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第六章

ドッグファイト

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「ご主人様。そのミサイルは……」
「分かっている」
 今、撃ったのは、空対地ミサイル。空対空ミサイルではない。
 これでは、空飛ぶドローンには当たらない。
 しかし、カルルもすぐには、それが分からないはずだ。
 回避運動ぐらいは、するだろう。
 今のところ、向こうのドローンは二機。
 雲の中にいるので、レーダーで捉えた光点が見えるだけで姿が分からない。
 しかし、ミサイルを回避する動きを見れば、相手がどんなドローンを使っているか推測できる。
 
 二機のドローンのうち一機は、ほとんど回避運動をしていない。
 いや、していないわけではないが、かなり動きが鈍い。
 飛行船タイプのようだ。
 もう一機は、かなりの機動性を持っている。
 こっちは、ジェットドローンだな。
「Pちゃん。一号機の発進準備は?」
「発進準備できてはいますが、装備しているのが空対地ミサイルです」
「それでいい。発進させて」
「お待ちください。今、空対空ミサイルに交換しますので」
「そんな南雲艦隊みたいな事している場合か」
「しかし、空対地ミサイルではドローンを落とせません」
「落とせなくてもいい。空対地ミサイルでも戦い方はある。それより、そろそろ二号機が戻ってくるから、空対空ミサイルはそっちに着けて」
「了解です」
 カルルの方も、ミサイルを撃ってきた。
 同時に通信が入る。
『海斗。さてはそのドローン、空対空ミサイルを積んでいないな』
「さて、どうかな?」
『とぼけるな。今、撃ち落としてやるぜ』
 ミサイルが迫ってくる。
 リフトファン全開、垂直上昇。
 ミサイルは三号機の真下を虚しく通り過ぎる。
『うまく避けたな。次はそうはいかんぞ』
 また、ミサイルを撃ってきた。
 こっちも撃ち返す。
『バカが。空対地ミサイルが当たるとでも思っているのか』
「それは、どうかな」
『なに?』
 ミサイルとミサイルがすれ違った直後、カルルのミサイルが爆発した。
 こっちのミサイルが至近距離を通ったために、相手のミサイルのVТ信管を作動させてしまったのだ。
 以前にキラが使った戦法だ。
 もっとも、あれは偶然だったと思うけど……
「ご主人様。一号機、戦闘宙域に到着しました」
 三号機を自動操縦に切り替えて、一号機を手動にした。
 カルルのドローンが高度を下げて、雲の下に出てくる。
 やはりジェットドローンだったか……
 まだ、ミサイルを二発残している。
 一発撃ってきた。
 こっちも同時に撃つ。
 またも、すれ違うと同時に爆発。
『カイトさん!』
 突然、通信機からミールの声。
「どうした?」
『ドローンの騒音、なんとかなりませんか? ベジドラゴンたちが怯えてしまって、飛び立てません』
 そんなヒドイ音なのか? 
「ミール。すまないが、敵もドローンを上げてきた。奴を片付けるまで待ってくれ」
『分かりました。ご武運をお祈りします』
 通信が切れた時、カルルは最後のミサイルを撃ってきた。
 こっちもミサイル発射。
 すれ違う。
 爆発しない?
 さてはVТ信管を切ったな。
 だが、VТ信管がないと直撃しない限り、ダメージはない。
 そして、ミサイルが直撃するなどという事は滅多にない。
 ミサイルは菊花一号の近くを素通りしていった。
『これで互いのミサイルはなくなったな』
 カルルが通信を送ってきた。
『ドックファイトで勝負だ』
 敵のドローンが急速接近。
 こっちも、ドローンを加速させる。
 すれ違い様に、互いのバルカンを撃ちあう。
 こっちはノーダメージ。
 向こうに数発命中したが、致命傷は与えられなかったようだ。
 互いに反転してもう一度勝負を挑む。
 相手の機体の背後を取ろうして二機のドローンは乱れ飛ぶ。
 背後を取られた!
 リフトファン全開垂直上昇で逃げるか?
 いや、相手もVТOL。垂直上昇で追いかけてくる。
 ならば……
 機首を大きく上げた。
 直後、高度が一気に下がる。
 わざと失速して高度を下げる木の葉落としだ。
 塩湖での戦いの後、散々練習した高等テクニック。
 失速状態から、回復させるのが難しかったがなんとか回復させた。
 僕の前方をカルルのドローンが通り過ぎる。
 バルカン発射。
 命中したが今回も致命傷には至らなかった。
 だが、動きが鈍っている。
 トドメだ。
 突然、警報が鳴った。
 レーダーには、こっちへ向うミサイル。
 しまった! 雲の中に飛行船タイプがいたんだった。
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