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第六章

まさか、これで負けていないとは、思っていないだろうな?

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 ミサイルは、至近距離で爆発した。
 爆風と破片を浴びて、菊花一号は大破。
 辛うじて墜落は免れたものの、城の屋上に不時着した。
 カルルからの通信が入る。
『まんまと引っかかったな。VТ信管を切ったミサイルを撃ったのは、まぐれ当たりを期待したわけではない。ミサイルを撃ち尽くして、お前をドックファイトに引きずり込むのが、目的だったのさ』

 ああ、そうだったの。

『もちろん、お前の射撃の腕は知っているからな。ドックファイトなら勝てるなんて、自惚れてはいない。ドックファイトに専念させて、もう一機のドローンの事を忘れさせるのが目的だったのさ』
 こいつ、自分の作戦を自慢したいんだな。
 酒場で延々と自慢話をするタイプか?
 不時着なんかしないで、墜落させておけばよかった。
 そうすれば、こいつの自慢話など聞かないで済んだのに……
『どうだ、悔しいか!? 悔しいだろう』

 ガキか? こいつは……

「別に悔しくないよ。見事な作戦だと、感心しているところさ」
『なんだ! その上から目線な言い方は! 本当は悔しいのだろ! 悔しいと言え! この卑怯者と言ってみろ! 言っておくが戦いには、卑怯もへったくれもないんだからな』

 つくづく、こんな男の話に乗らなくてよかった。

「別に、卑怯なんて言ってないけど」
『言ってないけど、思っていたんだろう!?』
「思ってないって」
「ご主人様。二号機、戦闘宙域に到着しました」
「ありがとう。Pちゃん」
 操縦系を二号機に切り替えて……
『北村海斗! おまえドローンを何機用意しているんだ!?』
「三機のドローンを、ローテーションして使っているのだが何か?」
『こっちは一機しかないのに、三対一とは卑怯だぞ』
「いや、おまえ、たった今、戦いに卑怯もへったくれもないって言ったばかりやん」
『俺は良いんだ』
「良いわけあるか!」
『ふん。どうせ、そいつも空対地ミサイルしか積んでいないのだろ。そんなもの当たるものか』

 いや、今度は正真正銘の赤外線追尾式空対空ミサイルなんだけど……

『全部躱してやるから、とっとと撃ってこい』
「では、遠慮なく」

 ポチッとな。
 ミサイルが勢いよく飛び出していく。

『あははは! そんな物当たるものか!』

 当たった。

 カルルのドローンは爆炎に包まれ落ちていく。
 さて、後は飛行船タイプを片付ければ終わりだな。
 その前に……
「ミール」
 ミールに通信を送った。
「敵のドローンは片付けた。もうすぐ、こっちのドローンも降ろすから、脱出の用意してて」
『待ってください。カイトさん。着替えるのを忘れてました』
「着替え? こんな時に……」
『帝国兵に変装したままだったのですよ。このままだと、鎧が重くてベジドラゴンが飛べません』
「そうか。早くして」
『それが鎧が引っかかってなかなか、とにかく急ぎます』
 ミールとの通信が切れた。
 直後にカルルから通信がくる。 
『やい! 北村海斗!』
 今度は飛行船タイプから通信を送ってきたようだ。

 しつこいな。

『まさか、これで勝ったとは、思っていないだろうな?』

 負け惜しみか?

「まさか、これで負けていないとは、思っていないだろうな?」
『ふん。お前は大きな勘違いをしているぞ。ドローン同士の戦いなんてものはな、ドローンの操縦者を倒せば勝ちなんだよ』
「なに!?」
『俺は、最初からお前の居場所を掴んでいた。ドローンでじゃれあっている間に、俺はお前に近づいていたんだよ。今から、そっちへ行くから首を洗って待っていろ』

 なぜ、ここが分かったんだ?
 いや、ローテク帝国軍と違って奴ならレーダーぐらい持っている。
 ドローンの動きで、ここを突き止められたか?
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