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第十七章
緊急呼び出し
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「……銀河に存在する星々の中で、知的生命体の存在する惑星はけっして少なくはない。
過去には、知的生命体同士で争いが起きた事もあったが、いつしか争いを防止するための条約が定められた。
その条約の中に、未発達知的生命体を保護する条項がある。
日本語に翻訳すると「如何なる知的生命体であれ、その存在が確認された恒星系は、その生命体の領域と認定し、何人たりともその領域を犯してはならない」と言った内容になる」
そこまで話したところで、仮想空間で僕に銀河法の講義を行っていた講師の話がピタッと止まった。
ちなみに講師のアバターは、半人半馬のタウリ族の姿をしている。
しかし、いったいどうしたのだろう?
今まで僕は、仮想空間で研修中だったが、今は時間が止まったかのように僕以外のすべてが静止している。
突然目の前に、メッセージ画面が現れた。
『仮想空間を強制終了します』
直後に僕は闇に包まれる。
仮想空間と僕の脳をつないでいるBMI (ブレイン・マシン・インターフェイス)の接続が断たれた事により、一時的に僕の五感がなくなったためだ。
しかし、いったい何があったのだ?
研修はもう少し続くはずだったのに……
程なくして僕の五感は戻ってくる。
おもむろに目を開くと、そこはリトル東京で僕に与えられた家の一室。
VRルームと呼ばれるこの部屋は、BMIを内蔵したリクライニングチェアがある以外は何も調度品のない簡素な狭い部屋だが、その壁は外部からのあらゆる攻撃を防いでくれる頑丈な素材でできている。
BMI使用中の人は無防備状態になるため、このような部屋が必要となるのだ。
部屋の鍵は内部からしか開けないが、僕に万が一の事があった場合は……
「ご主人様、お帰りなさいませ」
万が一の場合に備えて、Pちゃんが室内に待機していてくれていた。
「Pちゃん。何があった?」
「森田指令から、緊急呼び出しです。至急第二作戦会議室に出頭せよと」
「緊急呼び出し? 何があったのだ?」
「それに関してはデータがありません」
直接話したいという事か。
しかし、いったい何があったのだろう?
帝国軍もここしばらく大人しかったし……まあ、暴れようにも戦力が枯渇した今の帝国軍に、リトル東京やカルカを相手に事を構える力はないはずだ。
僕はVRルームを出ると、素早くシャワーを済ませ、防衛隊の制服に着替えてからリビングに向かった。
「あら? カイトさん。研修はもう終わったのですか?」
リビングに行くと、ミールが手紙を書いている所だった。
ミケ村に残してきた家族に、こちらの近況を伝える手紙を書くと、今朝会ったとき言っていたが……
ちなみに僕とミールは、リトル東京に着いてからすぐにこの家で同居するようになった。
今は同棲生活のようなものだが、戦争が終わったら彼女と……おおっと! いかん! これを言ったら死亡フラグが立つんだったな。
ただ、困ったのはPちゃんの扱いだ。
ロボットスーツやプリンターは防衛隊の装備品なので、Pちゃんもてっきりそうだと思っていた。
だから、Pちゃんには防衛隊の基地に待機してもらおうと思っていたのだが、実はPちゃんだけは僕の私有財産という扱いになっていたらしい。
だから、Pちゃんは僕の家に連れ帰る義務があり、もしも家から追い出したら(追い出す気はないけど)不法投棄になって僕が法的に罰せられるらしい。
とは言っても、このままPちゃんも同居してはミールとうまくやっていけそうにないし……
困った末に芽依ちゃんにお願いして、Pちゃんの虫除けプログラムからミールを除外してもらうことになったのだが、交換条件として僕の三次元データを芽依ちゃんに提供する事になった。
芽依ちゃんが僕の三次元データを何に使う気か分からないが……それはさておき……
「ミール。緊急事態が起きたので、今から出かける。すまないがいつ帰れるかは分からない」
「あたしも、一緒に行ってはいけないのですか?」
「ごめん。それはできない」
「それでは仕方ないですね」
聞き分けがいいな。助かるけど……
「ご主人様。お急ぎ下さい。お迎えの車が来ています」
ドアのところから声をかけてきたPちゃんの方へ、ミールは振り向く。
「まさかと思いますが、あたしは連れていけないのにPちゃんは一緒に行くという事はないでしょうね?」
「まさか。私はご主人様の私有財産です。この家に残りますよ」
「本当ですか?」
「ミールさん。ロボットは嘘をつきません」
「今、嘘を付かないという嘘をつきました」
頭痛が痛い。虫除けプログラムが無くても、結局こいつらケンカするのか。
「とにかく、ミールさん。私本人はここに残ります。私は……だから、ミールさんも……」
ん? なんか引っかかる言い方だな。
「なるほど、そうですね。では、あたし本人もここに残ります。あたし本人は……」
ん? ん? ん?
