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第八章

海斗敗れる

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 エラが僕の方に視線を向けた。

「どうやら君が本物のようだな。カイト・キタムラ」

 ミールは確かに一発分しかないと言っていた。なのに、なぜ?

「薬も飲んでいないのに、私の魔力が回復したのが不思議か?」

 ドローンから見ていても、エラが薬を飲むような動作はなかった。

「私は、時代劇が好きと言っただろ。忍者が毒を飲まされた時、どうやって切り抜けている?」
「まさか! 最初から口に含んでいた?」
「そのとおりさ」
 
 ううむ……水戸黄門でそんな話があったな。
 古風な手を……

 エラが光る掌を、僕の方に向けた。

「私の魔力が尽きたと思ってのこのこ出てきたのが失敗だな。食らえ!」

 プラズマボールが、こっちへ向ってくる。
 僕は腰に吊るした電磁石弾を投げつけ、背中のショットガンを抜いた。
 プラズマボールと電磁石弾が接近したとき、プラズマボールの軌道が大きく逸れる。

「なに!?」
 
 驚いているエラの顔を狙って僕はトリガーを引いた。
 女を撃つのは、この惑星に来て初めてかもしれない。

 だが……

 エラの正面にプラズマの壁が出現して、ショットガンの弾がその中に飛び込んでいく。
 プラズマが消えると、無傷のエラがいた。

 残時間二百秒。

「私はハリウッド映画も好きでな」

 エラは聞いてもいない事を話し出した。
 こいつも自慢話をしたい性格らしい。

「『炎の少女チャーリー』が、どうやって銃から身を守ったか覚えているか? 自分に迫る銃弾を、高温で蒸発させてしまったのだ。私も自分の能力で、あれができないものかと散々練習したのだよ」
「練習すれば、できるような事なのか?」
「できる! 現に今、やってのけただろう」
 
 残時間百八十秒。

「分かっただろう。私に君の銃は通じない。君のスーツは私の攻撃を防げない。君に勝ち目はない」
「いや、まだ勝ち目はある」
「なんだ? まさか勇気で勝つとか言うのか?」
「いや、スピードだ。アクセレレーション」

 残時間百六十秒。

 プラズマの壁は、全周囲に張れるわけでない。
 加速機能で側面や背後に回り込めば、どこかに死角ができる。
 さらに、ウェアラブルコンピューターを操作した。
 十体の立体映像が出現する。

「おのれ! また分身の術か」

 立体映像に気を取られているエラの背後に回り込んだ。
 ショットガンを向ける。
 だが、一瞬早くエラの背後にプラズマ壁が出現。
 さらにプラズマボールが僕に向かってくる。

 避けられない。

 最後の電磁石弾を投げて躱した。

『ご主人様。加勢します』

 Pちゃんのコントロールする菊花が上空から突っ込んできた。
 ミサイルを撃つ。
 しかし、ミサイルもプラズマボールで撃墜された。

 残時間百秒。

 こうなったら……

 近くに落ちている瓦礫を拾った。
 元は煉瓦の壁だったようだ。
 エラに向ってそれを投げつけ……

「ホバー」
 
 ブーツの底から、空気が噴出してロボットスーツわずかに浮き上がる。

「ジェット」

 背嚢から、空気が噴出してエラに向かって加速。
 先に投げた瓦礫の壁に、次々とプラズマボールがぶつかる。
 しかし、熱に強いレンガの壁は簡単には砕けない。
 ようやく砕けた時に、僕はエラに肉発していた。
 この距離ならブーストパンチを叩き込める。

 バチバチバチ!

 しまった! ブーストパンチを使うより一瞬早く、電撃を食らった。
 バイザーにエラー表示が次々と現れる。

『クエンチ警報。パイロットの安全のため、強制パージ』 

 まて! ここでバージは……

 止める間もなくロボットスーツはバラバラになり、僕は地面に投げ出された。
 視界が粉塵にさえぎられる。
 粉塵が晴れた時、猟奇的な笑みを浮かべたエラが僕の傍らに立っていた。
 エラは光る掌を僕の首に当てる。

「ぎゃあああああ!」

 突然襲ってきた激痛に悲鳴を上げ、僕の意識は暗転した。 

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