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第十六章
コンテナ
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芽依ちゃんが《海龍》の甲板に降りると、カルルは再び口を開いた。
「森田芽依。そのコンテナはなんだ?」
「カルル・エステスさん。あなたに、それを教えるとでも思っているのですか?」
「ふん! 大方、そのコンテナの中にミクを隠そうという魂胆だろう」
そいつはどうかな。
芽依ちゃんはカルルの質問には答えず、コンテナにかかっていたブルーシートを引っ剥がして甲板上に放り投げた。
そのまま黙々と、コンテナを甲板上に溶接する。
「なるほど。コンテナごと持って行かれないように、溶接するのか。だが、無駄だ。それならコンテナの壁をぶち破って、ミクを連れ去るまでのこと」
コンテナはカルルから見て、主砲の陰になる位置に置いたのだが、それでも完全に隠しきれなくて溶接している様子が見えてしまっている。
溶接を終えた芽依ちゃんは、カルルの方を振り向いた。
「壁をぶち破ると言いましたね。無理ですよ。このコンテナは頑丈にできています。スパイダーの力では壊せません」
「ふん。確かに、スパイダーでは無理そうだな」
橋本晶の充電量が三十%に達したのはこの時……
「隊長。私も行きます」
「待ってくれ。橋本君。もうしばらく待機していてくれ」
「なぜでしょう?」
「もう少ししたら、ミールの分身体が消える。カルルが仕掛けてくるとしたらその時だ。ギリギリまでチャージをしてから行ってくれ」
「なるほど。途中で電池切れになっては、元も子もありませんね。了解しました」
そのまま数分間にらみ合いが続いた。
カルルが沈黙を破ったのは、ミールの分身体が時間切れになる二分前。
「さっき、俺は『今すぐミクを引き渡すなら、ミーチャ・アリエフ君を解放する』と言ったな。それはつまり、時間をかけすぎると解放は不可能になるという意味だ」
それにキラが反応する。
「それは、いったいどういう意味だ!?」
「気になるか。キラ・ガルキナ。簡単な事だ。正直言って、俺という接続者が来た以上、ミーチャ・アリエフ君を捕らえておく必要はなくなったのだ。今すぐ解放してやってもいいのだが、もうすぐ、ここにマルガリータ姫がやってくる。そうなると、姫は嬉々としてこの坊やを連れ去るだろう」
キラを引き離すのは簡単と言ったのは、ミーチャを餌にするという考えか。
まあ、ミーチャ大好きのキラなら、その手にかかって持ち場を離れる可能性もあるが……
「それなら、なぜマルガリータ様は最初から出てこない?」
キラの質問に、カルルは顔をしかめて返答する。
「あの人に来られてもウザいだけなので、できれば来てほしくないのだよ。分かるだろ?」
「うむ。それは理解できる」
理解できるのか? キラ。
僕にはよく分からないが、帝国側の人間にとってマルガリータ姫は、関わりたくない人物という共通認識があるようだ。
「だから、すぐには来られないように姫のスパイダーは整備をわざと遅らせてある。できれば、姫が出てくる前に作戦を終了させたかったが、無理のようだな。そろそろ時間切れだ。まもなくワームホールから姫が出てくるぞ」
その時、ミーチャが悲しげな声で尋ねてきた。
「カルル・エステスさん。今、言った事はどういう事です?」
「ん? なんの事だ?」
「僕を捕らえておく必要がなくなったって……僕は……接続者なのですか? 僕の目の前に、ワームホールが開くのは接続者だからなのですか?」
まずい!
「ああ、そうだが。まだ、知らなかったのか?」
カルルめ! 余計な事を……
「そんな! 僕は……みなさんに……迷惑をかけていたのですね」
くそ! ミーチャが知らないうちに、接続を断ってやりたかったのに……
緑色のスパイダーが、ワームホールから出現したのはその時だった。
「森田芽依。そのコンテナはなんだ?」
「カルル・エステスさん。あなたに、それを教えるとでも思っているのですか?」
「ふん! 大方、そのコンテナの中にミクを隠そうという魂胆だろう」
そいつはどうかな。
芽依ちゃんはカルルの質問には答えず、コンテナにかかっていたブルーシートを引っ剥がして甲板上に放り投げた。
そのまま黙々と、コンテナを甲板上に溶接する。
「なるほど。コンテナごと持って行かれないように、溶接するのか。だが、無駄だ。それならコンテナの壁をぶち破って、ミクを連れ去るまでのこと」
コンテナはカルルから見て、主砲の陰になる位置に置いたのだが、それでも完全に隠しきれなくて溶接している様子が見えてしまっている。
溶接を終えた芽依ちゃんは、カルルの方を振り向いた。
「壁をぶち破ると言いましたね。無理ですよ。このコンテナは頑丈にできています。スパイダーの力では壊せません」
「ふん。確かに、スパイダーでは無理そうだな」
橋本晶の充電量が三十%に達したのはこの時……
「隊長。私も行きます」
「待ってくれ。橋本君。もうしばらく待機していてくれ」
「なぜでしょう?」
「もう少ししたら、ミールの分身体が消える。カルルが仕掛けてくるとしたらその時だ。ギリギリまでチャージをしてから行ってくれ」
「なるほど。途中で電池切れになっては、元も子もありませんね。了解しました」
そのまま数分間にらみ合いが続いた。
カルルが沈黙を破ったのは、ミールの分身体が時間切れになる二分前。
「さっき、俺は『今すぐミクを引き渡すなら、ミーチャ・アリエフ君を解放する』と言ったな。それはつまり、時間をかけすぎると解放は不可能になるという意味だ」
それにキラが反応する。
「それは、いったいどういう意味だ!?」
「気になるか。キラ・ガルキナ。簡単な事だ。正直言って、俺という接続者が来た以上、ミーチャ・アリエフ君を捕らえておく必要はなくなったのだ。今すぐ解放してやってもいいのだが、もうすぐ、ここにマルガリータ姫がやってくる。そうなると、姫は嬉々としてこの坊やを連れ去るだろう」
キラを引き離すのは簡単と言ったのは、ミーチャを餌にするという考えか。
まあ、ミーチャ大好きのキラなら、その手にかかって持ち場を離れる可能性もあるが……
「それなら、なぜマルガリータ様は最初から出てこない?」
キラの質問に、カルルは顔をしかめて返答する。
「あの人に来られてもウザいだけなので、できれば来てほしくないのだよ。分かるだろ?」
「うむ。それは理解できる」
理解できるのか? キラ。
僕にはよく分からないが、帝国側の人間にとってマルガリータ姫は、関わりたくない人物という共通認識があるようだ。
「だから、すぐには来られないように姫のスパイダーは整備をわざと遅らせてある。できれば、姫が出てくる前に作戦を終了させたかったが、無理のようだな。そろそろ時間切れだ。まもなくワームホールから姫が出てくるぞ」
その時、ミーチャが悲しげな声で尋ねてきた。
「カルル・エステスさん。今、言った事はどういう事です?」
「ん? なんの事だ?」
「僕を捕らえておく必要がなくなったって……僕は……接続者なのですか? 僕の目の前に、ワームホールが開くのは接続者だからなのですか?」
まずい!
「ああ、そうだが。まだ、知らなかったのか?」
カルルめ! 余計な事を……
「そんな! 僕は……みなさんに……迷惑をかけていたのですね」
くそ! ミーチャが知らないうちに、接続を断ってやりたかったのに……
緑色のスパイダーが、ワームホールから出現したのはその時だった。
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