789 / 842
第十六章
監視者任務(矢部の事情)
しおりを挟む
矢部の話を聞き終わってから、スーホは満足気に頷いた。
「どうやら、私の想像は当たっていたようだ」
「どういう事です?」
「君は《天竜》と《いさな》が、この惑星に送り込まれた理由を知っているかい?」
「それは、入植という事でしたが、この惑星に知的生命体がいる事が分かったので、それは取りやめになったと……」
「入植は、おそらく表向きの理由だよ」
「表向き? 何か裏があるのですか?」
「銀河共同体に加入した種族には、ある義務が課せられる。《いさな》と《天竜》は、その義務を履行するために送り込まれた船だと私は推測しているのだよ」
「義務? なんの義務です?」
「未発達知的生命体の保護と監視だ」
「保護と監視?」
「銀河のルールでは如何なる知的生命体であれ、その存在が確認された恒星系は、その生命体の領域と認定し、何人たりともその領域を犯してはならないと定められている」
「ようするに、侵略は禁止ということですか?」
「その通り。しかし、銀河は広い。侵略が行われても、銀河共同体がそれを察知するのは難しい。そこで未発達な知的生命体が存在する惑星には、銀河共同体から派遣された監視者を常在させる事になった」
「ああ。つまり、侵略を企む悪い宇宙人がやって来たら、監視者が正義の味方に変身してやっつけてくれるのですね」
矢部がこのような事を言ったのは、子供の頃にテレビで見ていた特撮ヒーローなどを思い浮かべたからであるが、そこまで地球文化に詳しくないスーホは些か困惑した。
「いや……変身はしないが……それに武力行使を行う事は滅多にないよ」
「え? やっつけないのですか?」
「まったくない事はないが、たいていの異星人は銀河共同体の監視者から、退去勧告を受けると引き上げていく。ちなみに地球にも、監視者が常在していたのだよ」
「え? いたのですか?」
「そして、この惑星では私たちタウリ族が監視者だったのだ」
「へえ、そうだったのですか」
「矢部よ。人事のように言っているが、この惑星の担当は今後我々から、君たち地球人が引き継ぐ事になっているのだよ」
「え? そんな話聞かされていませんよ」
「聞いていないのか? いや、君は銀河共同体のことすら聞かされていなかったのだから当然だな。そうなると、私の推測が間違っていて《天竜》と《いさな》は本当に入植が目的だったのか、あるいは……なんらかの事情があって《天竜》と《いさな》の上層部は監視者任務引継の件を秘匿している可能性があるな」
「秘匿? 俺たち下っぱには本当の事は隠していると? しかし、なんのために? 別に悪いことをしているわけでは無いのだから隠す必要はないのでは?」
「いや、監視者の存在あるいは任務などは、可能な限り現地知性体に知られてはならない事になっているのだよ。《天竜》と《いさな》からはかなり多くの人間が降りてきたが、全員に守秘義務を課すよりも、知らせないままにしておいた方がよいと判断したのかもしれない」
「心外だな。俺が秘密を漏らすとでも……いや、俺の場合ハニトラにかかったら、絶対に秘密を漏らすな」
矢部は自分のことがよく分かっているようである。
「どうやら、私の想像は当たっていたようだ」
「どういう事です?」
「君は《天竜》と《いさな》が、この惑星に送り込まれた理由を知っているかい?」
「それは、入植という事でしたが、この惑星に知的生命体がいる事が分かったので、それは取りやめになったと……」
「入植は、おそらく表向きの理由だよ」
「表向き? 何か裏があるのですか?」
「銀河共同体に加入した種族には、ある義務が課せられる。《いさな》と《天竜》は、その義務を履行するために送り込まれた船だと私は推測しているのだよ」
「義務? なんの義務です?」
「未発達知的生命体の保護と監視だ」
「保護と監視?」
「銀河のルールでは如何なる知的生命体であれ、その存在が確認された恒星系は、その生命体の領域と認定し、何人たりともその領域を犯してはならないと定められている」
「ようするに、侵略は禁止ということですか?」
「その通り。しかし、銀河は広い。侵略が行われても、銀河共同体がそれを察知するのは難しい。そこで未発達な知的生命体が存在する惑星には、銀河共同体から派遣された監視者を常在させる事になった」
「ああ。つまり、侵略を企む悪い宇宙人がやって来たら、監視者が正義の味方に変身してやっつけてくれるのですね」
矢部がこのような事を言ったのは、子供の頃にテレビで見ていた特撮ヒーローなどを思い浮かべたからであるが、そこまで地球文化に詳しくないスーホは些か困惑した。
「いや……変身はしないが……それに武力行使を行う事は滅多にないよ」
「え? やっつけないのですか?」
「まったくない事はないが、たいていの異星人は銀河共同体の監視者から、退去勧告を受けると引き上げていく。ちなみに地球にも、監視者が常在していたのだよ」
「え? いたのですか?」
「そして、この惑星では私たちタウリ族が監視者だったのだ」
「へえ、そうだったのですか」
「矢部よ。人事のように言っているが、この惑星の担当は今後我々から、君たち地球人が引き継ぐ事になっているのだよ」
「え? そんな話聞かされていませんよ」
「聞いていないのか? いや、君は銀河共同体のことすら聞かされていなかったのだから当然だな。そうなると、私の推測が間違っていて《天竜》と《いさな》は本当に入植が目的だったのか、あるいは……なんらかの事情があって《天竜》と《いさな》の上層部は監視者任務引継の件を秘匿している可能性があるな」
「秘匿? 俺たち下っぱには本当の事は隠していると? しかし、なんのために? 別に悪いことをしているわけでは無いのだから隠す必要はないのでは?」
「いや、監視者の存在あるいは任務などは、可能な限り現地知性体に知られてはならない事になっているのだよ。《天竜》と《いさな》からはかなり多くの人間が降りてきたが、全員に守秘義務を課すよりも、知らせないままにしておいた方がよいと判断したのかもしれない」
「心外だな。俺が秘密を漏らすとでも……いや、俺の場合ハニトラにかかったら、絶対に秘密を漏らすな」
矢部は自分のことがよく分かっているようである。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる