744 / 850
第十六章
最後のカートリッジ
しおりを挟む
カツーン! カツーン!
甲高い足音を立てて、エラは放射状通路を進んでいく。
やがて、放射状通路と最外郭環状通路が交わる丁字路でエラは立ち止まった。
そこの壁にある大きな扉をエラは指さす。
『カイト・キタムラ。この中に、おまえの欲する物があるそうだ』
僕の欲する物?
という事は、この中に最後のレアメタルカートリッジが……
『私は、おまえの手からここを守るように命令されていた。だが……この命令は、どうも気に入らない』
「何が、気に入らないと言うのだ?」
『私に付けられた部下は、二十歳ぐらいの青年兵八名と十二~三歳の少年兵が十五名。装備は自動小銃のみ。おまえが本気で攻めてきたら、私に勝ち目などないのは明白だ。私は、捨て駒にされたような気がするのだ』
実際にそうだからな。レム神は、こいつを粛正するつもりだし……
『何より兵士たちは、どう見ても精鋭ではない。少年兵も青年兵も美形揃いではあるが、戦闘訓練などほとんど受けていない者ばかり。特に少年兵は、実戦で役に立つような兵士ではない。おそらく、私が変な気を起こさないようにと、慰み者として送られてきたのだろう』
その推測は正しい。というか、エラの慰み者にする以外に、少年兵を送り込む理由がないだろうな。
しかし……
「少年兵たちは、さっき戦っていたではないか?」
『確かに戦っていた。だが、最初のうち、少年兵たちは銃の扱い方もろくに分かっていなかった。だから、おまえが来るまでの間に電撃で拷問して、無理矢理銃を覚えさせた』
ひでえ……
『青年兵はそれなりに戦えるようだが、シロートに毛が生えた程度だ。それより気に入らないのは、こいつらは全員が同じ顔をしていること』
「全員美形という事だろう。何が、不満なのだ?」
『う! 確かに私好みの美形である事は認めるが……それで、ここに来てからしばらくの間は美少年、美青年に囲まれた状況を楽しんではいたが……』
楽しんでいたんだ。
『青年兵たちが同じ顔をしているという事は、私と同じく同時複数再生されたコピー人間の可能性がある。もしそうなら、私と同じくシンクロする能力があるはず。奴らはその能力を使って、私を監視するために送り込まれたと推測したのだが』
「その推測は、少し訂正がある」
『なに?』
「彼らはコピー人間ではない。ある人物のクローン人間だ。……て、クローン人間って分かるか?」
『ああ、だいたい分かる。しかし、ある人物とは誰だ?』
「話すと長くなるのだが、あんたはレム神の正体を知っているのか?」
『私はオリジナル体の頃から、神など崇めていなかったが、レム神という存在が実在している事は知っている。そいつが何らかのトリックで、一部の人間を思い通りに操っている事も。だが、正体までは知らん』
「そうか。簡単に言うなら、レム神は元々レム・ベルキナという人間だった。今はコンピューターの中にいる精神生命体だ」
『まあ、そんなところだと思っていた』
「そして、ここにいた青年兵たちはレム・ベルキナのクローン人間で、レム神のコントロール下にある。彼らが、あんたを監視していたというのは間違いではない」
『つまり、レム神のクローンという事か?』
「若干違うが、外れてはいない。それで、あんたが僕に見せたい物とは、この倉庫の事か?」
『いや。私が見てもらいたい物とは、この先にある怪しげな装置だ。おまえなら、それが何か分かるのではないのか?』
「怪しげな装置だと?」
『そうだ。私の勘だが、どうもこの装置が私の監視に使われている気がしていた。そこで、少年兵たちに反乱を起こさせて、その隙に私が装置を破壊したのだ』
まさか?
「青年兵たちが突然倒れたのは、その装置を破壊した直後じゃないのか?」
『ん? 言われてみれば、時間的に合っているな。それが分かるという事は、おまえはやはりあれに心当たりがあるのか?』
「心当たりはある。装置を見せてくれ」
『分かった。付いてこい』
そう言って、エラは再び環状通路を歩き出した。
エラに案内されて着いた場所はエレベーターホール。
半開きの扉から、シャフト内に入った。
そこでは、人一人入れる大きさのカプセルが黒こげになって破壊されている。
カプセルの中には、やはり黒こげになった人の死体が……
そのカプセルからケーブルで繋がっている黒い立方体はBMI。
やはり、ここにもプシトロンパルスの中継機があったのか。
甲高い足音を立てて、エラは放射状通路を進んでいく。
やがて、放射状通路と最外郭環状通路が交わる丁字路でエラは立ち止まった。
そこの壁にある大きな扉をエラは指さす。
『カイト・キタムラ。この中に、おまえの欲する物があるそうだ』
僕の欲する物?
