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第六章

カルルが僕に付きまとう理由

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 縛り上げられ、猿ぐつわされたアンダーは、一同に恨みがましい視線を向けていた。
 僕はマイクを切って、背後にいるミール分身の方を向く。
「向こうで、ああいう事になっているけど、どうする?」
「せっかくですから、もらっておきます。まだ、殴り足りないので……そんなことぐらいでは、機嫌は治りませんけど」
「くれぐれも、暗黒面に落ちない程度にね」
「はーい」
 マイクのスイッチを入れた。
「おいカルル」
『なんだ?』
「ミールが拳を痛めたら可哀そうだ。竹刀を貸してやってくれ」
『遠慮するな。金属バットを貸してやる』
 それを聞いていたアンダーが『ンゴー』とか唸っている。
 たぶん『拳を痛めるミールが可哀そうで、殴られる俺は可哀そうじゃないのか』と言ってるのだと思うけど、まあ気にする必要はないだろう。
『それはともかく、ドローンは後いくつ忍び込ませた?』
「ドローンは、その一つだけだ。他にはない」
『それを俺が、信じると思っているのか?』
「思っていないけど、お前こそ僕が素直にドローンの数を教えると思っているのか?」
『ふん。なら、地道に探すだけさ』
 カルルは、ネクラーソフの方を向いた。
『それでは、閣下。自分は他の馬車もドローンがないか調べてきます。後ほど、城でお会いしましょう』
 カルルはそう言い残してネクラーソフの馬車を離れると、バイクに飛び乗り他の馬車を回ってはドローンを破壊しまくった。
 しかも、その様子が僕に見えるように最初のドローンは破壊しないで、わざわざ持ち歩いてやっているのだ。
 いったいなんのつもりだ?
 最後のドローンを破壊した時、僕は質問した。
「なぜ、このドローンだけ壊さない?」
『壊したら、お前の作戦が失敗していくところを見せ付けられないじゃないか』

 そんな嫌がらせのために……

「カルル。ひょっとして、僕に何か恨みでもあるのか?」
『お前にはない』
 お前には……という事は、こいつと出会う前の生データから作られた僕にはないという事か?
「じゃあ、電脳空間サイバースペースにいた僕に恨みでも?」
『ない』
「じゃあ、僕より先に再生されて、この惑星に先に降りた僕に恨みがあるのか?」
『……』
 カルルは黙り込んだ。

 そうなんだな。

「やっぱり、惑星に降りてから、何かあったんだな?」
『……』
「ひょっとして、リトル東京を裏切ったのも、それが原因?」
『……』
「あのさあ、そいつとの間に何があったか知らないけど、僕とそいつは同じデータから作られたとはいえ他人だ。八つ当たりされちゃ迷惑なんだよな」
『そんな事は分かっている。だから、お前には手を組もうと言っているだろう』
「その前に、殺そうとしただろう。その後で、手を組もうなんて言われても信用できないな」
『疑り深い奴だな』
「おまえこそ、しつこいぞ。僕は何度も断っているはずだ。なぜ、そうも執拗に僕を勧誘する?」
『それは……おまえと、友達になりたいからさ』
「嘘つけ」
『なぜ、嘘と決めつける?』
「どう解釈したら、おまえの『友達になりたい』という言葉に、信憑性が生まれる?」
『それはだな……』
「おまえの本当の目的は、僕ではなくて、僕の持っているマテリアルカートリッジだろ?」
『……』
「そうなんだな。マテリアルカートリッジさえ手に入れてしまえば、僕は始末する気だな」
『そんな事はない。マテリアルカートリッジさえ寄越せば、帝国内でのお前の地位は保障する』
「信用できないな。マテリアルカートリッジを手放した僕を、生かしておくメリットが、お前たちにあるとでも?」
『あるさ』
「どんなメリットが?」
『技術だ』
「技術?」
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