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通りすがりの巫女

幽霊お姉さん

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 次に気がついた時、周囲はすっかり暗闇に包まれていた。
 もう、夜になったのだろうか?
 ふと、視線を感じた。
 視線の方に目を向けると、二十歳ぐらいの女性が僕を見つめている。
 暗闇なのに、彼女の姿ははっきり見えた。
 別に驚くことではない。
 さっき、エラの邪気に怯えていた自縛霊だ。

「こんばんは」

 僕が挨拶すると彼女の方が驚いていた。

「私の姿が、見えるの?」
「はい。霊能者ですから」
「霊能者? ということは……」

 彼女は疲れたような顔をしてうずくまった。

「はあ。やっぱり、あたし死んでいたんだ。変だと思ったのよね。誰に声かけても、気がついてもらえないし……」
「お気の毒です。それと済みません。勝手に家に入って」
「いいのよ。事情はずっと見ていたから。君、あいつらに誘拐されてきたのでしょ?」
「ええ。そんなところです」
「あいつら、何日も前から家に居座っているのよ。あたしの姿が見えないなら仕方ないけど、あいつらの一人はあたしの姿が見えていたはずなのよね。それなのに話を聞いてくれないし、もう一人はヒドイ臭いを出しているし」

 エラの放っていた邪気は、幽霊からすると悪臭になるのか。

「もう、あいつらは出て行ったから大丈夫よ。まったく、生きている人間のくせに幽霊を怖がらせるなんて」

 このひとも災難だったな。

「そうですか。それでは、僕もここで失礼させて……」
「ああ、帰るのは無理よ」
「え?」
「あいつら、君を縛ったまま出て行ったから」

 そういえば、電撃食らう前から縛られていたんだっけ。

 縛られているのは両足首と、両腕の肘の当たりを身体ごとのようだけど……
 肘から先は自由に動くけど結び目に手が届かない。
 届いてもこの暗闇では……
 なんとか這って動くことはできるが……

「ほどいてあげたいけど、あたしは物に触れないの。ごめんね」
「いえ。気にしないで下さい」
「這うことはできるのね。じゃあ、あたしの誘導する方へ行って」
「え? はい」

 幽霊お姉さんの誘導にしたがって僕は床を這った。
 しばらく進むと……

「そこで顎を下げて」

 言われたとおりにすると、顎に何かが当たった。
 途端に明かりが灯る。
 LEDランタン?

「あいつらが残して行ったのよ。電池が残っているか心配だったけど」
「ありがとうございます」
「それと、あいつら君のスマホを置いていったわよ」
「え?」
「電源は切られているけど」

 幽霊お姉さんに誘導される事三十分。

 なんとか、スマホにたどり着いた。
 電源を入れると途端に着信音が鳴り響く。
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