「ミール。Pちゃん。二人ともなんか企んでない?」
「そんな事ないですよ。さあ、カイトさん。鞄をどうぞ」
「ああ、ありがとう」
何気なく、ミールの差し出した鞄を受け取った。
「ささ。ご主人様。お迎えの車が待っていますので、お急ぎ下さい」
二人から背中を押されるようにして僕は家を出た。
過去には、知的生命体同士で争いが起きた事もあったが、いつしか争いを防止するための条約が定められた。
その条約の中に、未発達知的生命体を保護する条項がある。
日本語に翻訳すると「如何なる知的生命体であれ、その存在が確認された恒星系は、その生命体の領域と認定し、何人たりともその領域を犯してはならない」と言った内容になる」
そこまで話したところで、仮想空間で僕に銀河法の講義を行っていた講師の話がピタッと止まった。
ちなみに講師のアバターは、半人半馬のタウリ族の姿をしている。
しかし、いったいどうしたのだろう?
今まで僕は、仮想空間で研修中だったが、今は時間が止まったかのように僕以外のすべてが静止している。
突然目の前に、メッセージ画面が現れた。
『仮想空間を強制終了します』
直後に僕は闇に包まれる。
仮想空間と僕の脳をつないでいるBMI (ブレイン・マシン・インターフェイス)の接続が断たれた事により、一時的に僕の五感がなくなったためだ。
しかし、いったい何があったのだ?
研修はもう少し続くはずだったのに……
程なくして僕の五感は戻ってくる。
おもむろに目を開くと、そこはリトル東京で僕に与えられた家の一室。
VRルームと呼ばれるこの部屋は、BMIを内蔵したリクライニングチェアがある以外は何も調度品のない簡素な狭い部屋だが、その壁は外部からのあらゆる攻撃を防いでくれる頑丈な素材でできている。
BMI使用中の人は無防備状態になるため、このような部屋が必要となるのだ。
部屋の鍵は内部からしか開けないが、僕に万が一の事があった場合は……
「ご主人様、お帰りなさいませ」
万が一の場合に備えて、Pちゃんが室内に待機していてくれていた。
「Pちゃん。何があった?」
「森田指令から、緊急呼び出しです。至急第二作戦会議室に出頭せよと」
「緊急呼び出し? 何があったのだ?」
「それに関してはデータがありません」
直接話したいという事か。
しかし、いったい何があったのだろう?
帝国軍もここしばらく大人しかったし……まあ、暴れようにも戦力が枯渇した今の帝国軍に、リトル東京やカルカを相手に事を構える力はないはずだ。
僕はVRルームを出ると、素早くシャワーを済ませ、防衛隊の制服に着替えてからリビングに向かった。
「あら? カイトさん。研修はもう終わったのですか?」
リビングに行くと、ミールが手紙を書いている所だった。
ミケ村に残してきた家族に、こちらの近況を伝える手紙を書くと、今朝会ったとき言っていたが……
ちなみに僕とミールは、リトル東京に着いてからすぐにこの家で同居するようになった。
今は同棲生活のようなものだが、戦争が終わったら彼女と……おおっと! いかん! これを言ったら死亡フラグが立つんだったな。
ただ、困ったのはPちゃんの扱いだ。
ロボットスーツやプリンターは防衛隊の装備品なので、Pちゃんもてっきりそうだと思っていた。
だから、Pちゃんには防衛隊の基地に待機してもらおうと思っていたのだが、実はPちゃんだけは僕の私有財産という扱いになっていたらしい。
だから、Pちゃんは僕の家に連れ帰る義務があり、もしも家から追い出したら(追い出す気はないけど)不法投棄になって僕が法的に罰せられるらしい。
とは言っても、このままPちゃんも同居してはミールとうまくやっていけそうにないし……
困った末に芽依ちゃんにお願いして、Pちゃんの虫除けプログラムからミールを除外してもらうことになったのだが、交換条件として僕の三次元データを芽依ちゃんに提供する事になった。
芽依ちゃんが僕の三次元データを何に使う気か分からないが……それはさておき……
「ミール。緊急事態が起きたので、今から出かける。すまないがいつ帰れるかは分からない」
「あたしも、一緒に行ってはいけないのですか?」
「ごめん。それはできない」
「それでは仕方ないですね」
聞き分けがいいな。助かるけど……
「ご主人様。お急ぎ下さい。お迎えの車が来ています」
ドアのところから声をかけてきたPちゃんの方へ、ミールは振り向く。
「まさかと思いますが、あたしは連れていけないのにPちゃんは一緒に行くという事はないでしょうね?」
「まさか。私はご主人様の私有財産です。この家に残りますよ」
「本当ですか?」
「ミールさん。ロボットは嘘をつきません」
「今、嘘を付かないという嘘をつきました」
頭痛が痛い。虫除けプログラムが無くても、結局こいつらケンカするのか。
「とにかく、ミールさん。私本人はここに残ります。私は……だから、ミールさんも……」
ん? なんか引っかかる言い方だな。
「なるほど、そうですね。では、あたし本人もここに残ります。あたし本人は……」
ん? ん? ん?
「ミール。Pちゃん。二人ともなんか企んでない?」
「そんな事ないですよ。さあ、カイトさん。鞄をどうぞ」
「ああ、ありがとう」
何気なく、ミールの差し出した鞄を受け取った。
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二人から背中を押されるようにして僕は家を出た。
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