という事は、この中に最後のレアメタルカートリッジが……
『私は、おまえの手からここを守るように命令されていた。だが……この命令は、どうも気に入らない』
「何が、気に入らないと言うのだ?」
『私に付けられた部下は、二十歳ぐらいの青年兵八名と十二~三歳の少年兵が十五名。装備は自動小銃のみ。おまえが本気で攻めてきたら、私に勝ち目などないのは明白だ。私は、捨て駒にされたような気がするのだ』
実際にそうだからな。レム神は、こいつを粛正するつもりだし……
『何より兵士たちは、どう見ても精鋭ではない。少年兵も青年兵も美形揃いではあるが、戦闘訓練などほとんど受けていない者ばかり。特に少年兵は、実戦で役に立つような兵士ではない。おそらく、私が変な気を起こさないようにと、慰み者として送られてきたのだろう』
その推測は正しい。というか、エラの慰み者にする以外に、少年兵を送り込む理由がないだろうな。
しかし……
「少年兵たちは、さっき戦っていたではないか?」
『確かに戦っていた。だが、最初のうち、少年兵たちは銃の扱い方もろくに分かっていなかった。だから、おまえが来るまでの間に電撃で拷問して、無理矢理銃を覚えさせた』
ひでえ……
『青年兵はそれなりに戦えるようだが、シロートに毛が生えた程度だ。それより気に入らないのは、こいつらは全員が同じ顔をしていること』
「全員美形という事だろう。何が、不満なのだ?」
『う! 確かに私好みの美形である事は認めるが……それで、ここに来てからしばらくの間は美少年、美青年に囲まれた状況を楽しんではいたが……』
楽しんでいたんだ。
『青年兵たちが同じ顔をしているという事は、私と同じく同時複数再生されたコピー人間の可能性がある。もしそうなら、私と同じくシンクロする能力があるはず。奴らはその能力を使って、私を監視するために送り込まれたと推測したのだが』
「その推測は、少し訂正がある」
『なに?』
「彼らはコピー人間ではない。ある人物のクローン人間だ。……て、クローン人間って分かるか?」
『ああ、だいたい分かる。しかし、ある人物とは誰だ?』
「話すと長くなるのだが、あんたはレム神の正体を知っているのか?」
『私はオリジナル体の頃から、神など崇めていなかったが、レム神という存在が実在している事は知っている。そいつが何らかのトリックで、一部の人間を思い通りに操っている事も。だが、正体までは知らん』
「そうか。簡単に言うなら、レム神は元々レム・ベルキナという人間だった。今はコンピューターの中にいる精神生命体だ」
『まあ、そんなところだと思っていた』
「そして、ここにいた青年兵たちはレム・ベルキナのクローン人間で、レム神のコントロール下にある。彼らが、あんたを監視していたというのは間違いではない」
『つまり、レム神のクローンという事か?』
「若干違うが、外れてはいない。それで、あんたが僕に見せたい物とは、この倉庫の事か?」
『いや。私が見てもらいたい物とは、この先にある怪しげな装置だ。おまえなら、それが何か分かるのではないのか?』
「怪しげな装置だと?」
『そうだ。私の勘だが、どうもこの装置が私の監視に使われている気がしていた。そこで、少年兵たちに反乱を起こさせて、その隙に私が装置を破壊したのだ』
まさか?
「青年兵たちが突然倒れたのは、その装置を破壊した直後じゃないのか?」
『ん? 言われてみれば、時間的に合っているな。それが分かるという事は、おまえはやはりあれに心当たりがあるのか?』
「心当たりはある。装置を見せてくれ」
『分かった。付いてこい』
そう言って、エラは再び環状通路を歩き出した。
エラに案内されて着いた場所はエレベーターホール。
半開きの扉から、シャフト内に入った。
そこでは、人一人入れる大きさのカプセルが黒こげになって破壊されている。
カプセルの中には、やはり黒こげになった人の死体が……
そのカプセルからケーブルで繋がっている黒い立方体はBMI。
やはり、ここにもプシトロンパルスの中継機があったのか。
0
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話
六剣
恋愛
社会人の鳳健吾(おおとりけんご)と高校生の鮫島凛香(さめじまりんか)はアパートのお隣同士だった。
兄貴気質であるケンゴはシングルマザーで常に働きに出ているリンカの母親に代わってよく彼女の面倒を見ていた。
リンカが中学生になった頃、ケンゴは海外に転勤してしまい、三年の月日が流れる。
三年ぶりに日本のアパートに戻って来たケンゴに対してリンカは、
「なんだ。帰ってきたんだ」
と、嫌悪な様子で接するのだった。
おっさん、異世界でスローライフはじめます 〜猫耳少女とふしぎな毎日〜
桃源 華
ファンタジー
50代のサラリーマンおっさんが異世界に転生し、少年の姿で新たな人生を歩む。転生先で、猫耳の獣人・ミュリと共にスパイス商人として活躍。マーケティングスキルと過去の経験を駆使して、王宮での料理対決や街の発展に挑み、仲間たちとの絆を深めながら成長していくファンタジー冒険譚。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる