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第六章

殺人マシーン

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 城内に入って、いくらもいかないうちに、敵と遭遇した。
 ボーガンを持った十五人ほどの部隊。
「何者だ!?」
 先頭の兵士が、ボーガンを僕に向けて誰何する。
「やあ……」
 軽く挨拶してみたが、それでは誤魔化せそうにはない。

 当たり前か……

 石壁に囲まれた狭い通路で、五人以上は横に並べない。
 兵士たちは、通路の幅いっぱいに広がり、一列五人三列に並び、まるで集合写真でも撮るかのように、最前列が屈み込み、二列目が中腰、三列目が直立して、十五本の矢を一斉に放てる態勢でいた。
 それにしてもボーガンを持っているという事は、いよいよ弾薬が無くなってきたか。
「何者かと聞いている。答えろ」
「ミールを取り返しに来た者だよ」
 正直に答えた。
 矢が一斉に飛んでくる。

 ひどいなあ、正直に答えているのに……

 まあ、撃たれたところで、磁性流体装甲リキッドアーマーに矢なんか通じないけどね。

 それにそうしてくれた方が、僕もやりやすくなって助かる。

 矢の雨を浴びながら、僕は徐に背中のショットガンを抜いた。
 そのまま、兵士たちに向けて連射。
 十五人の兵士は、たちまち挽き肉ミンチと化していく。
 返り血をかなり浴びてしまったが、あまり嫌悪感が沸いてこない。
 殺人への抵抗がドンドン無くなっていくようだ。
 ミールじゃないけど、暗黒面に墜ちるってこんな感じかな?
「カイトさん。こっちです」
 通路の分かれ道で、ミールの分身が右を指さしていた。
「カイトさん。気分は大丈夫ですか? あんなに殺して……」
 ミールは走りながら心配そうに言う
「最近、あまり抵抗を感じないんだ。よくない兆候だね。今の僕は、殺人マシーンだな」
 突然、ドアが開いて若い女性兵士が出てきた。
 女は一瞬、僕を見て驚愕の表情を浮かべる。
 驚いた顔が、なかなか可愛い。
 次の瞬間、彼女は抜刀してかかってきた。
 もちろん、ロボットスーツを装着した僕には脅威にならない。
 剣を叩き折り、一押しすると彼女は通路の隅に転がった。
「命を粗末にするな。隠れていろ」
 そう言って僕は走り去る。
「カイトさん」
 前を行くミールが、非難がましい声を出す。
「殺人マシーンになったのでは、なかったのですか?」
「時々、人間に戻るみたいなんだな。ははは……」
「都合のいい、殺人マシーンですね」
 
 ミールまで、Pちゃんみたいな事言うなよ。
 
 そのまま一階に辿り着くまでに、五回接敵。
 
 死体の山を築きながら、僕たちは突き進む。

 時折、遭遇する女性兵士は見逃すのだが、そのたびにミールの機嫌が悪化していった。

 いかん。早くしないと、ミールが暗黒面に堕ちてしまう。

「う!」
 前を走っていたミールの分身が頽れる。
「大丈夫か?」
「どうやら……時間切れのようです」
「え? あ! 足が……」
 分身の足が消えかかっている。
「ミール!」 
「カイトさん……その先……」
 通路の先を指差した。
「そこの床を叩いて下さい」
「分かった」
 言われた通り床を叩いた。
「もう少し先」
 さらに二メートル先の床を叩いた。
「もうちょい先」
 一メートル先の床を叩く。
「そこです。その真下に……あたしはいます」
「本当か」
「後は……頼みます」
 分身体が完全に消滅した。
 
 カラン!

 床の上にミールが憑代にしていた木札が転がる。

 よーし、待ってろよ。
「ブースト」
 床が少しへこんだ。
 さらにパンチを叩き込む。
 慎重に……
 力を入れ過ぎないように……
 スピードは速く……
 力が広範囲に広がり過ぎると床全体が崩れてしまう。
 一か所に力が集中するように、経絡秘孔を……いやいや床を撃つべし!
「あたたたたたた!」

 ボコ!
 
 ようやく穴が開いた。 
「ミール! そこにいるのか?」
 床にうつ伏せになり、穴を覗きこんだ。
 ミールがこっちを見上げている。
「カイトさん! あたしは、ここです」
 穴から返事が返って来た。
「巾着を落としてください。それさえあれば、後は自力で出られます」
「分かった」
 巾着を穴から下に落とした。
「ありがとうございます。そこで待っていて下さい。下手に動くと道に迷います」
「分かった。待ってる」
 そう言って穴から顔を上げた僕の目に最初に入ったのは、剣を振り上げて今にも切りかかろうとしている兵士の姿だった。
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