上 下
731 / 848
第十六章

自爆する方法

しおりを挟む
 中央広場へと走り去っていくスパイダーを僕は指さした。

「カルル。あのスパイダーに乗っているのは誰だ?」
「マルガリータ姫さ」

 やっぱり。《アクラ》で、大人しくしていると思っていたのに……

「まったく、あのまま捕虜にしていればいいのに、余計な奴を返しやがって」
「捕虜を返してやったのに、恨まれる筋合いはない。しかし、あの姫さん。よくスパイダーなんか操縦できるな」
「ブレインレターを使った促成教育を《アクラ》で受けてきたらしい。成瀬の奴、余計な事を……」
「そいつは災難だったな」
「ふん! やっかいなショタコン姫だが、あの姫はミーチャが目当てでここへ来た。そして、海斗。おまえは、ミクにミーチャの格好をさせているな」
「なぜ、それを知っている?」
「なぜもなにも、ミクは子ヤギの見ている前で着替えていただろう。子ヤギの目を通して、レム神はその様子を見ていた」
「なんだと?」
「だが、その事を姫は知らない。使えない姫様だと思っていたが、このまま中央広場の陣地へ行かせれば、ミクをミーチャだと思って拉致してくれるさ」
「そんな事はどうでもいい」
「え?」
「カルル。おまえ、ミクの着替えを覗いていたのか!」
「え? いや……これはだな……」
「この変態! ロリコン!」
「ち……違う! 俺はあんな、まな板胸に興味はない」
「嘘をつけ。本当は喜んで覗いていたのだろう」
「違う! そもそも俺は見ていない。見たのはレム神であって、俺はミクがミーチャに変装していると話で聞いただけであって……ええい! おまえの舌戦の相手をしている場合ではない」

 カルルはネットを連続で放ってきた。

 そのうちの一つが僕の機体にかかる。

 ネットを切り裂いて脱出した時には、カルルのスパイダーは天井に張り付いていた。

「あばよ。海斗、ミクはいただいていくぞ」
「待て!」

 カルルのスパイダーは、そのまま走り去っていく。

「芽依ちゃん。橋本君。追いかけるぞ」
「「はい!」」
「そうはいかないわ! ここは私が通さないわよ! エステス様の邪魔はさせない」

 僕たちの前に、イリーナのスパイダーが立ち塞がった。

「どけ! 三対一で勝てるとでも思っているのか!」
「エステス様が目的を達成するまでの、足止めぐらいにはなるわ」

 イリーナのスパイダーが、ネットを連続で放ってきた。

 しかし……

「あら?」

 ネットの射出は唐突に止む。

 弾切れ……いや網切れか。

「ここまでのようだな、イリーナ。女を殺したくはない。さっさと逃げる事だな」
「いいえ、死んでもここは通さないわ。私に近づいたら、自爆してあなたたちも巻き添えにしてやる」

 自爆か。それはちょっとやっかいだな。

 だが、芽依ちゃんは構わずイリーナのスパイダーに歩み寄る。

「ち……近づくんじゃないわよ! メイ・モリタ」

 そうだ。近づくな! 戻れ!

 だが、芽依ちゃんはさらにイリーナへ近づく。

「自爆すると言っているのが、分からないの」
「自爆したければどうぞ」
「なに?」
「今ここで自爆しても、巻き込まれるのは私一人だけですけどいいのですか?」

 いや、芽依ちゃんだけでも良くないぞ!

「おまえ、死ぬのが怖くないのか?」
「イリーナさんは死ぬのが怖いのに、自爆するのですか?」
「ええっと……」
「イリーナさん。下手なハッタリはやめましょう。軍用兵器ならともかく、警察車両のスパイダーに自爆装置なんかありません」

 そうだったのか。芽依ちゃんは、ハッタリだと分かっていたのだな。

「た……確かに自爆装置はないけど……エネルギー源の超伝導バッテリー。あれを爆発させるわよ」
「どうやって?」
「え? ええっと……」

 確かに超伝導バッテリーがクエンチしたら爆発するけど、この様子だとイリーナはどうすれば爆発するか知らないようだな。

「ではクイズです。超伝導バッテリーに何をすれば爆発するか? 次の四つの中から選んで下さい。一番、磁石を近づける。二番、熱する。三番、爆発の呪文を唱える。四番、液体窒素をかける。さあ答えて下さい。時間は十秒」
「正解の報酬はなに?」
「あなたの言ったことが、ハッタリではないと認めて足止めに付き合って上げます」

 いや、すでに足止めに付き合わされていると思うが……
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめる予定ですー!

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

処理中です...