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第十七章
かつての部下
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ルカが出て行った後、カルルは端末を操作して今まで集めたデータを《はくげい》へ送る作業を開始した。
作業事態はすぐに終わったが、データ転送が終了するまで数分間待たなければならない。
それが終わるまでは、メモリを破壊するわけにいかなかった。
「くそ! こんなことなら、自爆装置を用意しておくんだった」
後悔しても始まらない。
データ転送を待っている間にできる事はやっておこうと、カルルは木箱の一つを動かした。
その下から地下道の入り口が現れる。
「博士は、ここから逃げて下さい」
「おまえは、どうすんじゃ?」
「俺はここのデータを破壊したら、ルカとヴァシリーを連れて追いかけます」
「あの二人なら、もう助からんぞ」
「それは……」
「おまえだけでも、ワシと一緒に逃げたらどうだ?」
「そんな事は……いいから行け! ジジイ! 俺の代わりはいるが、あんたの代わりはいないんだ!」
「頑固者め。いいじゃろう。ワシは逃げさせてもらう」
ジジイが行った後、カルルは地下道の入り口を木箱で塞いだ。
振り返って端末を見ると、データ転送は終了している。
「よし、後は」
地下道入り口を隠していた木箱を開き、中にしまってあったフッ化重水素レーザー銃を使いコンピューターのメインメモリーを破壊した。
プラスチックの焦げるイヤな臭いが周囲に漂う中、カルルはある事を思い出す。
「しまった! メモリーカードが残っていた」
カルルは急ぎメモリーカードの類を集めると床に並べ、それにもレーザーを照射。
ルカが出て行った木箱の隙間から、三名の帝国兵が入って来たのはその時。
「ちっ!」
軽く舌打ちをするカルル。
まだメモリーカードが半分以上残っている。
帝国兵はカルルに小銃を向けた。
「武器を捨てろ! カルル・エステス!」
どうやら、すぐに撃つ気はないようだ。
「撃てるものなら、撃ってみるんだな」
メモリーカードを破壊しきるまでの時間を、カルルは減らず口で稼ぐことにしたらしい。
「命が惜しくないのか!?」
「惜しいさ。だが、ここで武器を捨てたところで、おまえ達が俺を殺さない保証はどこにもないからな」
「命の保証はする。おまえは、無傷で連れてこいという隊長の命令なのでな」
「ほう。その隊長さんとやらは、ずいぶんと俺を高く買ってくれているようだな」
帝国兵はニヤリと笑みを浮かべた。
「会えば、分かるさ」
「会えば? 俺の知っている人間か?」
「そんなところだ。さあどうする?」
「いいだろう」
その時点で、床に並べてあるメモリーカードはすべて溶けていた。
これ以上時間稼ぎの必要はないと判断したカルルは、レーザー銃を床に置く。
「では、来てもらおう」
木箱の隙間を抜けて出てみると、そこには数名の帝国兵を引き連れた女性士官が待っていた。
女性士官はカルルの姿を見るとパッと敬礼する。
「カルル様。お迎えに参りました」
「君は?」
襲撃部隊を指揮していたのは、かつての部下イリーナだった。
「イリーナ……なのか?」
「私を、覚えておいでですか?」
「生憎だが、レム神との繋がりが切れる前の記憶はほとんど残っていない。君のことは、君の絵を描いていた時の記憶が残っている程度だ」
「そうですか。でも、その時の事を覚えて頂いただけでも、私は嬉しいです。私にとって、あの時間は何にも代え難い時間でした」
「そうなのか? それと、どうやら俺は君の上司であったらしいが、そうなのか?」
「その事は、覚えていらっしゃらなかったのですね。あなたは私の最高の上司でした」
「それは光栄だな」
「あなたに、命を救われた事もありました」
「そうなのか?」
命と聞いて、カルルは大事な事を思い出す。
「おい! ここに出てきた二人の男はどうした!?」
「あの二人でしたら……」
イリーナは背後を指さす。
二人の若者が倒れていた。
「ルカ! ヴァシリー!」
カルルは倒れている二人にフラフラと歩み寄る。
兵士達がさっと銃を向けるが、イリーナはそれを制止した。
カルルは彼らの元に近寄り脈を取る。
「死んでいる……レム神の呪縛から逃れて、せっかく自由の身になれたというのに……」
イリーナを睨みつけた。
「殺すことはないだろう! 前途有望な若者達を」
「帝国を裏切った者です。当然の報いですわ」
「ならば俺も殺せ! 俺も裏切り者だぞ」
「カルル様は、裏切り者ではありませんわ。いえ、これからこちらに戻ってもらいます」
「なに! まさか、ブレインレターを?」
