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第六章

城内突入

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 兵士が構えた筒先からミサイルが放たれた。
 こっちも、同時に空対地ミサイル四発を放つ。
 ミサイルが、空中ですれ違う。
 残念だが、今回はVT信管の圏外。
 だけど、残念なのは向こうも同じ。
 こっちのミサイルは、四発とも真っ直ぐ射手に向かっている。
 スティンガーミサイルも、ドローンに向かってくる。

 避けられない。

『一号機ロスト』
 バイザーにメッセージが表示され、映像がブラックアウトした。
 二号機を、手動に切り替えた。
 二号機からの映像が表示される。
 まだ、二号機は雲を抜けたばかりだった。
 下の方では、八機の飛行船タイプが屋上をミサイルで攻撃している。
 城の屋上では、兵士たちが次々と火だるまになっていく。
 一方で、屋上から発射されるミサイルで、飛行船タイプも次々と落とされていた。
 時折、ベジドラゴンの落とす石が城に落ちる。
 しかし、肝心のレーザー砲はまだ健在。
 カルルが、他から電力を調達してきたらアウトだ。
 電源があればの話だが、ないとは言い切れない。
 一刻も早く潰さないと……
 飛行船タイプの残りも、三機にまで減っていた。
 だが、向こうのミサイルも残り少ないようだ。
 二号機を急降下させる。
 それに気が付いた兵士が、二号機にミサイルを向けた。
 火炎弾フレア射出。
 ミサイルは火炎弾フレアの熱源に騙されてコースをそれていく。
 別の兵士がミサイルを構える。
 もう火炎弾フレアはない。

 どうする?

 その時、突然落ちてきた石が、兵士を直撃してミサイルごと潰してくれた。
 射程距離に入った。
 レーザー砲をロックオン。
 ミサイル全弾発射!
 四発のミサイルが、吸い込まれるようにレーザー砲に命中する。
 レーザー砲は、炎に包まれた。
 敵の対空ミサイルも、尽きたようだ。
 兵士たちは消火もしないで、我先にと屋上から逃げ出した。
 二号機を自動操縦にして、僕はバイザーの映像を消す。
 横を見ると、エシャーが飛んでいる。
「エシャー。みんなに伝えてくれ。レーザーは潰した。もう大丈夫だ」
「分カッタ」
 エシャーから伝言を聞いたベジドラゴン達は、次々と雲に突入していく。
 僕が乗っているエシャーの父も雲に突入した。
 その後ろから、ルッコラが付いてくる。
 地表では、ベジドラゴン達が兵士目がけて石を投下していた。
 兵士たちも銃を撃ちかえしてくるが、やはり弾薬庫をやられたせいか銃撃の密度が薄い。
 時折、ナーモ族の姿を見かけると、ベジトラゴンは捕まえて城外へ連れ去って行った。
 ナーモ族は、なるべく巻き込みたくないからだ。

 乱戦の最中、僕とミールの分身は、城の屋上に降ろしてもらった。
 屋上ではまだ火が燻り、タンパク質の焦げる匂いが鼻腔を刺激する。
「ミール。今、本体の君はどこにいる?」
「戦いが始まってから、地下牢に閉じ込められてしまいました」
 地下か。
 だが、却ってその方が安全だな。
 ベジドラゴンの石爆撃の巻き添えを食わなくて済む。
「カイトさん。この分身は、もうあまり長く持ちません。これを、預かってもらっていいですか?」
 ミールから巾着袋を渡された。
「これは?」
「憑代と回復薬です。分身が消えてしまったら、カイトさんの手でこれを、あたしに渡して下さい」
「分かった」
 巾着を受け取ると、僕たちは城内へ突入した。
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