835 / 850
第十七章
敵はどこから?
しおりを挟む
落とされたのは、要塞上空にいたドローンではなかった。
それは今も、情報を送り続けている。
落とされたのは、後方に配置していた一機。
航空ドローン六機の内五機は二人よりも前方に配置、一機だけが二人の後方を警戒していたのだ。
落とされる前のドローンから送られてきたレーダーのデータを見ると、何も無い海上に突然数十機のドローンが現れて急接近してきた様子が分かる。
その中の一機が、こちらのドローンに体当たりしてきたらしい。
「いったい、敵はどこから?」
「古淵君。ここへくる途中の海上に船がいたけど、そこから飛び立ったのではないかい?」
「いや、それにしては数が多過ぎませんか?」
レーダーが捉えたドローンの数は、三十機を越えていた。
暗視装置による映像を拡大したところ、ドローンはすべて自爆ドローンS131。
「古淵君、作戦はどうするの?」
「矢部さん。あのドローン群の中を突っ切って《はくげい》へ戻れる自信はありますか?」
「あんましないかな」
「そうなると、これしかありませんね」
古淵は要塞の方を指さした。
「まさか、突っ込むのか? 無茶だよ」
「突っ込むように見せかけるだけです。途中で高度を落として、地上走行ドローンを解き放った後、我々は地上すれすれを飛んでドローン群をやり過ごします」
「なるほど。それなら問題ないな」
二人は、要塞に向かって加速した。
要塞の対空機関砲が火を噴いたのはその時。
上空にいたドローンが落とされる。
古淵は、残りのドローンに後退命令を出したが、逃げる前にドローン一機がミサイルの餌食となった。
「奴ら、スティンガーミサイルまで持っていたのか」
「矢部さん。高度を下げましょう」
「え? もう下げるの?」
「このままだと、我々もミサイルの餌食になります」
ニャガンの建物は、石造りの四~五階建てが多い。
二人は、それよりも高度を下げて飛び続けた。
これで要塞からの攻撃は防げる。
しかし、夜間とは言え通行人の目を引いた。
「古淵君、どこまで行くんだ? 要塞から五百メートル以内でドローンを放てば、要塞には到達できるのだろう?」
「五百メートルはぎりぎりの距離です。確実を期すためにもっと近づきます」
「あんまり欲張らない方がいいと思うのだけどなあ」
やがて二人は、人気の無い路地へと入り込んだ。
そこにコンテナを降ろしてから、古淵は路地の先へ歩いていく。
そこに、高さ二メートルほどの壁があった。
その壁は実は堤防で、その向こうでは川が流れている。
古淵は堤防にワイヤーガンを撃ち込み、その上に登った。
川を挟んで三十メートル先の中州に、要塞の城壁が聳え立っている。
「これはいい。ここからドローンを放ちましょう」
「ここまで近づかなくても……」
ブツクサ言いながら、矢部はコンテナのテンキーに暗証番号を打ち込んだ。
コンテナの蓋がゆっくりと開いていく。
蓋が開き切ったところで、矢部は次のコードを打ち込んだ。
コンテナに収納されていた地上走行ドローンが、蛇の様に蠢きながらぞろぞろと出てくる。
その数三十機。
この機体は光学迷彩機能がある他、水中も進める水陸両用ドローン。
ドローン群は堤防をよじ登って、堤防上に集結した。
「光学迷彩作動」
古淵の命令で、ドローンはすべて姿を隠す。
「全機出撃せよ」
姿は見えないが、川面に現れた波紋によってドローンが水中に入って行くのが分かった。
古淵は空中に浮かび、水中にいるドローンが視認できないか確認する。
水中には何も見えない。光学迷彩は完璧に機能しているようだ。
「矢部さん。成功しました。引き上げましょう」
古淵がそう言った時だった。
「古淵君! 危ない!」
「え?」
声の方へ視線を向けると、矢部が肉薄している。
「矢部さん。何を?」
矢部は質問に答えることなく、古淵の傍らを猛スピードで通り過ぎて行った。
矢部が向かう先にあるのは、一機のS131。
古淵の背後から接近していたS131を、矢部は蹴り飛ばす。
直後に周囲は爆炎に包まれた。
それは今も、情報を送り続けている。
落とされたのは、後方に配置していた一機。
航空ドローン六機の内五機は二人よりも前方に配置、一機だけが二人の後方を警戒していたのだ。
落とされる前のドローンから送られてきたレーダーのデータを見ると、何も無い海上に突然数十機のドローンが現れて急接近してきた様子が分かる。
