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第八章

取り逃がした

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 トレーラー内の機械を調べたが、遠隔操作されていた形跡はない。
 というか、飲みかけのコーヒーカップがあるし、さっきまでここに人がいた形跡はある。
 いや、逃げたと見せかけて、まだ中に隠れているかもしれない。
 赤外線センサーで探ってみた。
 機器以外の熱源は見当たらない。

「よいしょっと」
 
 念のため、外へ出てトレーラーをひっくり返してみた。
 トレーラーの下にもいなかった。
 やはり逃げたか。

「お兄ちゃん」

 ミクが傍らに降りてきた。

「あいつは?」
「逃げた後だった。まだ、近くにいると思うが……」

 砂漠を見たが、轍も残っていない。
 どうやって逃げたんだ。

「これ以上ここにいても仕方ない。引き返そう」
「うん」

 ミクのオボロは、ふわりと飛び上がった。
 しかし、どういう仕組みで飛んでいるのだろう?
 やはり、反重力? まあ、その詮索は後にして……

「ミク。オボロが消えた時、何があったんだ?」

 ロボットスーツをオボロのすぐ近くまで寄せて直接声をかけてみた。
 声が届かなかったら、通信機に切り替えようかと思ったが、ミクが僕の方を振り向いたところを見ると声は聞こえたようだ。

「あたしも、良く覚えていないの。オボロが消えちゃって、空中に放り出された時、あたし気を失っちゃって、気が付いたらカルカシェルターの中で、芽衣ちゃんに看病してもらっていたの」

 ミクの声もはっきり聞こえた。バイザーを開いてみると風がない。どうやら、オボロの近辺は無風状態の様だ。あの不可視の壁の影響だろうか?

 まあ、なんにせよ飛行中に通信機を使わないで、普通に会話をできるというのはありがたい。

「芽衣ちゃんが、受け止めたと言っていたけど……」
「そう。芽衣ちゃんが助けてくれたそうなんだけど、覚えてなくて。ナーモ族のお医者さんは、急激な魔力切れのせいで意識を失ったと言っていたよ」

 貧血みたいなものかな?

「なぜ、僕らと連絡しなかった?」
「できなかったの。オボロが消えた時に、あたしの通信機は落としちゃったし。カルカシェルターは、昨日の夜から攻撃を受けていて……その時に通信用のアンテナを壊されたちゃって……」
「ドームの外に、帝国兵の死体が転がっていたのはその時の戦闘か?」
「うん。ほとんど、芽衣ちゃんがやったんだって」
「芽衣ちゃんは、エラとは戦わなかったのか?」
「戦ったって……だけど、勝負にならなかったの。芽衣ちゃんのロボットスーツは空を飛べるし、エラは銃が効かないし……そうだ! 肝心の事を……いたのよ!」
「何が?」
「天竜の人達。カルカシェルターに中にいたのよ」
「本当か?」
「うん。あたしもまだ、会っていないけど……あたしがその話を聞いた時には、カルカシェルターでも、お兄ちゃん達が近くに来ているって分かって、ステルスドローンを偵察に出していたの。そしたら、お兄ちゃんが……エラから……酷い事をされていて……」

 見られていたのか。

「みっともないところを見られちゃったな。はは……」
「笑いごとじゃないよ! あたしだって、凄く心配したんだからね!」
「ゴメン!」

 心配をかけたのはお互い様だったね。

「あたしだけじゃないよ。芽衣ちゃんも、あれを見て涙流していたんだから……」

 後で、みんなに謝っておかないと……

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