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第八章

ミーチャの薬袋

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「ご主人様、プラズマボールの分析終わりました」
 
 Pちゃんがテントに入ってきた。

「どうだった?」
「まず、ロボットスーツの装甲で、プラズマボールを受けた場合、最初の一発までは耐えられますが、二発目には耐えられません。ちなみに耐えられると言うのは、中の操縦者が守れるという事であって、ロボットスーツの機能は、最初の一発で、ほぼ失われるでしょう」
「一発でも当たったら終わりか」
「次にミールさんの分身ですが、憑代に使っている木札が、あれに触れたらアウトです。もちろん当たらなければどうという事ありませんが、プラズマボールの直径は、ほぼ一メートル。ミールさんの身長は、猫耳を含めて百五十五センチ。憑代は胴体にありますので、直径一メートルの球体なら、ほぼカバーされてしまいます」
「困りましたねえ」
「次にドローンですが、もっとも装甲の厚い菊花でも一発で終わりです」

 そうなると、スピードが遅い。軌道変更できない。磁石に引き寄せられるという欠点を突くしかない。

 となると作戦は……

「飽和攻撃か」

 エラ・アレンスキーの魔力が切れるまで、デコイで攻撃を続ける。

 だが、問題は敵がエラだけじゃないこと。

 帝国軍もいるし、裏切り四天王もいるし、そのうち一人は、こっちに味方してくれるみたいだが……

「なんとか、ドーム内の味方と連絡が取れればな。電波で連絡を取れんのかね?」
「ダモンさん、電波を使えば、こっちの位置がばれます」
「そうか。電波というのも、不便なものだな」

「あら? そんな心配いらなくてよ。だって、居場所なんて、とっくばれているのだから」

 そうか、とっくにばれているのか……………え? 

 今の声……誰?

 声のした方に目を向ける。

 そこに小人がいた。

 いや……小人じゃない。

 小型の人型ドローンだ。

「はーい。北村君」

 その声は!?

「成瀬さん?」
「御名答。もちろん、これはドローンだけどね。君たちが来る前に、このあたりに配置しておいたのよ。君もシーバ城で、似たような事やったでしょ」

 そんな事も知ってるのか? いや、カルルと連絡をとっているなら、知ってて当然か。

「それじゃあ、僕達の居場所はとっくに分かっていたという事か?」
「その通り。たぶん、君は思っているはず。居場所が分かっているなら、なぜとっとと攻撃しないのかと」

 思っている。

「さっきも言った通り、私は君を洗脳して味方にしたい。だけど、矢納は君を殺したがっている。居場所が分かったら、あの馬鹿はすぐに攻撃してくるでしょうね。だから、君の居場所が分かったという情報は、私のところで止めているの」
「なるほど」
「それと、私としては君が敵と言う立場にあるうちに、矢納とエラを片付けてほしい。君を洗脳するのはその後」
「僕は洗脳される気はない」
「分かっているわ。抵抗しないで、大人しく洗脳されろなんて無茶は言わないわよ。精いっぱい抵抗して良いわよ。私も力の限り、君を私のものにしてやるから」

 不意にミールとPちゃんが、僕とドローンの間に割り込んだ。

「そんな事は、させません! カイトさんは、あたしのです!」
「ミールさんのではありませんが、あなたなんかに、ご主人様は渡しません!」

 人型ドローンがミールとPちゃんを一瞥する。

「ふーん。あなたが芽衣ちゃんが作った高性能アンドロイドPちゃんね。そして、こっちのナーモ族の女の子がミールちゃんかしら」

 こっちの情報がだだ漏れ……

「ちょっと待った。Pちゃんは元々シャトルのメインコンピューターに入っていた人工知能で……」
「知っているわ。でも、その人型筐体はP〇三七一専用に開発されたのよ」

 そうなのか?

「それはともかく、私達が戦うのは、矢納とエラを片付けてからよ。矢納はともかく、まずエラ対策ね。こっちにミーチャが来ていると聞いたけど、持ち物は検査したかしら?」
「そりゃあ、一応。でも武器らしきものは、持っていなかったですよ」
「薬袋を、持っていなかったかしら?」
「持っていたけど、あの子の持病用かもしれないと思って、すぐに返したけど」
「ちょっと見せてほしいわ」

 僕は寝ているミーチャのポケットから薬袋を取り出して、ドローンの前に置いた。
 ドローンは袋から丸薬を取り出して眺める。
 不意にPちゃんの方を向いた。

「Pちゃん。あなた成分を分析できたわね。この丸薬を分析して」
「私は、ご主人様以外の命令は受けません」

 ドローンが、困ったように僕を見る。

「Pちゃん。言う通りにして」
「ご主人様が、おっしゃるなら」

 Pちゃんは丸薬を飲み込んだ。
 お腹の中で成分を分析しているのだ。
 その結果……

「これは!?」

 丸薬成分の表示を見て驚いた。

「ミールの魔法回復薬と同じ成分!」
「ええ!? あたしの薬と同じ? じゃあ、この子も魔法使い?」

 ミールの前で、成瀬ドローンが首を横にふる。

「違うわ。ミーチャに魔法は使えない。これはエラ・アレンスキーの魔法回復薬よ」

 なに!?
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