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第八章
コピー人間
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最初に広場に入って来たのは、エラではなく二人の騎兵だった。
「なんだ!? これは!」
広場にいる十体のロボットスーツの姿を見て驚く。
「いかん! 罠だ! 大尉に知らせろ!」
そうはいかない。
「ワイヤーガンセット ファイヤー」
左のワイヤーガンを一人の騎兵に打ち込む。
「ウオオオ!」
ワイヤーガンは腹に刺さった。
「ワイヤーガンセット ファイヤー」
右のワイヤーガンをもう一人の胸に打ち込んだ。
「ギャアア!」
肺に刺さったか?
「ウインチスタート」
二人の騎兵は落馬して、こっちへ引き寄せられる。
馬はそのまま逃げて行った。
僕の足元まで引き寄せられた騎兵達から、足をかけてワイヤーガンを引っこ抜く。
一人の騎兵の兜を無理やり剥ぎ取ると、中から出てきた二十歳ほどの美形男子が、整った顔を苦痛に歪ませていた。
AA12コンバットショットガンを突き付ける。
「答えろ。エラ・アレンスキーはどこだ?」
「ア……アレンスキー大尉なら……」
そこまで言いかけた時、兵士の顔は恐怖に歪む。
避けろ! 避けるんだ!
僕の中で、そんな声が聞こえたような気がした。
などと、考えるよりも先に背後に飛びのく。
次の瞬間……
「ぎゃあああ!」
兵士の下半身が、プラズマボールで包まれた。
「な!? 味方を……」
下半身を失いながらも、兵士はまだ生きていて、のた打ち回っていた。
「ぐわわわ! ママ! ママ! 痛いよ!」
プラズマが飛んできた方向に目を向けると、広場の別の入り口に、馬に乗ったエラ・アレンスキーの姿があった。エラの後ろから三騎の騎兵が出てくる。
そうか。二人の騎兵を正面から突っ込ませて、自分は脇道から入って来たな。
「そこの男。このエラ・アレンスキーが、素直に正面から罠に突っ込んでくるとでも思ったか? 甘いな。私をただの、電撃馬鹿などと思ったら痛い目に遭うぞ。だが、今の攻撃は、よく避けたと誉めてやろう」
こいつ……手ごわい。
「うああああ!」
さっきの美形兵士は、まだのたうちまわっていた。
「おい! 彼は、あんたの部下じゃないのか?」
僕の問いかけに、エラは薄ら笑いを浮かべる。
「そう。私の部下さ。それがどうかしたかね?」
「自分の味方に、なぜこんな酷い事をする?」
「自分の仲間を、撃つわけないだろう。君に向けて撃ったのに、君が避けるからいかんのだ。そのせいで私の攻撃が、私の部下を当たってしまったではないか。せっかく、近衛師団から引き抜いてきた、美形だったのに惜しいことをした」
もう一人、地面に転がっていた兵士が、自分から兜を外して地面に吐血した。
苦痛に歪むその顔は、十代前半ぐらいの少年。
「痛い! 痛いよ! ママ」
それを見たエラは、僕に向かって言う。
「君こそ酷い奴だな。こんな子供を、痛めつけるとは」
こいつにだけは、言われたくない。
「ぐわわ! 大尉……殺して下さい! お願いします」
下半身を失った兵士は、まだ生きていた。
しかし、とても正視できる光景ではない。
「困ったな。殺してくれと言われても、味方を殺すわけにもいかんし……そこの日本人。そのデカい銃で、そいつを楽にしてやってくれないか」
帝国の誰が命令したのか知らないが、こいつを粛清したくなる気持ちがよく理解できた。
「日本人なら、武士の情けというものがあるだろう。それとも、アイアンマンスーツを着ているという事は、アメリカ人か?」
なに? 翻訳ディバイスにチラッと目をやった。
『武士の情け』は帝国語ではなく、日本語そのまま発音していた。『アイアンマンスーツ』も英語そのまま発音している。それにアメリカという国を知っているという事は……
「エラ・アレンスキー。おまえ、コピー人間だな」
「その通りだ。カイト キタムラ。私も君と同じくコピー人間。二十一世紀の地球で、暮らしていた時の記憶も持っている」
「なんだ!? これは!」
広場にいる十体のロボットスーツの姿を見て驚く。
「いかん! 罠だ! 大尉に知らせろ!」
そうはいかない。
「ワイヤーガンセット ファイヤー」
左のワイヤーガンを一人の騎兵に打ち込む。
「ウオオオ!」
ワイヤーガンは腹に刺さった。
「ワイヤーガンセット ファイヤー」
右のワイヤーガンをもう一人の胸に打ち込んだ。
「ギャアア!」
肺に刺さったか?
「ウインチスタート」
二人の騎兵は落馬して、こっちへ引き寄せられる。
馬はそのまま逃げて行った。
僕の足元まで引き寄せられた騎兵達から、足をかけてワイヤーガンを引っこ抜く。
一人の騎兵の兜を無理やり剥ぎ取ると、中から出てきた二十歳ほどの美形男子が、整った顔を苦痛に歪ませていた。
AA12コンバットショットガンを突き付ける。
「答えろ。エラ・アレンスキーはどこだ?」
「ア……アレンスキー大尉なら……」
そこまで言いかけた時、兵士の顔は恐怖に歪む。
避けろ! 避けるんだ!
僕の中で、そんな声が聞こえたような気がした。
などと、考えるよりも先に背後に飛びのく。
次の瞬間……
「ぎゃあああ!」
兵士の下半身が、プラズマボールで包まれた。
「な!? 味方を……」
下半身を失いながらも、兵士はまだ生きていて、のた打ち回っていた。
「ぐわわわ! ママ! ママ! 痛いよ!」
プラズマが飛んできた方向に目を向けると、広場の別の入り口に、馬に乗ったエラ・アレンスキーの姿があった。エラの後ろから三騎の騎兵が出てくる。
そうか。二人の騎兵を正面から突っ込ませて、自分は脇道から入って来たな。
「そこの男。このエラ・アレンスキーが、素直に正面から罠に突っ込んでくるとでも思ったか? 甘いな。私をただの、電撃馬鹿などと思ったら痛い目に遭うぞ。だが、今の攻撃は、よく避けたと誉めてやろう」
こいつ……手ごわい。
「うああああ!」
さっきの美形兵士は、まだのたうちまわっていた。
「おい! 彼は、あんたの部下じゃないのか?」
僕の問いかけに、エラは薄ら笑いを浮かべる。
「そう。私の部下さ。それがどうかしたかね?」
「自分の味方に、なぜこんな酷い事をする?」
「自分の仲間を、撃つわけないだろう。君に向けて撃ったのに、君が避けるからいかんのだ。そのせいで私の攻撃が、私の部下を当たってしまったではないか。せっかく、近衛師団から引き抜いてきた、美形だったのに惜しいことをした」
もう一人、地面に転がっていた兵士が、自分から兜を外して地面に吐血した。
苦痛に歪むその顔は、十代前半ぐらいの少年。
「痛い! 痛いよ! ママ」
それを見たエラは、僕に向かって言う。
「君こそ酷い奴だな。こんな子供を、痛めつけるとは」
こいつにだけは、言われたくない。
「ぐわわ! 大尉……殺して下さい! お願いします」
下半身を失った兵士は、まだ生きていた。
しかし、とても正視できる光景ではない。
「困ったな。殺してくれと言われても、味方を殺すわけにもいかんし……そこの日本人。そのデカい銃で、そいつを楽にしてやってくれないか」
帝国の誰が命令したのか知らないが、こいつを粛清したくなる気持ちがよく理解できた。
「日本人なら、武士の情けというものがあるだろう。それとも、アイアンマンスーツを着ているという事は、アメリカ人か?」
なに? 翻訳ディバイスにチラッと目をやった。
『武士の情け』は帝国語ではなく、日本語そのまま発音していた。『アイアンマンスーツ』も英語そのまま発音している。それにアメリカという国を知っているという事は……
「エラ・アレンスキー。おまえ、コピー人間だな」
「その通りだ。カイト キタムラ。私も君と同じくコピー人間。二十一世紀の地球で、暮らしていた時の記憶も持っている」
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