「あいにくブレインレターは手元にありませんが、数日中に届きます。それまで、身柄を監禁させていただきますわ」
そのままカルルは連行されていった。
作業事態はすぐに終わったが、データ転送が終了するまで数分間待たなければならない。
それが終わるまでは、メモリを破壊するわけにいかなかった。
「くそ! こんなことなら、自爆装置を用意しておくんだった」
後悔しても始まらない。
データ転送を待っている間にできる事はやっておこうと、カルルは木箱の一つを動かした。
その下から地下道の入り口が現れる。
「博士は、ここから逃げて下さい」
「おまえは、どうすんじゃ?」
「俺はここのデータを破壊したら、ルカとヴァシリーを連れて追いかけます」
「あの二人なら、もう助からんぞ」
「それは……」
「おまえだけでも、ワシと一緒に逃げたらどうだ?」
「そんな事は……いいから行け! ジジイ! 俺の代わりはいるが、あんたの代わりはいないんだ!」
「頑固者め。いいじゃろう。ワシは逃げさせてもらう」
ジジイが行った後、カルルは地下道の入り口を木箱で塞いだ。
振り返って端末を見ると、データ転送は終了している。
「よし、後は」
地下道入り口を隠していた木箱を開き、中にしまってあったフッ化重水素レーザー銃を使いコンピューターのメインメモリーを破壊した。
プラスチックの焦げるイヤな臭いが周囲に漂う中、カルルはある事を思い出す。
「しまった! メモリーカードが残っていた」
カルルは急ぎメモリーカードの類を集めると床に並べ、それにもレーザーを照射。
ルカが出て行った木箱の隙間から、三名の帝国兵が入って来たのはその時。
「ちっ!」
軽く舌打ちをするカルル。
まだメモリーカードが半分以上残っている。
帝国兵はカルルに小銃を向けた。
「武器を捨てろ! カルル・エステス!」
どうやら、すぐに撃つ気はないようだ。
「撃てるものなら、撃ってみるんだな」
メモリーカードを破壊しきるまでの時間を、カルルは減らず口で稼ぐことにしたらしい。
「命が惜しくないのか!?」
「惜しいさ。だが、ここで武器を捨てたところで、おまえ達が俺を殺さない保証はどこにもないからな」
「命の保証はする。おまえは、無傷で連れてこいという隊長の命令なのでな」
「ほう。その隊長さんとやらは、ずいぶんと俺を高く買ってくれているようだな」
帝国兵はニヤリと笑みを浮かべた。
「会えば、分かるさ」
「会えば? 俺の知っている人間か?」
「そんなところだ。さあどうする?」
「いいだろう」
その時点で、床に並べてあるメモリーカードはすべて溶けていた。
これ以上時間稼ぎの必要はないと判断したカルルは、レーザー銃を床に置く。
「では、来てもらおう」
木箱の隙間を抜けて出てみると、そこには数名の帝国兵を引き連れた女性士官が待っていた。
女性士官はカルルの姿を見るとパッと敬礼する。
「カルル様。お迎えに参りました」
「君は?」
襲撃部隊を指揮していたのは、かつての部下イリーナだった。
「イリーナ……なのか?」
「私を、覚えておいでですか?」
「生憎だが、レム神との繋がりが切れる前の記憶はほとんど残っていない。君のことは、君の絵を描いていた時の記憶が残っている程度だ」
「そうですか。でも、その時の事を覚えて頂いただけでも、私は嬉しいです。私にとって、あの時間は何にも代え難い時間でした」
「そうなのか? それと、どうやら俺は君の上司であったらしいが、そうなのか?」
「その事は、覚えていらっしゃらなかったのですね。あなたは私の最高の上司でした」
「それは光栄だな」
「あなたに、命を救われた事もありました」
「そうなのか?」
命と聞いて、カルルは大事な事を思い出す。
「おい! ここに出てきた二人の男はどうした!?」
「あの二人でしたら……」
イリーナは背後を指さす。
二人の若者が倒れていた。
「ルカ! ヴァシリー!」
カルルは倒れている二人にフラフラと歩み寄る。
兵士達がさっと銃を向けるが、イリーナはそれを制止した。
カルルは彼らの元に近寄り脈を取る。
「死んでいる……レム神の呪縛から逃れて、せっかく自由の身になれたというのに……」
イリーナを睨みつけた。
「殺すことはないだろう! 前途有望な若者達を」
「帝国を裏切った者です。当然の報いですわ」
「ならば俺も殺せ! 俺も裏切り者だぞ」
「カルル様は、裏切り者ではありませんわ。いえ、これからこちらに戻ってもらいます」
「なに! まさか、ブレインレターを?」
「あいにくブレインレターは手元にありませんが、数日中に届きます。それまで、身柄を監禁させていただきますわ」
そのままカルルは連行されていった。
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