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第十六章

菊花出撃

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 紫雲からの映像によると、今の攻撃で時空穿孔機には損害は無かったが、帝国兵にかなりの死傷者が出ていた。

 しばらくは死傷者の搬送に忙しくて、このワームホールは使えないだろう。

 時空穿孔機に、新たな動きがあったのはその時。

 別の場所に、ワームホールを開こうとしているのか?

 今度は、いったいどこに?

 紫雲からの映像を消して、《海龍》司令塔に視線を向けると、またイリーナがミーチャの首を押さえつけている。

「やだ! やめて!」
「いいから、こっちへ顔を向けなさい!」
「だめ! これ以上、みんなに迷惑をかけられない!」

 イリーナに無理矢理向けさせられたミーチャの視線の先は? 《海龍》艦首前方!

 艦首前方三百メートル付近に、新たなワームホールが開いた。

 まずい! あそこからドローンが出てきたら、主砲の陰に隠れているミールたちは背後を突かれる。

 くそ! 司令塔のワームホールは後にして、先にあっちを攻撃に……

『ご主人様。お待たせしました』

 突然、通信機からPちゃんの声が流れ出た。

「Pちゃん! どうやって通信を回復した?」
『魚雷発射管から、フローティング アンテナを射出しました。感度良好です。命令をどうぞ』
「Pちゃん。艦首前方三百メートル付近に、新たなワームホールが出現した。おそらく、ドローンを出してくるはず。ドローンが出てきたら、主砲で迎撃を。それと、カタパルト上の菊花は動かせるかい?」
『お茶の子さいさいでーす』
「では、主砲射撃後。菊花を発進させてくれ。主砲で撃ち漏らしたドローンは、菊花で叩くんだ」
『らじゃりました!』

 なんだ? 『らじゃりました』って返事は?

 などという思いが脳裏を過ぎった時、ワームホールからドローンが出てきた。

 ドローンの種別を確認する暇もなく、その前方で対空誘導砲弾が炸裂。《海龍》の主砲だな。

 ドローンは木っ端微塵に吹っ飛ぶ。

『主砲による迎撃成功。続いて菊花発進します』

 電磁カタパルトから打ち出された菊花は、力強く蒼空へと舞い上がっていく。

 同時にワームホールから新たなドローンが出現。

 数は六機。形状から見て、狙撃スナイパードローンだ。

『甘いです。地上攻撃用の狙撃スナイパードローンなんて、要撃ジェットドローン菊花の敵ではありません。みんなまとめて、お空の塵に変えてさし上げます。ミサイル全弾発射!!』 

 菊花から、四発の空対空ミサイルを発射。

 ドローン群の中に、吸い込まれるように向かっていく。

 空中に四つの火球が現れた。

 生き残った二機のドローンに向かい、菊花は猛然と向かっていく。

 敵のドローンは対物アンチマテリアルライフルを撃ってくるが……

『そんな物、当たらなければどうという事ありません。バルカン砲を召し上がりあそばせ』

 二機のドローンの間を、菊花が猛スピードで通り過ぎる。

 その直後、二機の敵ドローンは黒煙を吹きながら落ちていった。

 これで、敵のドローンは全滅。

 しかし、紫雲から送られてくる映像を見ると、地下施設では次のドローンを用意している。

 ドローンのタイプはさっきと同じだが、作業員が対物アンチマテリアルライフルをドローンから取り外してバルカン砲と交換していた。

 菊花はすでにミサイルを撃ち尽くしているし、あれが出てきたらやっかいだな。

 通信機でレイホーを呼び出す。

「レイホー。そっちに使えるドローンはあるか?」
『そうくると思って、カタパルトにゼロをセットしておいたね。もちろん空対空ミサイル四発装備』
「おお! それはありがたい」
『それと、ドローン用のミサイルと弾薬もあるから、菊花を《水龍》に降ろしてくれれば補給できるね』
「助かる。ありがとう、レイホー」
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