
顧問の先生! そうだ! 確かに以前にもこの部室に連れ込まれた事があったが、部室内に顧問の先生がいた。その先生と昨日のおじさん似ている。
あの時は先生が『強引な勧誘は止めなさい』と先輩たちを叱ってくれたおかげで助かったけど……
僕は先輩たちの方を向き直った。
「顧問の先生はどこにいますか?」
僕の質問に答えたのは小山内先輩。
「水上先生の事? ここ数日学校を休んでいるわよ」
「休んでいる理由は?」
「さあ?」
「先生の写真ありますか?」
「あるけど」
華羅先輩がスマホを操作して僕に画面を見せてくれた。
そこには七人の人物が並んだ集合写真があった。
七人の中に、ここにいる三人の先輩が写っているという事は、超常現象研究会の集合写真なのだろう。そしてその中にスーツ姿の大人の男性がいた。
この人が顧問の先生のようだが、その顔はまさに昨日の幽霊おじさん。
「なんですってえ!」
僕と樒から昨日の経緯を聞いた六星先輩は素っ頓狂な声を上げた。
「先生が電車の中で痴漢!? しかも、逃げようとして電車にひかれて死んでいた!?」
「うそ!?」「あの真面目で優しい先生が痴漢なんて」
三人ともひどく取り乱していた。無理もないな。
「あり得ないわよ。先生はこの部室で私と二人切りになる事だってあったのよ。だけど先生は私にはなにも……」
そこまで言い掛けて六星先輩は他の二人の方を向いた。
「小山内さん。華羅さん。あなたたち、先生からなにかエッチなことを……」
「されてませんよ」「先生がそんな事をするはずありません」
「そうよね。とにかく、先生がそんな事をするはずがありません。きっと、冤罪です」
「私もそう思います。昨日会った本人の霊も否定していたし、被害に遭った女子高生も分からないと言っていました。ところで先生の身長分かります?」
華羅先輩がメモ長を取り出して樒の質問に答えた。
「百八十六センチです」
昨日、聞いた身長とぴったり同じ。
「そう私より少し背が高い。一方被害者の女子高生は優樹と同じ身長。そこで昨日はこうして……」
そこまで言って、樒は突然背後から片手で僕を押さえつけた。
なにする気だ? まさか!
「ひぁうううう! やめろお!」
予想通り樒は僕の尻をなで回した。
「このように再現実験をしたのだけど、満員電車の中で先生が女子高生の尻を触るのは不可能という結論に達したのです」
「何が再現実験だ! いい加減にしろ! この痴女!」
「だから、再現実験だと言っているでしょ。優樹も我慢しなさいよ」
できるか!
「とにかく、事情はわかりました」
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「ええ行きますわ」「行きますよ」
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「それでは、準備をしてくるので少し待っていてもらえませんか」
「ええ」「いいですよ」
すると六星先輩は二枚の入部申請書を机の上に置いた。
「では、待っている間に二人はこの書類にサインを……」
「「しません!」」
こんな状況でも勧誘は忘れないのか!
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