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通りすがりの巫女
能力者 2
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僕も樒も一瞬身構えたが、壁から出てきたのは……
「優樹様、樒様、私です」
ミクさんのウサギ式神?
「この現象を引き起こしている犯人は、隣の家にいました。霊ではありません。生きている人間です」
何だって!?
「黒いオーラに包まれていて、はっきり姿を見ることができませんでしたが、明らかに生きている人間でした。電気や磁気を操る能力者のようです」
そういえば、そんな能力者がいるのを協会の研修で聞いたな。
しかし……
僕はお婆さんの方を向いた。
「隣の人と、何かトラブルでもあったのですか?」
お婆さんは怯えた顔で首を横にふった。
「トラブルも何も、隣は何年も空家のままです」
僕は式神に向き直った。
「隣は空家だそうだぞ」
「でも、確かに人がいました。それと、その能力者。どうも、目的があってやっているのではなく、単に力を暴走させている様です」
暴走? では悪気はなかったのか?
「その能力者って、勝手に空家に住み着いるのじゃないかしら?」
樒はそう言って、式神の傍らにしゃがみ込んだ。
「式神さん。その能力者のいる方向を教えて」
「はい。樒様」
ウサギ式神は、長い耳を一つの方向に向ける。
「そっちね」
樒は式神の耳が示す方向に、右腕をまっすぐ向けた。
「臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前」
空中に格子を描くように、樒の手が縦横に動き回る。
その直後、現象が治まった。
壁に張り付いていた物体が全て床に落ちる。
僕のコンパスも正常に戻った。
落ちていた物を調べると、灰皿も花瓶もコップもすべて鉄製品。陶磁器はない。同じ金属製品でもアルミ鍋は全く動いていない。
「九字切りって、超能力者にも利くの?」
「暴走させている能力を、鎮める事ができるのよ」
僕の質問に答えながら、樒は床に落ちていた一円玉を拾って僕に返した。
続いてヘアピンを拾って自分の頭に戻す。
「樒」
「なに?」
「ヘアピンと一緒に拾った五百円返せ」
「ちちい……気づかれたか」
お前の行動パターンは読めているよ。
「皆さん。急いで外へ出て下さい」
突然、ウサギ式神が叫んだ。
「奴が逃げます」
僕達は急いで外に出た。
「あいつよ! あいつが犯人よ」
外で待機していたミクさんの指差す先で、自転車で走り去って行く人物の後姿が目に入る。
「ようし」
樒がバイクのエンジンかけたのは、自転車が角を曲がった時だった。
「あれ?」
「どうした?」
「タイヤがパンクしている」
樒のバイクのタイヤを調べると、パンクなんて甘いものではなかった。
前輪も後輪も大きな穴が開いていたのだ。
「ひっどーい! 私のバイクちゃんを!」
「どうしたの?」
ミクさんがタイヤを覗きこむ。
「あれ? さっきは何も持っていなかったのに」
「ミクちゃん。何か見たの?」
「犯人が逃げる前に、樒さんのバイクのタイヤに手を触れていたの。刃物とか持っている様子はなかったから、大丈夫だと思っていたのに……」
素手でタイヤに穴なんか開けられるものかな?
タイヤに顔を近づけてみると、コケ臭い臭いがした。タイヤの一部が高温で溶けていたのだ。
バーナーでも使ったのだろうか?
いや、ミクさんは何も持っていないと言っていた。
いったいどうやって?
「優樹様、樒様、私です」
ミクさんのウサギ式神?
「この現象を引き起こしている犯人は、隣の家にいました。霊ではありません。生きている人間です」
何だって!?
「黒いオーラに包まれていて、はっきり姿を見ることができませんでしたが、明らかに生きている人間でした。電気や磁気を操る能力者のようです」
そういえば、そんな能力者がいるのを協会の研修で聞いたな。
しかし……
僕はお婆さんの方を向いた。
「隣の人と、何かトラブルでもあったのですか?」
お婆さんは怯えた顔で首を横にふった。
「トラブルも何も、隣は何年も空家のままです」
僕は式神に向き直った。
「隣は空家だそうだぞ」
「でも、確かに人がいました。それと、その能力者。どうも、目的があってやっているのではなく、単に力を暴走させている様です」
暴走? では悪気はなかったのか?
「その能力者って、勝手に空家に住み着いるのじゃないかしら?」
樒はそう言って、式神の傍らにしゃがみ込んだ。
「式神さん。その能力者のいる方向を教えて」
「はい。樒様」
ウサギ式神は、長い耳を一つの方向に向ける。
「そっちね」
樒は式神の耳が示す方向に、右腕をまっすぐ向けた。
「臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前」
空中に格子を描くように、樒の手が縦横に動き回る。
その直後、現象が治まった。
壁に張り付いていた物体が全て床に落ちる。
僕のコンパスも正常に戻った。
落ちていた物を調べると、灰皿も花瓶もコップもすべて鉄製品。陶磁器はない。同じ金属製品でもアルミ鍋は全く動いていない。
「九字切りって、超能力者にも利くの?」
「暴走させている能力を、鎮める事ができるのよ」
僕の質問に答えながら、樒は床に落ちていた一円玉を拾って僕に返した。
続いてヘアピンを拾って自分の頭に戻す。
「樒」
「なに?」
「ヘアピンと一緒に拾った五百円返せ」
「ちちい……気づかれたか」
お前の行動パターンは読めているよ。
「皆さん。急いで外へ出て下さい」
突然、ウサギ式神が叫んだ。
「奴が逃げます」
僕達は急いで外に出た。
「あいつよ! あいつが犯人よ」
外で待機していたミクさんの指差す先で、自転車で走り去って行く人物の後姿が目に入る。
「ようし」
樒がバイクのエンジンかけたのは、自転車が角を曲がった時だった。
「あれ?」
「どうした?」
「タイヤがパンクしている」
樒のバイクのタイヤを調べると、パンクなんて甘いものではなかった。
前輪も後輪も大きな穴が開いていたのだ。
「ひっどーい! 私のバイクちゃんを!」
「どうしたの?」
ミクさんがタイヤを覗きこむ。
「あれ? さっきは何も持っていなかったのに」
「ミクちゃん。何か見たの?」
「犯人が逃げる前に、樒さんのバイクのタイヤに手を触れていたの。刃物とか持っている様子はなかったから、大丈夫だと思っていたのに……」
素手でタイヤに穴なんか開けられるものかな?
タイヤに顔を近づけてみると、コケ臭い臭いがした。タイヤの一部が高温で溶けていたのだ。
バーナーでも使ったのだろうか?
いや、ミクさんは何も持っていないと言っていた。
いったいどうやって?
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