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第六章

角のある赤いロボットスーツ 速度はもちろん通常の三倍

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 ボキ!

 兵士の振り下ろした刃は、ヘルメットに当たってあっさりと折れる。
「ブースト!」
 兵士は、パンチ一発で吹っ飛んでいった。
「いたぞ!」「あそこだ!」
 通路の角から、兵士たちがワラワラと出てくる。
 
 面倒だな。

 一人ずつ殴り倒すか? ショットガンで一気に片付けるか?

「君たち、ここは引きたまえ」
 
 ん? 赤い重厚な鎧を纏った戦士が、廊下の奥からやってくる。

 ズシリ、ズシリと音を立てて……

 あれは、帝国兵の鎧じゃない。
 まさか、ロボットスーツ?

 隊長らしき男が振り向く。
「エステス殿。しかし……」

 エステス? 中の人はカルル・エステスなのか?

「引くのだ。この男は、君たちの勝てる相手ではない」
「いや……しかし……」
「ネクラーソフ将軍の許しも得ている」
「せめて、援護を……」
「いらぬ。むしろ君たちに、ここにいられては足手まといだ」
 隊長は、しぶしぶ納得したようだ。
「総員撤退」
 隊長の命令で、兵士たちが後退していく。
「カルル・エステスか?」
 カルルは、角のような突起のついているヘルメットのバイザーを開き、顔を見せた。
「こうして、直接会うのは初めてだな。北村海斗」
 僕もバイザーを開いて顔を見せた。
「できれば、会いたくなかったな」
「そう嫌うなよ」
「その鎧は?」
「ロボットスーツを持っているのは、お前だけではないという事だ」
「やはりロボットスーツか。僕のとは、少し仕様が違うみたいだけど」
「リトル東京では、俺にロボットスーツは支給されなかった。これは、俺がリトル東京から持ち出したカートリッジを使って、帝国のプリンターで作ったものだ」

 持ち出した? ようするに盗んだって事だろ。

「帝国のコンピューターに、ロボットスーツのデータがあったの?」
「あった。ただし日本製ではない。これは、日本のロボットスーツを参考に、隣国で開発された物だ」
「隣国で?」
「お前は、生データから作られたから知るまい。俺達のデータが取られた後、日本と隣国との間で紛争があった」

 そういえば、Pちゃんがそんな事を言っていたな。

「その紛争で、ロボットスーツが実戦投入された。紛争を戦争に発展させないため、なるべく相手の兵士を死なせない必要があったのでな。そこでロボットスーツを装備した自衛隊員に、非殺傷兵器を持たせて戦うなどという、とんでもない作戦が実行された。だが、自衛隊は見事にやり遂げて、死者を出さずに隣国に奪われた島を奪還した」
 僕はカルルを指差した。
「そのロボットスーツとの戦いの結果は?」
「これは実戦配備が間に合わなかった。だが、間に合っていたら、自衛隊は勝てなかったかもしれない」
「なんで?」
「さっきも言ったが、これは日本のロボットスーツを参考に開発された。当然スペックはそれを上回るものだ」
「どのぐらい?」
「パワーもスピードもお前の三倍。北村海斗。お前に、勝ち目はない」
「一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「それを装着するのって、今日が初めてか?」
「そうだが」
「悪いことは言わない。そのスーツは、使わない方が身のためだぞ」
「ふん。怖気づくあまり、そんな嘘を」

 いや、嘘じゃなくてマジにそれ使うとヤバイんだけどな……

「どうだ。降伏するなら今のうちだぞ」
「降伏する必然性を、まったく感じないのだけど」
「ふん。ならば必然性を、覚えさせてやる」 
 カルルは床に開いてる穴に視線を向けた。
「小さな穴だな」

 え? こいつ、何を考えて……

「お前の力ではこの程度か? 俺なら、もっと大きな穴があけられるぜ」
「バカ! よせ」
 止める間もなく、カルルは床に拳を叩きつけた。
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