霊能者のお仕事

津嶋朋靖(つしまともやす)

文字の大きさ
上 下
36 / 269
通りすがりの巫女

気絶している間に……2

しおりを挟む
 状況を理解するのに、僕は数秒を要した。

「うわわわわわわわわ!」

 理解した時、僕は絶叫していた。

「だから、知らない方が幸せだって言ったのに」 
「樒! 知らなきゃいいって問題じゃないぞ。そんな恥ずかしい写真撮られて、ネットにばらまかれるかもしれないじゃないか!」
「大丈夫。槿さんは自分のコレクションにして楽しむだけだから」
「なんだって槿さんはそんな事を?」
「だから言ったでしょ。槿さんは、ショタコンだって」
「それは分かったけど、これだけ買い揃えるのに、いくら掛かったんだ?」
「値札ついているから、計算してみたら」
「そういう問題じゃなくて……」
「全部で十二万三千二百十六円になります」

 突然、計算結果を言ったのはミクさんのウサギ式神。

「この子、計算得意なのよ」

 そう言ってミクさんはウサギ式神を抱き上げた。

「ああ! でも、カンニングには使っていないからね」

 誰もそんな事聞いていないって……

「十二万って……なんでこんなしょうもない事に、そんな大金つぎ込めるんだ!?」
「そういう人なのよ。槿さんって。趣味のためには金に糸目をつけないの。そのために、霊能者達に不正請求をさせて、その上前をはねていたのよ。何せ、小学生の頃から上前をはねられ続けていた私が言うのだから間違えないわ」

 ううう……槿さんを少しでも良い人だなんて思った僕がバカだった。

「ところで、この服どうします?」

 ミクさんがワンピースをつまみ上げていた。

「ううん……十二万も出して買い揃えた物をただ捨てるのももったいないし……優樹。 あんた、それもう一度着てみない?」
「誰が着るか!」

 結局、この服はミクさんが引き取る事になった

 母さんの車が到着したのは、日が登りかけた頃。

 僕の話を聞いた母さんは、お姉さんを供養するために祭壇を用意してくれた。

「それじゃあ、お姉さん。いろいろとお世話になりました」

 祭壇の上に浮いている幽霊お姉さんに、僕は軽く頭を下げた。

「いいって。おかげで、あたしもようやく、成仏できるんだから。次に生まれる時は、君の娘になりたいな」
「どうして?」
「君なら、優しいお父さんになりそうだし」
「そうですね。まあ、まだまだ先の話ですけど」

 母さんに袖を引っ張られて僕は振り向いた。

「優樹。名残惜しいのは分かるけど、供養を急がないと」
「どうして?」
「はやく槿ちゃんを追いかけないと、ドバイへ逃げられちゃうでしょ」
「そうだった!」

 八時の便で、成田を立つと言っていたな。

「あ! ちょっと待って」

 突然、お姉さんが祭壇から降りてきた。

「あいつらの事だけど、言い忘れた事があった」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

処理中です...