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第六章

攻撃開始

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 十個の光点が雨雲を抜けた直後、城から光の刃が伸びて雨雲の辺りを一薙ぎした。
「第一次攻撃隊消滅です」
 僕はPC画面に目を向けた。
 地下に潜入させたドローンからの映像。
 LNGタンクのメーターが映っている。
 メーターには、全く動きがない。
「ミール」
 ミールの分身に話しかけたが、呆けた表情をしていて反応がない。
 どうやら、向こうで手の離せない事があるようだ。
 しょうがない。
「Pちゃん。第二次攻撃を」
「了解でーす」
 レーダー画面で五つの光点が落下を開始する。
 それも雲を抜けた途端にレーザーで一薙ぎされて消滅した。
 もう一度、PC画面に目をやる。
 やはりメーターには、動きはない。
 つまり、この今現在タンクからガスが出ていないという事だ。
 昨日の朝、小型のドローンで何度か攻撃をかけた時、このメーターが動くのを確認した。
 つまり、カルルはレーザーのエネルギー源に、このタンクのガスを使っていたわけだ。
 おそらく、配管の一本が地表に出ていて、カルルはそれに発電機を接続したのだろう。
「カイトさん。今、呼びました?」
 ミールの分身に意識が戻っていた。
「ああ。ダモンさんには会えたかい?」
「はい。会えました」
 城の中で、ミールの待遇はそれほど悪くなかったらしい。
 ただし、自由行動は認められていなかった。
 ただ、ダモンさんとの面会は、頼めばさせてくれた。
 もちろん、監視付だ。
 昨日の朝、ミールは手料理の差し入れを理由に一度面会している。
 その料理の中にメモを入れておいた。
 そのメモの内容をダモンさんが実行してくれたか、確認が取れていない。
 もし、実行していなかったら、この作戦は失敗。
 だから、ミールにはもう一度確認のために料理を持っていってもらった。
「カイトさん。ばっちりです。ダモン様は、すべてのバルブを閉めてくれました」
 確認が取れた!
 LNGタンクからのガス供給は止まっている。
 今は、バッテリーに蓄えた電力だけで、レーザーを撃っているんだ。
「Pちゃん。レーザーが出なくなるまで連続攻撃」
「了解でーす」
 雲の上で待機して物が、次々と落下を開始した。
 ちなみに落下しているのは、ドローンではない。
 昨日、近くにあるナーモ族の村で作ってもらった小さな気球だ。
 その村では、以前から酒を詰めるための皮袋が作られていた。
 それを大量に買い付けて、針子さん達を雇い、完全に密閉できるように改造してもらい、水素を詰めて簡単な気球を作った。それに鉄屑を吊るしてレーダーに映るようにしたのだ。
 そして今朝、完成した気球を、城の上空までドローンで曳航してきたわけだ。
 百八の光点のうち、本物のドローンは八つだけ。
 他は、すべてデコイだ。

「ミール。僕達も行くぞ」
「はーい」
「Pちゃんは、ここでドローンのコントロールを頼む」
「了解です」
 本部はPちゃんに任せて、僕はミールの分身を連れて森の中へと駆け出した。
「ところで、キラにデコイ作りを手伝ってもらったけど、これは裏切りにはならないのかい?」
「キラは目的を知らないでやっていたから、これは大目に見る事にします」
 僕たちは森を抜けて、ベジドラゴンの待機している場所についた。
「もうすぐ、レーザーが撃てなくなる。そしたら攻撃を開始して下さい」
 僕の言葉をエシャーが訳して長老に伝えると、ベジドラゴンたちは一斉に羽ばたいて飛び立ち始めた。
 みんなそれぞれ、石を持っている。
 中には、僕の作った爆弾を持っている者も……
 僕はエシャーの父の背中に乗り、ミールの分身はルッコラに乗った。
 飛び立つとき、エシャーの父には、石の代わりにコンテナを持ってもらった。
 このコンテナは、作戦の第二段階で必要になる。
 エシャーは父に寄り添って飛んでいた。
 僕の言葉を、みんなに伝えるために……
 それなら僕がエシャーに乗った方が手っ取り早いのだが、フル装備のロボットスーツを装着した僕は、重くてエシャーに乗れない。
 群れは雲を抜けた。
 果てしない雲海の上を翼竜の群れは進軍していく。
 やがて、多数の気球が浮いているのが見えてきた。
 城は、あの真下だ。
 ミール待っていてくれ。
 必ず、助けにいくから。
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