その中の一機が、こちらのドローンに体当たりしてきたらしい。
「いったい、敵はどこから?」
「古淵君。ここへくる途中の海上に船がいたけど、そこから飛び立ったのではないかい?」
「いや、それにしては数が多過ぎませんか?」
レーダーが捉えたドローンの数は、三十機を越えていた。
暗視装置による映像を拡大したところ、ドローンはすべて自爆ドローンS131。
「古淵君、作戦はどうするの?」
「矢部さん。あのドローン群の中を突っ切って《はくげい》へ戻れる自信はありますか?」
「あんましないかな」
「そうなると、これしかありませんね」
古淵は要塞の方を指さした。
「まさか、突っ込むのか? 無茶だよ」
「突っ込むように見せかけるだけです。途中で高度を落として、地上走行ドローンを解き放った後、我々は地上すれすれを飛んでドローン群をやり過ごします」
「なるほど。それなら問題ないな」
二人は、要塞に向かって加速した。
要塞の対空機関砲が火を噴いたのはその時。
上空にいたドローンが落とされる。
古淵は、残りのドローンに後退命令を出したが、逃げる前にドローン一機がミサイルの餌食となった。
「奴ら、スティンガーミサイルまで持っていたのか」
「矢部さん。高度を下げましょう」
「え? もう下げるの?」
「このままだと、我々もミサイルの餌食になります」
ニャガンの建物は、石造りの四~五階建てが多い。
二人は、それよりも高度を下げて飛び続けた。
これで要塞からの攻撃は防げる。
しかし、夜間とは言え通行人の目を引いた。
「古淵君、どこまで行くんだ? 要塞から五百メートル以内でドローンを放てば、要塞には到達できるのだろう?」
「五百メートルはぎりぎりの距離です。確実を期すためにもっと近づきます」
「あんまり欲張らない方がいいと思うのだけどなあ」
やがて二人は、人気の無い路地へと入り込んだ。
そこにコンテナを降ろしてから、古淵は路地の先へ歩いていく。
そこに、高さ二メートルほどの壁があった。
その壁は実は堤防で、その向こうでは川が流れている。
古淵は堤防にワイヤーガンを撃ち込み、その上に登った。
川を挟んで三十メートル先の中州に、要塞の城壁が聳え立っている。
「これはいい。ここからドローンを放ちましょう」
「ここまで近づかなくても……」
ブツクサ言いながら、矢部はコンテナのテンキーに暗証番号を打ち込んだ。
コンテナの蓋がゆっくりと開いていく。
蓋が開き切ったところで、矢部は次のコードを打ち込んだ。
コンテナに収納されていた地上走行ドローンが、蛇の様に蠢きながらぞろぞろと出てくる。
その数三十機。
この機体は光学迷彩機能がある他、水中も進める水陸両用ドローン。
ドローン群は堤防をよじ登って、堤防上に集結した。
「光学迷彩作動」
古淵の命令で、ドローンはすべて姿を隠す。
「全機出撃せよ」
姿は見えないが、川面に現れた波紋によってドローンが水中に入って行くのが分かった。
古淵は空中に浮かび、水中にいるドローンが視認できないか確認する。
水中には何も見えない。光学迷彩は完璧に機能しているようだ。
「矢部さん。成功しました。引き上げましょう」
古淵がそう言った時だった。
「古淵君! 危ない!」
「え?」
声の方へ視線を向けると、矢部が肉薄している。
「矢部さん。何を?」
矢部は質問に答えることなく、古淵の傍らを猛スピードで通り過ぎて行った。
矢部が向かう先にあるのは、一機のS131。
古淵の背後から接近していたS131を、矢部は蹴り飛ばす。
直後に周囲は爆炎に包まれた。
0
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
あめの みかな
ファンタジー
教会は、混沌の種子を手に入れ、神や天使、悪魔を従えるすべを手に入れた。
後に「ラグナロクの日」と呼ばれる日、先端に混沌の種子を埋め込んだ大陸間弾道ミサイルが、極東の島国に撃ち込まれ、種子から孵化した神や天使や悪魔は一夜にして島国を滅亡させた。
その際に発生した混沌の瘴気は、島国を生物の住めない場所へと変えた。
世界地図から抹消されたその島国には、軌道エレベーターが建造され、かつての首都の地下には生き残ったわずかな人々が細々とくらしていた。
王族の少年が反撃ののろしを上げて立ち上がるその日を待ちながら・・・
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる