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第六章

断る

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「断る」
『即答かよ。少しは考慮してくれても……』
「考える事なんか何もない。前にも言ったが、帝国の悪事に加担するのはごめんだ」
『悪事というけどな、リトル東京の要求も無茶苦茶だぞ。すでにここに住んでいる人間に、土地を手放せと言っている。そんな事をしたら帝国人は生きていけない』
「知るか」
『知るかって、そんな薄情な……』
「自業自得だ。そもそも、そこに住んでいたナーモ族を武力で追い出しておいて、自分たちが同じ目に遭うのは嫌だって? どんだけ我がままだよ」
『帝国人は、同じ地球人だぞ。同胞だぞ。ナーモ族なんて異種族じゃないか』
「それがどうした?」
『どうしたって?』
「これ以上話しても無駄だな。僕は絶対にお前の仲間になんかならない」
『いいのか? お前は、ミールに惚れているのだろ?』
「な……なんで、いきなりそういう話になる?」
『このまま俺の話を断れば、もう二度とミールには会えなくなるぞ』
「ミールを殺す気か?」
『まさか。ただ、ミールはこのまま帝都に連れて行くという事さ』
「そうは、ならない」
『ほう。どうしてだ?』
「ミールは、僕が取り返す」
『できると思っているのか? おまえが潜入させようとしたドローンは、すべて潰したぞ』

 かまうものか。ドローン潜入は、作戦その一に過ぎない。
 ドローン潜入がダメなら、作戦その二に切り替えるまでの事。
 奴のレーザーは、おそらくフッ素と水素を反応させている化学ケミカルレーザー。
 水素は簡単に手に入るが、フッ素の単離はかなり難しい。この惑星の技術水準じゃ無理だ。
 となると、純粋なフッ素はプリンターを使うしかない。
 多数の小型ドローンで特攻をさせて行けば、いずれフッ素を使い切るはずだ。

『まさか、ロボットスーツで城に突入する気じゃないだろうな?』
「まさか。途中でバッテリー切れになるだけだ。そっちこそ、レーザーを過信しすぎていないか? フッ素だって無限じゃないだろう?」 
『フッ素? おまえ、あれを化学ケミカルレーザーと勘違いしていないか?』
「え? あれだけコンパクトで高出力なら……」
『その様子だと、大量のドローンを投入して、こっちの燃料切れを狙おうとか考えているな』

 ばれてたか。

「さあね。それを教えるとでも……」
「カートリッジの無駄遣いをされては、かなわんから教えといてやろう。あれは半導体レーザーだ。電力がある限り、いくらでも撃てる』
「半導体レーザー!?」
『ここが、俺達の時代より二百年後だと忘れていないか? 半導体レーザーでも、これだけコンパクトで高出力の物があるのだよ。いいか、くれぐれも飽和攻撃なんてやって、マテリアルカートリッジの無駄遣いなんかするなよ』
「考えておく」

 そして、翌々日……
『おまえなあ!』
 PC画面の中で、カルルは額に青筋を浮かべていた。
 まだ、奴は僕のドローンを壊さないで取っておいたので、こうやって通信ができるわけだ。
『飽和攻撃するなって言ったろ! なんでやるんだよ』
 レーダーには、百八つの光点が映っている。
 ただし、すべて分厚い雨雲の上にある。
 奴のレーザーも、雨雲を抜ける事はできないから、ここにいる間は安全だ。
「『やるな』と言われると、やりたくなる性分なもので」
『ふざけるな! ドローンを百八機も作りやがって。マテリアルカートリッジを無駄遣いするな』
「どうしようと僕の勝手だ」
『だーかーら、飽和攻撃は、やるだけ無駄だと言ってるだろ』
「よほど都合が悪いようだな。飽和攻撃をされると」 
『別に悪くなんかない。これから俺の物になる予定のマテリアルカートリッジを無駄に減らされたくないだけだ』
「心配ない。カートリッジは絶対にお前には渡さないよ」
 僕はPちゃんの方を向いた。
「第一次攻撃隊発進」
「了解でーす」
 Pちゃんの頭のアンテナがピコピコと動いた。
 レーダーの中で十個の光点が城目がけて落下を開始する。
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